「ねーねーおばーちゃん」
「な…なんだい?」
「おじーちゃんちょーだい!」
「だめですよ」
「こら未乃!孫×祖父なんてフィクションでも許されないわよ!」
「楓さんナニ言ってんだい?」
長年連れ添った津軽弁の農家の老夫婦・正蔵とイネは、ある夜目覚めると二人とも青年期のイケメンと美女の姿に、特に理由もなく若返っていた。
若返った二人に孫娘ははしゃいで甘え、息子の嫁はときめき、息子は動揺し、老人会はざわついたが、60年近く連れ添った二人はそこまで動じることもなく、しかし少しずつ若返った身体でのかつての日常を取り戻していく。
という理不尽ファンタジーな日常コメディ。「特に理由もなく若返っていた」と書きましたが、後半に一応理由らしきものは描かれます。
相変わらずこの作者は売りっ気に欠けるというか、なんなんこの「ヒットさせる気ゼロです」みたいなタイトルはw 編集は何をやっているのw
と思ったんですがTwitterで描きためたものの書籍化ということみたいです。編集は悪くない。
前作から変わって奇抜な初期設定を入れて、うろたえる周囲とのギャップでコメディ漫画っぽく、でも肝心の二人は見た目こそ若夫婦ながらメンタル面は坦懐とした老人の日常。
若返ってできることが増えて(戻って)喜ぶ描写が多く、逆説的に読んでるこっちがいつか老いた時に「ああ、こういうこともできなくなるのか」という思いが強くなる、あとがきで作者も取材過程を語るように「老いと向き合う」側面が強いコメディ。
読んでてちょっと「泣ける最終回」が早くも何パターンか思い浮かんでしまって、自分の想像で泣きそう。
でも枯れた風情ながら、若返った身体に引っ張られて老夫婦が互いに再びときめく気持ちが仄見えるのがロマンティックよね。
あと相変わらず、可愛い女の子を描くよね。
aqm.hatenablog.jp
(選書参考)
blog.livedoor.jp