#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い 1〜2巻 評論(ネタバレ注意)

最強の悪魔デビィ・ザ・コルシファは最強故に地獄界で闘う相手がいなくなり、退屈しのぎに人間界へ現れた。人間界というか具体的にいうとその辺の高校生・六郎の部屋に現れた。

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「デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い」1巻(平方昌宏/集英社)

突如、最強の悪魔から人類存亡を賭けたバトルを挑まれることになった六郎は、せめてもの抵抗でババ抜きを提案。

快くババ抜き勝負を受け入れたデビィは、しかし、ゲームにかけてはクソ雑魚ポンコツだった。以来、六郎の部屋には毎日、最強の悪魔が人類の存亡を賭けて遊びにやってくることになった…

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「デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い」1巻(平方昌宏/集英社)

という、のじゃ語尾最強美女ヒロインのクソ雑魚チョロポンコツっぷりを愛でるギャグコメディ。

WEB連載が人気ではてブのホッテントリでたびたびお見かけしていながら読んでなかったんですが、2巻発売を契機に読み始めてみました。

ルックスはジャンプ漫画っぽいですけど、平凡な少年の家に超常の何かがやってくる、という藤子不二雄ワールドの定番の作品です。

その無為っぷりでいうと「オバケのQ太郎」が一番近い気が。

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「デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い」1巻(平方昌宏/集英社)

「デビィ・ザ・コルシファ」ってまた、覚えにくい名前だなあ…と思ってたんですけど、「デビ(ル)・ザコ・ルシファ」の区切り位置変えただけなのねw

出オチの一発ネタの繰り返しですけど、系で言えば「姫様拷問」と一緒というか、最近はキャラの魅力も相まって出オチの一発ネタをずっと楽しく読ませる作品が増えましたね。

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「デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い」1巻(平方昌宏/集英社)

気づいてなかっただけで昔からなんかな。

デビィが面白可愛いの一言に尽きますが、ハイテンションなギャグコメディ展開に混じってたまにしんみりさせる話ぶっ込んでくるのも良いですね。

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「デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い」1巻(平方昌宏/集英社)

こういう作品、終わった時に意外な喪失感というか、結構切ない最終回とかですっごい寂しくなっちゃうから、困るんだよな…

 

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#僕の心のヤバイやつ ツイヤバまとめ 1〜2集 評論(ネタバレ注意)

「みつどもえ」の作者の現作。

ラブコメ漫画は数あれど、WEB連載で既読にも関わらず新刊が一番楽しみな作品。

主人公は、雑誌の専属モデルもこなす陽キャ美少女・山田を殺す妄想をする、中二病で陰キャでぼっちな男子中学生。

図書館で偶然見かけた彼女は、一人でおにぎりを頬張りながらゴリラのような鼻歌を歌う、意外と割と残念な感じだった…

コメディの皮をかぶせた、エロで独りよがりで優しい中学生の、初恋の繊細な機微の描写。

 

という人気ラブコメの、Twitter掲載のおまけ漫画の寄せ集めというか、ページ不定形のショートショート集。

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「僕の心のヤバイやつ ツイヤバまとめ」1集より(桜井のりお)

2冊合わせて300ページ弱あって、無料です。

作者個人のインディーズ扱いということで、クレジットから秋田書店が外れてます。

kindleインディーズの仕組みで収益は作者にちゃんと還元されるらしい?

 

ちゃんとkindleのライブラリに格納されます。

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内容はまあ、ショートショートのおまけ漫画なので楽に描いてて楽に楽しく読めます、という感じ。

本編を補完する、というほどでもない他愛のないエピソードが中心。

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「僕の心のヤバイやつ ツイヤバまとめ」1集より(桜井のりお)

 

連載版の方はああ見えて連載漫画の要求や制約の中で「ちゃんと」描いてんだな、とあらためて。

描く方も読む方もいろいろ楽な二冊ですが、イチャラブ日常のショットってラブコメの一番美味しいところでもあるんで、本編のファンは必携ではないでしょうか。

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「僕の心のヤバイやつ ツイヤバまとめ」1集より(桜井のりお)

なんつったって、タダですし。

ショートショート集ながら300ページ近くあるだけあって読み応えもあり。

キャラたちが好きなら是非。みんな可愛いなw

 

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#MFゴースト 12巻 評論(ネタバレ注意)

「MFゴースト」は「頭文字D」と同じ世界観、あっちが基本的に90年代を舞台にした作品であるのに対し、202X年が舞台の続編という位置づけです。大体20〜30年後?という感じ。前作の登場人物たちがおじさんになって脇役で大量に登場。

