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#九龍ジェネリックロマンス 2巻 評論(ネタバレ注意)

小学館漫画賞受賞作の「恋は雨上がりのように」の作者の現作は、香港・九龍城砦を舞台にしたOLの日常恋愛もの。の皮を被ったSFミステリー?

前作のスピリッツから今作はヤンジャンに移籍。

表紙の美女は、スイカを食べながらタバコを吸うのが好きな、九龍の小さな不動産屋に勤める鯨井(32)。彼女は同僚の営業マン・工藤に恋をしていた。

描写の大半にはSF色は薄いものの、視力が2.0になる目薬、宙空に建設される空中都市「ジェネリックテラ」の存在など、近未来を感じさせる背景設定にも関わらず、もう存在しないはずの九龍城砦が舞台であるなど、謎の多い日常もの。

九龍城砦、SF、日常、恋愛、不動産屋、OL、ミステリーと、まるでランダムにカードをめくって作品の属性を決めたような組み合わせ。

今巻を読んで思い出したんですか、自分は前作「恋は雨上がりのように」を最後まで読んでいないんでした。全10巻の8巻時点で脱落。

作品のテーマ、キャラクター、繊細な心理描写、それらに似つかわしい画など、1巻で提示された素材はとても質が高いものでしたが、2巻以降、作者はそれらの素材をコトコトコトコトと煮込みに入り、3巻を過ぎ、5巻を過ぎ、8巻が終わっても煮込み続け、美味しそうな香りはすれど一向に味見すらさせてもらえないことに業を煮やして、読むのをやめてしまいました。

10巻で完結と知っていればもう少し粘ったんですが。

本作も作者は素材を煮込みに入ったように見えます。

慎重に言葉を選んで喩えるなら、観始めたらエンディングまでノンストップで観ざるを得ない映画メディア、もしくはある意味で浦沢直樹の近作のような作風で、1冊単位ごとに面白いかどうかを語るのに向いていない、完結してから評価されるべき作風とも言え、また読者として自分が短気すぎ繊細で叙情的な描写をじっくり楽しむ感受性に欠けているとも言えます。

最後まで読めば何が待っている作者なのか、自分に必要なのは、あらかじめ前作の9巻と10巻を読むことかもしれない、と思いました。

 

 

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