#AQM

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#高橋留美子傑作集 魔女とディナー 【完】 評論(ネタバレ注意)

「魔女とディナー」
妻に先立たれ定年間際の痩せた中間管理職の男・糸川は、なぜか取引先の大手エステの美魔女社長・真条に見初められ、夜な夜な共に会食を重ねる。職の細い糸川はほとんど食べず、真条はガツガツ食べるにも関わらず、糸川はどんどん太っていく一方で真条は若々しい美を保っていた。

「やましい出来事」
中年会社員・小堺は、キャバ嬢に入れあげ出張先の北陸に彼女を呼んで高級料亭・風雲亭で浮気未遂をした、妻には秘密の過去があった。それから数年、息子が結婚相手として連れてきた知的で真面目そうな女は、件のキャバ嬢・彩花だった。

「死ねばいいのに」
会社を早期退職した初老の男は、商才に恵まれた妻に扶養されながら若い頃からの小説家の夢を捨てられず応募作を執筆していた。いつまでたっても小説を完成させない夫に妻は業を煮やして横暴に振る舞い、男は妻への殺意を募らせ、小説のネタとして温めていたトリックで妻の殺害を試みる。

「不定形ファミリー」
信用金庫を定年まで勤め上げた片木は、妻から離婚を言い渡されマンションも売却しアパートで一人暮らしを始める。飲んだくれて潰れたところを自宅まで送られた縁で深い仲になりかかった飲み屋の女将は、複雑な家庭事情を抱えていた。

「マル秘ルネッサンス」
定年を迎え再就職先を探す老け顔の男・枯枝は、面接で全敗中。スカウトマンに声をかけられ有名製薬会社の新薬モニターのバイトを始める。クールビューティな女医から説明を受けたその新薬とは若返りの薬だった。若返り、高給を得て、第二の人生は順風満帆に見えたが…

「私のスカイ」
男は定年退職したら愛犬・スカイと毎日散歩に行こうと夢見ていたが、定年退職した翌日、スカイは寿命で死んでしまった。男はスカイのお骨を連れ帰った日から、自宅に1人の老人の霊が見えるようになる。霊はスカイを名乗り、向かいのアパートの美人シングルマザーの悩みを一緒に解決しようとする。

 

高橋留美子が50代後半の数年間に描いた短編作品6編。意図したものか、全て中年後期〜初老の男を主人公とした作品。

久しぶりに高橋留美子の新作を読みましたが、噂になってた絵というか顔、そんな変わったかね?雑誌掲載からちょっとタイムラグがあるせいか、あんま気にならんかったけど。

作劇が昔はもっとオチにどんでん返しを用意した短編が多かった気がするけど、起承転結というより起転承結というか、前半に転機を持ってきて後半は道なりに、というあっさりした読後感のものが多い。

ケレン味が抜けて自然体というか、ある意味、主人公の設定も相まって枯れた作風になってる感じ。思うところがあるのかね、この後、長編の新作を読みますが、長編ではその辺どうなんでしょう。

破綻せず筆が滑らず、少し退屈だけど続きが気になる円熟が読んでて心地良く感じるのは、高橋留美子と一緒に読者の自分も同じ時間分、歳をとったせいかもしんないな、とか考えた。

 

高橋留美子傑作集 魔女とディナー (ビッグコミックススペシャル)

高橋留美子傑作集 魔女とディナー (ビッグコミックススペシャル)