前作主人公の藤原拓海も本人は登場しないものの、主人公の師匠としてやたら名前がたくさん登場。

国産車でのマッチレースだった前作に対して、今作は海外製のゴージャスなハイエンドスーパーカーがグランプリレースを繰り広げるという、クルマ好きには眼福な作品。

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「MFゴースト」12巻より(しげの秀一/講談社)

基本的にはクルマがグルグル走って解説やドライバー自身がブツブツ言ってるだけの漫画なので、そういうのが苦手な人はやめときましょう。

第3戦、前々巻で左肘に怪我を負ったままレースをスタートした主人公が2速を使えないハンデで順位を落としましたが、前巻で不可解な痛みの回復で後方からガンガン順位を上げ、今巻で第3戦ペニンシュラレース編がゴール。

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「MFゴースト」12巻より(しげの秀一/講談社)

相変わらず随所に、読者サービスと言わんばかりに前作主人公・藤原の影がちらつきます。

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「MFゴースト」12巻より(しげの秀一/講談社)

なんかアレやね、「MFゴースト」って「マエストロ・フジワラ・ゴースト」の略なんですか、という感じ。

レース後にはヒロインの一世一代の決意が見せ場っちゃ見せ場なんですけど、読者の興味の引かなさすげえなw

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「MFゴースト」12巻より(しげの秀一/講談社)

次巻からしばらく? 夏休み編とのことなんですけど、真骨頂のレースシーンもなくクルマも走らせないでヘッタクソなラブコメ展開でこの漫画もつのかしらw

とかいいつつ、前作の主人公の藤原と同級生ヒロインの別れのシーンや最後のシーン、自分は結構しみじみと好きだったので、割りとちょっと期待しちゃうんですけど。

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「MFゴースト」12巻より(しげの秀一/講談社)

で、お前はなに述べてんだよ。なんの漫画のつもりなんだよ。

 

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#怪獣8号 4巻 評論(ネタバレ注意)

現代、ただし頻繁に怪獣に襲来され「怪獣大国」となった日本。「防衛隊」が組織され、襲来の都度、怪獣を討伐することで社会が保たれていた。

かつての防衛隊志望に挫折した怪獣死体処理清掃業者・日比野カフカ(33♂)は、防衛隊志望の後輩に触発され再び入隊試験受験を決意するものの、いろいろあって人間サイズの怪獣に変身する体質となってしまう。

目撃情報から防衛隊に「怪獣8号」として指名手配されたまま、怪獣変身体質を隠したカフカの防衛隊入隊受験が始まった。

という、「SF」でいんだよねこれ。「バトル」もつけていいんかしら。

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「怪獣8号」4巻より(松本直也/集英社)

「正体を隠した変身ヒーローもの」としては一番美味しい展開で、作品終盤に持ってくるべきエピソードですけど、4巻で早くも使ってきました。令和の漫画はテンポが早いね。

キャラの動機付けも十分、魅力的なキャラを揃えて熱い展開も申し分なし、バトル描写もカッコいい、と歴代のジャンプの傑作バトル漫画に肩を並べる可能性を十分に感じさせる作品。

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「怪獣8号」4巻より(松本直也/集英社)

にも関わらず、「歴代のバトル漫画や『進撃の巨人』と同じ土俵に『降りてきてしまった』」とは、正直思います。

怪獣をテーマに見たことのない漫画を読めるんじゃないかと1巻を読んだ時には思ったものですが。

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「怪獣8号」4巻より(松本直也/集英社)

このままジャンプ本誌に持っていってもバトル漫画として一線級に面白い作品なんで、贅沢な読者の我儘なんですけども。

 

 

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#ゲーミングお嬢様 3巻 評論(ネタバレ注意)

ジャンプ+でWEB連載されている、オマージュやパロディを散りばめ中毒性のある言語センスを伴った、基本ギャグコメディ進行の格闘ゲーム×お嬢様のゲーマー漫画。

格闘ゲームとお嬢様は「ハイスコアガール」といい「対ありでした」といい、なんか相性よろしいですわね。

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「ゲーミングお嬢様」3巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

数ある「格ゲー×お嬢様」作品の中でも最もイカれた世界観設定の作品。

わざわざ作画担当を付けているにも関わらず、すごく絵が上手いわけでも美少女が可愛いわけでもないという不合理な建て付けですけど、世界観も話の展開も不合理なので全体として調和が取れているという、ツッコミどころの多いギャグ漫画のような作品。

昔MMO「AION」やってたとき、「リネージュ2」の戦争で有名なサーバで有名なPKだった経歴を持つギルドメンバーが「AION」の仕様を評して「ムカついてない相手を殺しても全然面白くない」とボヤいていたのを思い出す作品。

コワいけどワカるw

今巻から新たな戦い、世界大会へと続く日本一決定戦「EJO」編。

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「ゲーミングお嬢様」3巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

