(この子は…靴をそろえて 家族全員の話に耳を傾け
牙も爪も極力隠し 僕らとしっかり目線を合わせていた
そういう小さな努力を重ねて…
ハルのあの笑顔を手に入れたのかな)
動物たちが直立歩行し服を着て暮らす社会を舞台にした、何かと示唆に富む青春もの。
主人公はハイイロオオカミのオス。学園内の食殺事件の犯人を突き止め決闘で倒し、その過程で友人の足を食った罪に耐えかねて学園を去った、強く不器用で心優しいレゴシ。
彼と恋に落ちた魔性の美少女先輩、ドワーフウサギのハル。
肉食と草食が共生する一見理想的な社会の「そう簡単に上手くいかない」部分にスポットを当て、その社会の矛盾に嵌り落ちて苦悩する肉食動物の少年の葛藤、放浪、恋愛観、人生観。
ここ数巻のテーマは異種間のハーフ。種族を超えた愛情の末に生まれた者はただの社会の異物なのか。
肉食と草食のハーフの凶悪犯罪者・メロン。爬虫類とオオカミのハーフの、レゴシの自殺した母親。彼らに自分とハルの将来の子どもの姿を重ねるレゴシ。
重たいテーマなのに不思議と暗くないのは、レゴシのキャラか、作者の手腕か。
読むのに気が重くなることがなく、魅せながらグイグイ読ませる。次巻も楽しみ。
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