

「日清戦争を経て答えを見つけた気がすんでんで
兵士の攻撃性を引き出す原動力となんもんは
敵兵への憎しみではねく恐怖でもねく政治思想の違いでもねえ…」
「それはなんら?」
「『愛』です」
「ただ中には『生まれながらの兵士』の者もいますがね
攻撃性が強く忠実で後悔や自責を感じねで人が殺せる兵士
軍隊には彼らのような兵士が切実に必要らんです」
明治40年前後の北海道が舞台。日露戦争の二〇三高地で超人的な活躍をして「不死身の杉元」と呼ばれたけど上官半殺しにしてクビになった元軍人とアイヌの少女・アシリパのコンビを主人公に、網走監獄の囚人たちの刺青に刻まれたアイヌの隠し大金塊の地図を巡る血生臭い冒険もの。
樺太やロシア領から舞台が北海道に帰ってきて、金塊争奪戦の勢力図を整理すると
①土方歳三一派
②鶴見中尉一派
③杉元・アシリパ一派
に加えて今巻で
④海賊房太郎一派
が加わり、さらに
⑤ソフィア一派
が上陸しそうな具合。
今巻は新勢力の海賊房太郎と、表紙の鶴見配下の宇佐美上等兵の2人の新キャラにスポットが当たった巻。
よくまあ次から次へと印象的というか「こいつヤベえ」って新キャラを繰り出してくるもんだなと感心します。読者が忘れない1冊の間での伏線→回収の段取りが手慣れて巧みな上に演出も重厚なのが要因なんだろうか。地味に顔の描きわけのバリエーションも豊富ですよね。
意外な死、意外な生。
冒頭に引用したセリフも含め死生観がキャラそれぞれで、もともとアイヌの世界観に基づいて「動物の生命をいただく」描写が丁寧な漫画でしたけど、なんというか「いのちを描いてる漫画」だなー、と。
ページめくるまでホラーが来るのかギャグが来るのかわからないスリリングさもありますけど、この作品には珍しく「弱いものを守る戦い」が描かれてスリリングな巻。
「シマエナガ」はもう…最初っからイヤな予感しかしなかった予想どおりのベタなエピソードですけど、なんという丁寧な描き方www
aqm.hatenablog.jp