なんですけど、WEB連載の良いところと表裏一体の悪いところも若干出ちゃってる感じはします。

たぶん、シリアスなバトル回ってあんま数字がよくなくて、箸休め的なギャグコメディ回の方がいろいろ数字が良いのが、ジャンプ本誌のアンケート結果速報よりもWEB連載の特性でタイムリーに見えすぎちゃってるんじゃないかと。

なにかというと、シリアスなバトル展開中に箸休めギャグコメディ回(おティッシュに餌)が挟まる挟まるw

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「ゲーミングお嬢様」3巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

バトル展開、正直対戦相手を変えて同じ展開・同じような決めゼリフの繰り返しなんでわからんでもないんですけど、個人的にはそれはそれでいんでねえかなと思うんですけど。

まあウマ娘ネタも好きだし、楽屋ネタのギャグコメディ描かせても楽しい作家なんで、どっちみち面白いんだからどっちでもいいっちゃいいんですけどw

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「ゲーミングお嬢様」3巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

もうちっと自分の描きたいことに集中してもいんでねえかなとは思います。なんとなくアイスホッケーをやるはずだったギャグ漫画を思い出してしまう。

シリアス展開、読んでる側の思いの他、描いてて消耗が激しいのかもしらんね。カッコよくて狂気じみてて、闘争に身を投じる人間のマインドがよく出てて、自分はとても好きです。

 

 

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#姫様“拷問”の時間です 7巻 評論(ネタバレ注意)

国王軍と魔王軍が衝突する世界。国王軍の王女にして第三騎士団の団長・姫は、意思を持つ聖剣エクス(ツッコミ役)と共に魔王軍に囚われの身となった。

戦局を有利に導くべく、魔王軍はあらゆる手を使って敵の幹部である姫から秘密の情報を引き出そうとする…

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「姫様“拷問”の時間です」7巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

という、ファンタジー世界を舞台にしたゆるーいコメディ漫画。

タイトルにも作中のセリフにも「拷問」という物騒な単語が踊りますが、中身はストレスなしのギャグコメディ。

半分は実質グルメ漫画です。

あとはもうこの黄金のワンパターンの手を変え品を変えの繰り返し。牧歌的で微笑ましい馴れ合いの世界。登場人物が全員なにかしらポンコツです。

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「姫様“拷問”の時間です」7巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

くだらないワンパターンの繰り返しでも、それが可愛く面白い黄金のワンパターンであるならば、バリエーションを増やして無限に繰り返せばよい!誰も困らない!

「エンタメというものは、ワンパターンとかマンネリとか、そういうのは良くない」的に一般で思われがちなんですけど、出オチの一発ネタに思われるワンパターンでマンネリなこの漫画(作中でエクスもよく言ってる)がいつまで経っても面白いのはなんなんでしょうね。

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「姫様“拷問”の時間です」7巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

「ワンパターンやマンネリは良くない」という常識が間違っている可能性と、もう一つ「一見そう見えて実はワンパターンでもマンネリでもないのではないか」と最近考え始めています。
同じような展開の繰り返しの中で、キャラの魅力というか、ちょっとずつ深掘りされて新たな面が覗いてるのがいいアクセントになってますよね。トーチャー可愛いわw

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「姫様“拷問”の時間です」7巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

疲れてる時に繰り返し読みたい、超癒し系の作品。

今巻も面白かった。

 

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#クマ撃ちの女 6巻 評論(ネタバレ注意)

熊狙いのライフル持ち*1女性猟師・チアキ(31)に密着取材を申し込むフリーライター・伊藤。2人は熊を求めて日々、北海道の山中に入る。

伊藤が取材を始めて最初の猟期が終わり、一旦シーズンブレイク。チアキを取材した伊藤の著書が出版され、それに伴ってチアキ自身もメディアに取材されたりもありつつ、二度目の猟期に。

新しいシーズン、チアキは飼い始めた狩猟犬・ワンを用いたクマ狩りにチャレンジ。2回目の入山で、ワンがクマの痕跡を発見。新コンビによる初のクマ狩りは…

という前巻の続きから。

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「クマ撃ちの女」6巻より(安島薮太/新潮社)

「チアキvsクマ」が2シーズン目に入って「チアキ+狩猟犬 vs クマ」になってちょっと目先が変わりました。

犬の描かれ方がチアキ目線なせいで、可愛くないバカ犬気味だけど徐々に意外と素質ありそう? みたいな「カワイクナイ可愛い」系で、読んでてとにかく犬が心配w

1年目(+それ以前)で経験を積んだチアキがピンチに陥るのはよっぽどですけど、犬はお調子者気味なのでとにかく犬が心配で続きを読む感じ。

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「クマ撃ちの女」6巻より(安島薮太/新潮社)

