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#映写室のわかばさん 2巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

「古い映画館 幼い頃の原風景
 オアシスのようにこの世界のどこかで
 永遠にあり続けてほしい『故郷』

 でも実際は誰も行かないし
 誰かの感傷のためだけにあるオープンセットだ

 故郷を捨てる後ろめたさから逃げるための道具であって
 そんなのもう『映画館』じゃない」

昭和36年創業、昔ながらの単館名画座「ニュー映劇」。映写技師は無口でクールビューティな職人気質な美女・わかばさんだった。

という、映画ものでも割と変わり種の映写技師もの。

暑くなるとすぐツナギを脱いでタンクトップにホットパンツ姿のクーデレわかばさんを愛でつつ、古き良き暑き暗き映写のバックヤードへの郷愁を感じさせる日常もの。お色気だけどエロはなし、な匙加減。

映画もの漫画ですけど映画作品への言及はなく、あくまでバックヤードを舞台にした働く女の子漫画。「昔の映画館あるある」なので、むかーしからの映画ファンの方、昔お勤めだった方にもオススメ。

映画館が日本にだいたい3,000スクリーン、9割方がシネコンで、9割方デジタル映写機に置き換わってるそうです。フィルム映写機も自動化されたやつあるんですけど、本作は手動フィルム切り替えする絶滅危惧種の映画館が舞台。

単館の名画座は斜陽となって久しくもはや絶滅危惧種ですけど、そのことから目をそらすでもなく淡々と、でも関わる人々の喜怒哀楽を伴って生き生きと描写されます。

「僕はこの街を離れる だけどニュー映劇はここにある
 郷愁でもなく遠い記憶のおとぎ話でもない

 この世界にはそういう場所がちゃんとあるって事を

 僕は忘れない」

自分は基本的にデジタル化推進派だけど、それでも少年を羨ましく思う。

自分の記憶の中の行きつけだった名画座は、我々自身の選択によってとっくの昔になくなってしまった。矛盾もないものねだりもまた人間の情だと思う。

いい漫画だった。

 

 

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