#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#Thisコミュニケーション 1巻 評論(ネタバレ注意)

「彼女らは供出という形で手放された子供を薬漬けにして作る戦士です

 …どこかで捨てられたという気持ちがあるのでしょう
 皆 功を急いで暴れるばかりなのです

 協調よりも周りを出し抜きたい と
 自分には価値があるはずだ と…」

「力を誇示するばかりの子供たち…か
 これが世界最後の軍隊とはね…」

 

20世紀後半、地球人類は外来のクリーチャー群に敵性認定され滅亡の危機に瀕していた。各国はクリーチャーの攻撃と内輪揉めで滅亡し、わずかばかりの人類が生き残るばかりだった。

主人公・デルウハは放浪の果てに長野県松本市の地下シェルターに隠れた研究所にたどり着く。そこでは6人の不死身の改造人間少女たちがクリーチャーに抵抗を続けていた。

軍出身のデルウハは命を救ってもらった礼に研究所と契約し、野放図な彼女たちの指揮官を務めることとなった。

デルウハは所属していた軍で「味方殺し」「悪魔」と呼ばれた効率厨だった…

 

というポストアポカリプスなSFもの。バトルもありますが、作品のキモは頭脳戦というか、「効率のためにどう味方を殺すか」がテーマな感じ。

6人の改造人間少女たちは「強力な攻撃力」「一般人並みの防御力」「死んだら1時間前の状態に巻き戻り」という能力。

超合理主義者のデルウハが、不死身で記憶も1時間リセットされるのを良いことに、都合が悪い事実を知った部下のヒロインたちをザックザク殺してリセットする、ひでえ漫画だなコレw

 

まるで「ガンスリンガー・ガール」をベースに、設定を「幼女戦記」のカルロ・ゼンが更に偽悪的に改変し、シナリオを「デスノート」の大場つぐみが考えてます、みたいな漫画。

倫理にもとる主人公、と言う意味に限っては、いま話題の「タイムパラドクスゴーストライター」さえ上回っとるw

フィクション上の軍人の中では比較的「人格者」として評価されるヤン・ウェンリーも「味方を効率的に殺すのが良い指揮官」的なことを確か言っていましたが。

雪山に閉ざされた研究所、閉鎖的な人間関係、「今回は誰を殺せば」スムーズに事が運ぶかというゲーム要素は、ミステリー風でもあります。

主人公の被害を受けるヒロインたちもメンヘル・自己中・コミュ症と三拍子揃ったメンツが揃っていて、人類の存亡が「とても個性的な人たち」の集まりに託された感ハンパねえ。広義のダークヒーロー…なのか?

 

とても奇抜で、ややもすれば出オチ漫画に陥りかねない設定ですが、人類の存亡を眼前にした極限状態で繰り広げられる合理主義クズと自己中クズの人間関係の中で、とても美しい物語が紡がれる予感の萌芽が1巻にしてすでに提示されていて、続きがとても楽しみ。

 

「あ…あの人 多分 私たちを殺してるよ…?」

「え?」

「(まずは最優先で今のむつの話を全員の頭から消さなければ)」

 

発想が完全に「犯人」で笑うわこんなんw

 

Thisコミュニケーション 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

Thisコミュニケーション 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:六内円栄
  • 発売日: 2020/08/04
  • メディア: Kindle版

 

(選書参考)

blog.livedoor.jp