後半は、クマ狩り漁師志望の意識高い系女子大生、メディアに取り上げられたチアキに対する嫉視で?巻狩りで邪険に扱うベテラン猟師たちなど。

ここまでで猟師として経験を積んで成長しつつあるチアキ・伊藤と視点が同化した読者から見ると、「ざまぁ」的な俗っぽい「なろう」展開で、まあ楽しいんですけど。

チアキの師匠筋の初老の猟師以外、中堅〜若手の猟師は割りと俗っぽく描かれていて、猟のリアル・猟師のリアルを読者に感じさせようという作品なのかな、と思います。

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「クマ撃ちの女」6巻より(安島薮太/新潮社)

そんな中、やっぱりチアキは未だに浮いてんですよね。

おそらく

「猟のリアルを読ませたい」

→「主人公がおっさんより若い女の方がキャッチーだろう」

→「タイトルにもインパクトを出そう」

というメタな機序で、「女だてらに」ほとんどの男もやらないような単身でのクマ猟に勤しむことになったヒロイン。

キツくて危険な割りに収入が良いわけでもなく、ただ「クマを撃ち殺したい」というシンプルで理解不能な動機で作品を引っ張っています。

現実的に異常ですけど、作中でも異端扱いなんですよね。

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「クマ撃ちの女」6巻より(安島薮太/新潮社)

彼女の異常性は物語の流れ的には、幼少期に姉妹でクマに襲われたトラウマの反動や復讐心、クマに対する恐怖を超克するために「クマの生殺与奪を握る存在でありたい」という心理が彼女をそうさせている、と一応説明はつくんですけど、

「はて、何がどうなったらこの作品は本懐を遂げて完結するんだろうか」

というビジョンがちょっと浮かばず、予想がつきません。

「チアキが日本のクマを絶滅させたEND」はないと思いますし。「日々は続いていくEND」かしらん。

そもそも作者がチアキの「心の闇」的な何かに興味があるのか、そんな話面白いのか、読みたいか、って話なんですけど。チアキの生命に対する向き合い方が一皮向ける萌芽も見て取れます。

とりあえずは、チアキを見下す中堅の男猟師どもに早く吠え面かかせて欲しいのと、やっぱ犬が心配です。

大丈夫かあのバカ犬。

 

 

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*1:猟銃免許取得後、散弾銃所持10年以上が必要

#生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい ~輪環の魔法薬~ 1巻 評論(ネタバレ注意)

「なろう」のコミカライズ。

コミカライズが一度されて2巻まで出てたんですが、

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コミカライズ作画家の体調不良により打ち切り、その続きを作画家とタイトルをちょっと変えてリブート、のようです。

内容的には前コミカライズの続きから、とのことで、ちょっと気の利いた引き継ぎ方。

前コミカライズ作画家さんがどうされているのか存じ上げないんですが、早く体調回復されますように。

さて。

 

平凡な錬金術師が200年寝てたら超レアスキル持ちになってた件。

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「生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい ~輪環の魔法薬~」1巻より(小原彩/のの原兎太/ox/KADOKAWA)

中世ファンタジーの要塞都市でポーション作りで細々生計を立ててたヒロインが魔の森のスタンピード(なんか大災害)に際して地下室で結界張って仮死状態魔法で災害をやり過ごしたら地下室酸欠につきそのまま200年経って起きたら錬金術もポーション作りも絶えた時代だったのでウハウハなチートもの。

要は錬金術が絶滅した世界でポーションを生産できる唯一の錬金術師。

タイトルのままやな。

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「生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい ~輪環の魔法薬~」1巻より(小原彩/のの原兎太/ox/KADOKAWA)

彼女の望みは、ダンジョンを攻略する軍に囲われてポーションを作り続けて地位と名誉を得ることではなく、街で薬師としてひっそりと暮らしながらポーション作りで人々の暮らしの役に立つことだった。

まあ言ったらポーションの密造をやっていて、周囲のイケメンの関係者はそれに気づいたり黙認したりとかしながら、遠巻きに彼女をチヤホヤする、マイルドに乙女ゲーっぽい世界です。

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「生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい ~輪環の魔法薬~」1巻より(小原彩/のの原兎太/ox/KADOKAWA)

が、世界観が割りと作り込まれていること、登場人物たちがありがちな馬鹿な行動をとらずにみんな「大人の対応」であることで中々読ませる作品。

作画ももともと女性向けでしたが、少女向けが女性向けになったという感じで、作りも前作の続きながら適宜回想シーンを挟んで補完する丁寧な作劇で好感が持てます。

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「生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい ~輪環の魔法薬~」1巻より(小原彩/のの原兎太/ox/KADOKAWA)

「なろう」らしくチートで無双?ではあるんですけど、チヤホヤの描写が抑え目で読みやすくで好き。

なんつーか、「当たり作画」づいてる原作やなw

 

