三栄って会社が名作漫画・アニメを特集するムックを出していて、一昨日出たムックが「80年代ラブコメ」特集ムックだとコミックナタリーが報じているのをTwitterのRTで目にしたので。
80年代ラブコメは大好物なのと、電子書籍化はしてないようなので「あー、これ後で欲しくなっても手に入らないやつだ」と思ったので買ってみました。デカいけど薄いので本棚でそんなに幅も取らないし。
おっさんホイホイというか人口の多いアラフォーの財布をピンポイントで狙ってきてる感じはしますねw
エディター、ライター陣は以下のとおり。個別記事には署名なし。
基本、三大少年誌の80年代ラブコメにスポット。「少年マンガ編」は少女漫画と便宜上区別するためのタイトルで、青年誌も含む、とのことです。「めぞん一刻」少年誌ちゃうしね。
制作中、出版間際にまつもと泉先生が亡くなったため、急遽奥付の最後に先生を偲ぶ短いコメント。
全120ページ。
目次その1。
オーソドックスで妥当な人選じゃございませんでしょうか。
「電影少女」を入れたくなるとこですけど、あれ連載開始が1989年51号で、80年代にギリギリかかってないんですよね。
メイン特集扱いで上記の6作品、6人のヒロインにそれぞれ10ページ前後のページを割いて特集。最近はネットの記事とかWikipediaとかの無料で読める方が記述が深く広かったりしてこのムックも例外ではないんですけど、ちゃんと許諾を取ってるだけあってあらすじ・名エピソード・名シーンのコマを引用して解説されてる他、既存版権絵もふんだんに掲載してて、漫画らしくそれでいてグラビアっぽくビジュアル面の魅力に訴える作り。
扱う作品が古い年代の作品だけあってネタバレは割りと容赦無く。
テキストはムックらしくイラストに合わせて断片的というか細切れの文章が多いんですけど、ちょっとまとまった文章のコラムとか、さすがに今さら知らなかった新事実とか新解釈とかは中々出てこないですけど、時代背景を踏まえて概要がよくまとまっていて、ブログなどの引用元として便利そうだな、という感じ。
ページ数の限りがある中でプロが仕事で書いてる文章なので抑制的でバランス取れていて、ふだんファンサイトや個人ブログを巡回してると「狂気が足りない」と思うかもしれない、「頭がおかしくない」文章。
ある意味当然ですけど、作品・ヒロインに対するDISもありません。
目次その2。
「ラブコメ論」みたいな話をするときに無視されがちなお色気系のラブコメにも少ないページながらスポット当ててるのは好感が持てます。なんというか「看板にはできないけど無視してはいけない」という匙加減というか。
インタビューは「当事者以外」の5人に。インタビュー形式で各見開き2ページずつ。
高橋留美子を語る椎名高志。
高橋先生のキャラクターって、自分自身にもウソをつくんですね。そしてそれは人間には普通にあるダメな部分として描写されてて、こういうギャグでしれっと消化していく
「ラブコメヒロイン大解剖 80´s 少年マンガ編」より(株式会社三栄)
その他、高橋作品との出会い、漫画家の飲み会に島本須美がきた話、高橋と自分の作劇論・キャラ造形論など。
読むのが途中までになってる「絶対可憐チルドレン」、もっかい最初から通読しようかしらん。
高橋留美子を語る藤田和日郎
「たくさんの読者に読んでもらうためには、たくさんの読者の楽しいと思うこと、イヤだと思うことを、ものすごく考えないといけない」
(「ラブコメヒロイン大解剖 80´s 少年マンガ編」より(株式会社三栄))
その他、高橋作品との出会い、太もも:すねの黄金律、シャケ。
「響子さん」じゃなくて「管理人さん」と呼ぶこだわりってお前ただのガチ恋勢やんけ。
あだち充を語る服部かずみ
大師匠です!僕がここまでやれてきたのは、あだち充先生のおかげだと思っています。
(「ラブコメヒロイン大解剖 80´s 少年マンガ編」より(株式会社三栄))
え、そうだったの。絵も作風も出版社も全然違うのに、漫画家の師弟関係ってよくわかんねえなw
少年漫画ラブコメを語る塩森恵子
少年漫画の幅の広さは羨ましいと思います。
(「ラブコメヒロイン大解剖 80´s 少年マンガ編」より(株式会社三栄))
少女漫画に疎いものでこの先生を存じ上げなかったんですけど、高校生でプロデビュー、江口寿史と同じ高校の2つちがい、夫が弓月光の元担当編集と、この人の話、情報量多くて面白いなw 当時既に少女漫画家だった目線から見た少年漫画ラブコメの話。
まつもと泉を語る赤松健
『オレンジ☆ロード』で恭介のライバルの男が出てくるのが大変ストレスでして、いつも『俺のひかるちゃんや鮎川を取らないでくれ〜!』と思っていたのですが、そのストレスをまったくなくしたのが『ラブひな』なんです。
(「ラブコメヒロイン大解剖 80´s 少年マンガ編」より(株式会社三栄))
まつもと泉の好きなところにしろ、自分の経歴や当時の戦略、絵の描き方にしろ、アンタの話はイチイチ具体的でわかりやすく、そしてなんか生臭いわw
その他コラムはラブコメの共通項、ヒロイン・主人公の傾向、アフター80年代のラブコメなど。
出色だったコラムその1、作品年表比較。
共通して80年代が舞台、という特色を生かして年表作って並べてみました。コレは作るのクッソめんどくさそうwww
※見出し以外は読めないようにわざと画質を落としています。
1984年、タッチの主人公たちが高校入学した年に、みゆきの主人公たちは結婚、五代くんは教育実習に行って、恭介とまどかが出会う。
コレは読んでて楽しいwww
昔のラブコメって、作中の年やキャラの生年月日をはっきり指定する作品が主流だったんかね。
出色だったコラムその2、ヒロイン分析レーダーチャート比較。
見開き2ページにこのレーダーチャートと解説テキスト、ヒロイン8人分ズラっと並びます。壮観。
漫画好きがブログとかファンサイトとかやってると、ラブコメに限らずバトル漫画でもスポーツ漫画でも「強さランキング」とかこういうレーダーチャートとか作りたくなっちゃうんですけど(「少女ファイト」は作者自ら作ってますね)、たいてい作ってる途中、「響子さんの小悪魔度は7にすべきか、8にすべきか」とか考えてるうちに「俺は一体なにをやっているんだろう」と我に返ってやめてしまうことが多いんですけど、仕事でやってるプロはやっぱりすごい。こういうの決める会議とかしたいw
レーダーチャートを単品で見ると「だからどうした」「これを見せられて俺はどうすればいいんだ」という感じなんですけど、ズラっと並べてみるとレーダーチャートの形がヒロイン1人1人で全然違ってて面白いです。援用すれば「キャラ被ってる」のも簡単に見つけられそうw というか男主人公のレーダーチャート作ったらだいたい全員似たような形になりそうw
指標に「ツンデレ度」がないのも80年代らしいよねw
ちなみに「明るさ度」ってなんやって話ですけど、「オレンジロード」のひかるちゃんが満点でトップでした。ああ、なるほど…
という感じでした。いい本だわ。
値段も1,000円とお値打ち価格だし、商品の性格上そう簡単に重版かかるような本ではなくタマも多くなさそうなので、80年代ラブコメを愛する方はお早目にぜひ。
aqm.hatenablog.jp
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(選書参考)
natalie.mu