「オーラって言うのかなぁ 主演俳優に多いですよね」
「芝居が上手いというより芝居が良いというか…」
「ただそこに立っているだけで人心を掴む
生まれついてのキリストのような存在」
誰この表紙の人。
天才女優の卵・「夜凪 景」のサクセスストーリー、映画版のガラスの仮面。
役から帰って来れない症候群から「普通の高校生活」で自分を取り戻した景を黒山が撮る。新宿駅でのMVゲリラ撮影、この映像が「新宿ガール」として全世界でブレイクし、若手の異才たちの心を粟立たせる。
そんな中、暗躍する芸能プロデューサーの手で、若手トップ女優・百城千世子と景のダブルキャスト(主演交代制)の舞台が企画される…
「ガラスの仮面」でもありましたね、「奇跡の人」のヘレン・ケラー役、マヤと亜弓さんの日替わり主演。と思ったらいきなり「紅天女」編に突入な感じ。今までの仲間全員、敵さんチーム。
私は「紅天女」編は「亜弓さんチームのメンツがショボすぎる」点が不満なんですけど、そこを既存の最強布陣で補ってきた感じ、
一方、景のパートナーは…まーたアクの強い新キャラたちが出てきたね。1人は表紙の人。そして恒例のソロ山籠り。
「ともかく我々が考えるべきは
あれとどう渡り合うか それだけです」
天才の活躍を見せる、というのは一種の快楽的なエンターテインメントで、漫画においても様々な分野、様々な技法で多くの作家が挑みます。
中には人格が変人なだけで、天才性そのものの表現に失敗する作品も少なくない。
天才を描くことは天才にしかできないのか?芥川賞を獲った作家を主人公にした物語は、芥川賞を獲ったことのない作家に描けるのか?
「そういう当たり前で不自由な現実が
私たちを大人にする 常識という鎖に縛られる
私は鎖を断ち切るために物を作っています」
この巻の彼らは台本の読み合わせぐらいしか仕事しておらず、天才を、周りの、そして本人の口から言葉で語らせることに特化していて、それでもとてもエキサイティングに成功しているように感じました。
「あれは目指してどうこうなるものじゃないよ
偶然の産物だ 奇跡といってもいい」
いちいち「ガラスの仮面」を引き合いに出して済まない気持ちはあるんですけど、アレはやり尽くしてしまってるので、まあ、しゃあないやん。手塚治虫とカブっちゃうことがそうであるように、誰も悪くないわ。
展開こそ似てますがまったくの別物で、匹敵するぐらい面白い。これはwktk。
「常識なんてクソ喰らえと退屈な世界を否定するのも私たちの仕事
ようこそ私の世界へ あなたはもっと強くなる」
甲さんチーム・乙さんチームのライバル関係が築かれるのと並行して、「美味しんぼ」なら「究極の料理」、「ヒカルの碁」なら「神の一手」のように、将来の「究極の映画」を構成するメンツが徐々に揃ってきつつあるようにも見えます。
次巻以降への予告編としては満点で、私の期待値は天井知らずでうなぎ登り。言葉で語るだけの巻でしたが、この作者が口だけ番長じゃないことも既に知っています。
願わくば、美内すずえ先生のように自ら上げたハードルで自縄自縛に陥りませんように。「ガラスの仮面」は「紅天女」編の山場で、もう7年以上の間、新刊が出ていません。
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