 

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(選書参考)

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#GIGANT 9巻 評論(ネタバレ注意)

AV女優・パピコと映画監督志望の高校生・横山田のボーイミーツガールに、未来ガジェット巨大化ツールや超常現象いたずらサイト「ETE(enjoy the end)」が絡む不条理SF。進撃の巨乳。

ETEにより新宿に現れた3体の巨人「サタン」。死刑の恩赦と引き換えに自衛隊と協力し未来ガジェットで巨大化して素っ裸で撃退したパピコ。一躍国民的ヒーローとして超人気タレントに転身。一方アメリカは巨人の駆逐に失敗し、国土を蹂躙される。

アメリカを蹂躙した巨人"サタン"は太平洋を渡って日本に上陸。謎のパンツ一丁の軍人たちがサタンを迎え撃つ中、パピコは横山田の子を妊娠していた…

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「GIGANT」9巻より(奥浩哉/小学館)

今巻でバトル展開はひと段落し、次巻で完結とのことです。

ストーリーとしてはそこまで特筆すべき作品だったとは思わないというか、むしろ「ここまで描きたいこと以外を削って省いても漫画作品として成り立つんだな」という感じでした。「こんな漫画の描き方もあるんだな」というか。

むしろ他の漫画では絶対に観ることのできない、すんごいシーンがてんこ盛りの漫画だったなという、物語は作者が描きたいシーン・観せたいシーンのための舞台装置というか。

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「GIGANT」9巻より(奥浩哉/小学館)

設定というか、今巻登場の黒幕?のどっかからテキトーに持ってきたようなチープさすごいですよねコレ。こんなところに1ミリも脳みそ使いたくない的なw

この人の近年の作品は大体そうですけど。理屈じゃなくて絵一枚で「なにこの漫画面白そう」「こんなシーン観たことない」と思わせるインパクト勝負というか。

そういうわけで次巻完結ですけど、あんまストーリーテラーとして期待してなくて、例によってたぶん描きたいことだけ描いてじゃバイバーイ!って感じで読者の納得なんか知るか!って感じの終わりかなーとは思うし、そんな作風が好きな読者がついてきてる作家だとは思うんですけど。

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「GIGANT」9巻より(奥浩哉/小学館)

近年の過去作、どんな終わり方だったっけ?と思って思い出そうとしても、途中の印象的なシーンはいくつも憶えてるのにラストについては全然思い出せないというか、ぶっちゃけ最後まで読んだかどうかすら定かじゃないんですよね過去作w

エンディングに丸々一冊用意するあたり、「意外と…」ってこともあるんじゃないかと、ちょっと期待してみたり。

 

 

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#生徒会役員共 21巻 評論(ネタバレ注意)

高校の生徒会を舞台にしたほのぼの下ネタ4コマ。主人公・タカトシ以外の登場人物は全員女子。かといって別にハーレム感もない。

新聞の長寿4コマみたい。言うほど下ネタ比率もそんなに高くなくて、ただのほのぼのネタ、下手したらダラダラと特にネタもオチもなかったり。

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「生徒会役員共」21巻より(氏家ト全/ 講談社)

週マガの箸休め的な存在なんだと思いますけど、1巻からずーっとくだらないです。

料理で喩えるとふりかけごはんみたいな漫画ですけど、こう見えて連載開始が2007年で14年目、2期にわたるTVアニメ化済み、単行本の累計発行部数は475万部なんだそうです。みんな好きねえw

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「生徒会役員共」21巻より(氏家ト全/ 講談社)

作者の過去作「妹は思春期」が終わったのがついこないだだと思うんですけど、年月が経つのは早いですねえ。

この漫画が14年間ずっとくだらないせいで、そんなに時間が経った気がしない。

今巻も期待した通り、軽くてユルくてくだらないです。

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「生徒会役員共」21巻より(氏家ト全/ 講談社)

一応、男主人公1人に生徒会の女子3人がヒロイン、特に生徒会長のシノがメインヒロインのテイですけど、ラブコメ要素も薄く、強いて言えばスズの淡い片想い?が唯一微笑ましいです。

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「生徒会役員共」21巻より(氏家ト全/ 講談社)

「報われて欲しい」というほど恋愛がんばってるわけでもないし、そもそもこの漫画100巻になっても200巻になっても何も起こらず人間関係が変わってなさそう。

 

 

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#望郷太郎 5巻 評論(ネタバレ注意)

「デカスロン」「へうげもの」の作者の現作。

突如地球を襲った大寒波に際し、財閥系商社・舞鶴グループの創業家7代目、舞鶴通商のイラク支社長・舞鶴太郎は、駐在するバスラで極秘に開発させていた冷凍睡眠シェルターに妻と息子を伴って避難。1〜2ヶ月の冷凍睡眠で大災害をやり過ごす心算だった。

