「オワーーーーーーーーーーーッ
いいのか!?これは食っていいのか!?」
「おいしいわよ ただし死ぬ」
最終巻。
漫画家の現場で料理が趣味のアシスタントがまかないを作る料理漫画。
修羅場→煮詰まる→料理→食べる→勝利→原稿は遅れる
を毎話繰り返す楽しく不条理な日常?グルメもの。
「累 -かさね-」を描いていた松浦だるまのチーフアシスタントを務めていた作者の半実録で、登場する料理も実際に作って作品登場の前後にブログにアップしている。
negineesan.hatenablog.com
ちなみに漫画化に際してフィクションを混ぜるにあたって、なぜか自分を女性に擬人化している。
ノリと勢いとシュールと投げやりの頭がいかれた会話芸と、緻密で豪快で大胆な創作レシピの調理プロセスがメイン。言語感覚も独特で、ブログも漫画も中毒性が強く、油断してると言葉遣いが感染るのだわ。よかったですね。
今巻のレシピは
・食べると死ぬうし牛丼と肉吸い
・強すぎて水で薄めるとちょうどいいオニオングラタンスープ
・マグロの頭ラーメン
・難問と鬼門をくぐり抜けたお好み焼き
・材料が17種類もあるけどそういえば卵かけ御飯
・油だけで2,000円越えで牛ヒレとフォアグラがいくらだったか不明なロッシーニ天ぷら
・上等なメロンの名状しがたい妙な食い方
・毛ガニ丸ごと洋風茶碗蒸し
・アンティチョークの激辛和えとアンティチョークの激甘和え
・仔豚の丸焼き
体に悪そうで美味そうな料理の数々は、レシピとともに理科の実験めいた手順が作中でほぼほぼ公開されているが、食材、機材、調理環境、技術、手間、経済性、テンション、頭のネジが飛んでいないなど複数の原因で常人にはなかなか真似ができない。
途中の失敗も赤裸々に、繊細かつダイナミックかついい加減な調理の描写、世の中には俺が食ったことのないファンタジーではない実在の美味しそうな料理がまだまだ沢山あるんだな、と料理の楽しさや食文化に対する夢と希望を与えてくれる。
キャラや雰囲気に愛着が湧いているのでやはり終わられると寂しく、次回作に期待してしまうものの、本来の持ち味の不条理さを商業連載に当たってだいぶ薄めたことは作中で度々示唆され、創作や商業連載に対するモチベーションもだいぶ屈折しているようなので、ちょっと心配。
「サブカルくそ漫画にこだわってたのに
なんで普通の商業誌のオファー受けようと思ったんですか?」
「うーん … それはですね」
すごく面白かったです。ぜひまた漫画の「魔法」を見せていただきたく。
aqm.hatenablog.jp