太郎か目を覚ますと、隣で眠っていた妻も息子もミイラ化し、装置が示す数値はあれから500年が経過していることを指し示し、シェルターの外には廃墟と化したバスラの街並みが広がっていた。

人が絶えたように見える世界を前に太郎は、自らの死に場所を娘を残してきた故郷・日本に定め、長い旅路を歩き始める。

旅路で出会う、わずかに生き残った人類たちは、過去の文明の遺産を再利用しながら、狩猟と採集で食いつなぐ原始に還った生活を営んでいた。

で始まるポストアポカリプスなサバイバルなロードムービーもの。

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「望郷太郎」5巻より(山田芳裕/講談社)

としてスタートした作品ですけど、もう既にジャンルが少し変わったというか本質が表れていて、実態は原始環境における経済もの、「金と人間」をテーマにした作品に。

先に「ロードムービーもの」と書いたけど、ヤープト村に滞在してだいぶ経つね。つってもまだ5巻ですけど。

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「望郷太郎」5巻より(山田芳裕/講談社)

文明がリセットされ原始化した社会が再び貨幣経済圏を形成する過程に、現代の経済人が「なろう」よろしく介入することができたら、というお話になるのかなあ。

人を動かすにあたって、暴力の支配を貨幣経済文化が駆逐するお話になるのかなあ。

と一旦思ったんですけど、貨幣経済が暴力を駆逐って、別に21世紀の現代でもそんなこと起こってないんですよね。

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「望郷太郎」5巻より(山田芳裕/講談社)

経済と暴力って対立軸ではなくて、むしろ「両者を揃えたものが(米中のように)強い」という話で、本作も今のところ貨幣と暴力が力の源泉の両輪のように回っています。

3つ目は信仰になるんですかねコレ。

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「望郷太郎」5巻より(山田芳裕/講談社)

作者が描きたいものが、過去の人類史の再現なのか、それとも現代の経済人が介入することによって過去とは異なる歴史を描きたいのか、未だ判別つかず興味深いですけど、太郎が日本に帰るという元々の縦軸にどうやって戻るんだろコレ、という。

 

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#勇気あるものより散れ 1巻 評論(ネタバレ注意)

「ガンスリンガー・ガール」「1518!」の相田裕の新作。

明治七年。

幕末に「鬼九郎」の異名で知られた剣士、元・会津藩士の鬼生田春安は、死に場所を求めるように反・維新政府の活動に身を投じ、内務卿・大久保利通の乗る馬車を襲撃する。

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「勇気あるものより散れ」1巻より(相田裕/白泉社)

馬車の中から現れ彼を迎撃したのは、先日、刀剣屋で言葉を交わした女学生風の娘だった。

致命傷を与えたはずの娘に敗れた春安は、逆に瀕死の重症を負わされるが、娘は不死者の一族を名乗り、彼を眷属として延命させることを告げる。

娘に救われた春安は生きる場所を得て、幕府から維新政府に受け継がれた、不死者を巡る忌まわしき闘争に身を投じる…

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「勇気あるものより散れ」1巻より(相田裕/白泉社)

という、主人公がヒロインの首に斬りつけるところから始まる、明治時代を舞台に不死をめぐる陰謀が渦巻く血生臭い伝奇剣劇アクション。

この作者の代表作は今のところ数多くないですが、新作のたびに予想のつかないジャンルに飛んでいきますね。

明治七年、作中で「近々 廃刀令が出る」とされているので、「るろうに剣心」のオープニングよりあと数年古いぐらいでしょうか。

不死と眷属の在り方が吸血鬼のようでもあり、「鬼滅の刃」のようでもあります。

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「勇気あるものより散れ」1巻より(相田裕/白泉社)

ガンアクションは昔描いていましたが、剣劇アクションはどうでしょうねと思いましたが、なかなか動いて見えます。まだ少しぎこちなさも感じるので巻が進むごとにもっとよくなっていきそう。

主人公は京都から函館まで転戦した元・会津藩士とのことで、この時代の便利なことに回想シーンや、もしかしたらリアルタイムのシーンでも新撰組や幕末の志士たちが登場する可能性がありますね。

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「勇気あるものより散れ」1巻より(相田裕/白泉社)

戦死したはずの剣士が不死の眷属として生きながらえてる描写はすでに1巻で登場しているので、割りとなんでもアリっちゃアリです。自分が幕府側だったら、あたら土方歳三や沖田総司のような優れた剣士を、不死化もさせずにむざむざ死なせるはずもないだろうと思うんですが。

作者の業というか、「戦う少女が傷つく姿を描きたい」がまずあって、「傷ついても死んでは困る」ので「不死にした」、という点でなにか「ガンスリ」に通じるものを感じなくもないです。

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「勇気あるものより散れ」1巻より(相田裕/白泉社)

話の縦軸は少年漫画のように明快でわかりやすく提示されて、今作も先々が楽しみな。

それにしても大久保利通はよく馬車を襲撃されるやっちゃな。

 

 

(選書参考)

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#銀河のカーテンコール 1巻 評論(ネタバレ注意)

アキバBlogで紹介されていたのがきっかけで。レーベルはモーニングとのことです。

初めて読む作家さんですが、たぶん女性じゃないかなと思います。過去作品もBE・LOVEレーベルだったり。

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「銀河のカーテンコール」1巻より(北駒生/講談社)

妻を亡くし、70歳を迎え引退することにした庭師の親方・誠(せい)と、30歳を迎え同年代の婚約者との婚約を解消した図書館司書・眞(まこ)。

2人は居酒屋の隣の座敷でそれぞれ引退と結婚を祝われていたが、誠は引退の撤回を、眞は婚約の解消を、それぞれ周囲に言い出せずに「一巻の終わり」を迎えてしまう。

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「銀河のカーテンコール」1巻より(北駒生/講談社)

言い出せないまま不本意に祝われた主役同士、2軒目に飲みに行くことになったが…で始まる、年の差40歳の大人のラブロマンス。

自分が読んだ漫画だと「うさぎドロップ」すら越えて年の差記録更新かな。西炯子の『娚の一生』が印象に残ってますが、見返すと20歳も離れてるわけではなかったでした。

まあ年の差が大きければ偉いとか面白いとかいうものでもないですけど。

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「銀河のカーテンコール」1巻より(北駒生/講談社)

庭師のエピソードを通じた木・花・そして星を絡めて、年の差から当初は恋愛対象として相手を見ていなかった2人が、徐々に互いに惹かれあっていく機微を、繊細に抒情的に。

子どもの頃に、TVのCMで「恋は、遠い日の花火ではない。」というキャッチコピーがあって、CM自体はあまり好きではなかったんですけど、キャッチコピーは好きだったな、と久しぶりに思い出しました。子どもが惹かれるコピーではなかったと思うんですがw

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「銀河のカーテンコール」1巻より(北駒生/講談社)

年の差恋愛ものってあらすじだけ見ると中高年のおっさんの妄想話のようでいて、心理描写が繊細で、意外と女性に人気の作品、人気女性作家の作品も多いんですよね。

「〜に似ている」というのは作家に失礼かと思いますが、いくえみ綾とか好きな方は、本作も楽しめるんでねえかなと。

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「銀河のカーテンコール」1巻より(北駒生/講談社)

気に入ったので過去作も読んでみようかな。

 

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#対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~ 3巻 評論(ネタバレ注意)

全寮制のお嬢様学園の高等部に入学してしまった、お嬢様の皮を被った2人の格闘ゲームオタクが出会ってしまったガール・ミーツ・ガール。

「お嬢様×格ゲー」ということで、「ゲーミングお嬢様」との類似やパクりパクられ疑惑などもありつつも、作者同士が仲良く対談なんかしたりしてまして、

nlab.itmedia.co.jp

そもそも「ハイスコアガール」が先じゃねえか、って話もあり、仲良きことは美しき哉。

前作「柚子森さん」でおねロリ百合を描いていたいたりして、少女をフェティッシュに百合チックに描写するのが特色で、

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「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」2巻より(江島絵理/KADOKAWA)

似たテーマを描きつつも「ゲーミングお嬢様」とはまた違っていて、棲み分けというか、どちらも楽しく読めます。

前巻までで厳格な寮内で格ゲー仲間を増やし、今巻ではいざ大会!の前の部活もの定番イベント、

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「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」2巻より(江島絵理/KADOKAWA)

アホ可愛い。

そしていざ大会!

前巻に片鱗はあったとはいえ、フェティッシュな少女たちの百合を期待して読んでいる読者の前に突然提示される「特攻の拓」展開なんですけど、アレか? この作者は少し頭がおかしいのか?

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「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」2巻より(江島絵理/KADOKAWA)

闘争心の表現としては面白いところから持ってきたなという感じで、次巻以降、世界観が異なるヒロインズたちとの対峙も楽しみなんですけど、大丈夫ですかwww 怒られたりとかしないんですかwww

とか思ってたら、シレッと対談とかやりそうですよねこの作者。

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「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」2巻より(江島絵理/KADOKAWA)

ちょっと「ストレッチ」の医大生だったヒロイン思い出しますよね、この子。

アホ可愛い。

 

 

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#ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 18巻 評論(ネタバレ注意)

架空の自治体、岡島県・町山市が舞台、岡島県警 町山警察署 町山交番に配属された新人女性警察官・川合麻依と、彼女を取り巻く町山警察署の先輩・上司の警察官たちが織りなす、警察官お仕事漫画。

元警察官が描き、「パトレイバー」「踊る大捜査線」の香りのするギャグコメディに溢れた日常要素と、生々しくダークネスな事件や人間の側面が同居する奇妙な作品。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」18巻より(泰三子/講談社)

今一番面白い漫画の一つじゃないかなと思います。自分は好きすぎて連載の有料のWEB掲載を毎話、毎週木曜日0時に即読みしてます。「現役漫画家で天才を3人挙げろ」と言われたら、自分は1人はこの人を挙げます。

7月からTVドラマやってて、新型コロナで撮影大変なんでしたっけか。

今巻はいわゆる長編エピソードにあたらない「小ネタ巻」ですが、前巻というか番外編の中編エピソード「アンボックス」を契機に、今巻からレギュラーメンバーが一部入れ替わっています。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」18巻より(泰三子/講談社)

さて。

自分はこうして漫画の感想を書いているんですが、作品未読の人向けに、著作権法32条1項で引用について定めるとおり、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」であるように表現することを念頭に、要約・抜粋した形で作品のあらすじを紹介したり、作品の雰囲気を伝える画像を引用することが多々あります。

最悪の想定、権利者に訴えられることがあっても、「引用の範囲」と抗告できるよう努めていますが、裁判になった時点で手間や時間を考えると負けも同然なので、権利者(作者・出版社)の弁護士や法務部に「訴え甲斐がない」と思わせること、そもそもそこに至るまで権利者を怒らせないことが重要になります。

で、どうするかというと、基本的に好意的な評論で作品を紹介し、「敵対するつもりはないですよ」「権利者の利益を損ねるほどのネタバレはしませんよ」「共存共栄ですよ」と遠回しにアピールします。

できれば公式アカウントから「いいね!」されたりする関係が理想です。

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ちなみに各作品の権利者及び正式な代理人以外の方の意見にはあんまり興味がなく、そうした方々との議論に自分の時間を費やすつもりはありません。

「駄作でも嘘を混じえて無理に褒めているのか」という話なんですが、駄作と思った作品、褒めようがない作品についてはそもそも記事にしません。

批判的に作品を批評する意義、つまらない作品を「つまらない」と評して消費者への警鐘や作家への改善要望とする意義は私も認めるところですが、創った人たち・ファンの人たちを向こうに回して炎上のリスクを背負って作品を批判するメリットが、少なくとも私の立場では、いわゆる「炎上狙い」以外には存在しないからです。

というわけで、このブログは面白くない漫画について「面白い」と嘘をつくこともなく(漫画の好みが合わない方は、すみません)、自分が好きな作品だけを基本的に褒め、出版社に怒られたこともなく、ここまでは平和にやれています。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」18巻より(泰三子/講談社)

「ハコヅメ」の今巻、「小ネタ巻」というかコメディ中心の基本的には楽しい巻ですが、どこか自分のブログに通じる「なにかに気を遣っている」感を感じます。

作者が成長し人気を博しTVドラマ化されるほどメジャーになり注目を浴びる立場になった結果、もともとそういう傾向はあったものの、より「警察広報が伝えたいこと」「警察行政に資すること」「警察行政との共存共栄」を意識した方向に、わずかに、角度で言うと2度くらい、少し軌道修正したような印象を感じました。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」18巻より(泰三子/講談社)

2度て。ほとんど一緒やん。

今のところそれが作品の面白さを損ねているようには感じませんが、例えば私が「つまんない漫画を思いっきり批判して『金返せ!』って書きたい!」と思うように、作者が「自分の出身組織で得た知識を活かして漫画を描くこと」に窮屈さやある種の後ろめたさを感じる日が来るのかもしれないな、と思います。

「元ネタに『かいていいですか?』と直接訊くことができないまま『共存共栄を前提に黙認されている』のを自覚している者の、ある種の遠慮と使命感」とでもいうか。

また「アンボックス」(時期が悪くてまだ感想を書いていません)でカナが感じた、「現場で頑張る仲間を残して自分はドロップアウトした」という実感は、おそらく作者も他人事ではないように感じました。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」18巻より(泰三子/講談社)

簡単に言うと、「警察もの」を描くこと・描けることはこの作家の武器である反面、枷でもあるんじゃないかと。

人気も面白さも絶頂期ですが、この作品自体は意外と遠くない将来に思ったより早く完結したりして、と思ったり。

わずかなその他の短編作品(原作担当)を読んだだけの人間がテキトーで無責任なことを言いますが、この作家はたぶん経験・職歴を元にした「警察お仕事もの」以外でも、十分面白い漫画を描き続けられるだろうと思います。

 

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