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#娘の友達 6巻 評論(ネタバレ注意)

相変わらず表紙詐欺みたいなキュートでコケティッシュな表紙。

1年前に妻に先立たれ、高校生の娘は登校拒否で引きこもりに、会社では昇進を控えるものの係長として四六時中張り詰めて過ごしている市川晃介(アラフォー、後に課長に昇進)。

一時の安らぎを求めて通う裏通りの喫茶店に新しく入った看板娘を困った客から助けた後日、保護者面談で娘の高校を訪れた市川は、看板娘に再会する。彼女は如月古都、娘の同級生だった。

精神的に余裕がない状況で、あまりにも都合よく急速に距離を縮めてくる彼女に溺れていく主人公。

未成年かつ娘の友達であるヒロインと男女の仲に向かって流されていく、スキャンダラスで背徳的で官能的、「ここではないどこか」への逃避願望というか「誰かに攫っていって欲しい」願望を抱えた二人の、どこか70〜80年代な香りとバブみが漂う危ないアバンチュール・スリラー。

今巻もまあ、

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娘の友達 6巻より(萩原あさ美/講談社)

いろいろありまして。

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娘の友達 6巻より(萩原あさ美/講談社)

最近、「ハコヅメ」(警察官のお仕事漫画)を全巻イッキ読みしたので、このあたり「ハコヅメ」の主人公たちだったら「娘の友達」の主人公たちにどう対応しただろうか、とちょっと想像してしまいました。クロスオーバーのコラボとかやんないですかねw

「生活安全課が制服着て業務してる描写、珍しいな」とかどうでもいいところが気になったりしました。

巻としては、娘バレ、相手の親バレに続いて会社バレ、警察バレなど、主人公が破滅に向かう様が、真綿で首を絞めるようにジワジワとエスカレートしていきつつ、当初ミステリアス故に魅力的に見えたヒロインの心象がだいぶ明らかになっていくお話。

センセーショナルだった1巻当初と比べると、見ようによっては中だるみ頃な巻。Amazonのレビューも「冗長で退屈」と低評価も目立ち、ホントのことではあるのでそれはそれで妥当だと思います。「丁寧で繊細な心理描写」ととるか、「まどろっこしい似たような展開の繰り返し」ととるか、読む人による感じ。

もともと、「普通」の人が陥る破滅、という一見ホラーで文学的チックな主題と表裏一体の、もう一つのメロでスキャンダラスな主題、身も蓋もない言い方をすれば「娘の友達の可愛いJKと関係を持ったらどうなるの?」というワイドショー的ゲスな興味で引っ張ってるところがあるので、「さっさとセッ久してさっさと破滅するところを見せろ」というのはあります。

「真綿で首を絞めるようにジワジワと」とは相性が悪い話ですね。

自分が気になるのは、ヒロインの心象とその原因について深掘りされる反面、主人公の中年男は流されるばかりで、良くも悪くも「人格の芯の固さ」のようなものが感じられず、非常に不釣り合いに思えてくるところです。

こういうお話は品行方正では何も始まらず、登場人物の錯誤で物語を進めるところがあって、状況に流されるばかりの恋愛・ラブコメの男主人公が優柔不断で定見が感じられないことは決して珍しいことではないんですけど、主人公が中年だから余計そう感じるんでしょうか。

おっさんになって人格にこびりついてしまった、良く言えば「信念」とか「主義」のようなもの、悪く言えば「偏見」とか「生き汚なさ」のようなものが、このおっさんには感じられないんですよね。

「森田健作的な説教おじさん」になるとか、「バレなきゃ平気だからヤレそうなJKとセッ久したいぜおじさん」になるとか、「お姫様を護る騎士的な自分に陶酔おじさん」とか、「関わりたくないから保身第一で見捨てるぜおじさん」とか、なんか無いのかお前、という感じで、

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娘の友達 6巻より(萩原あさ美/講談社)

「普通」の人が陥る破滅、というよりは、虫みたいにその場その場で場当たり的にアクセル踏んでみたりブレーキ踏んでみたりハンドル切ってみたりする主人公の人格の芯の感じられ無さに、徐々に感情移入度が薄まって「そりゃそうなるやろ」と冷めた目で見てしまいます。

「小悪魔JKに振り回される役回り人形おじさん」みたいというか、同じおじさんとして、ヒロインよりもこっちのおっさんの方が闇が深い気がしてくるというか、「ホントにこの人40年生きてきたの?」と。

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娘の友達 6巻より(萩原あさ美/講談社)

まあ、もうなんか、生まれたてみたいなピュアなこと言ってねえでまずテメエの娘の心配しろよ。とかね。


という感じです。ブツブツ文句言いながら、読むし、語るし、まんまと「昼ドラを文句言いながら見続けるおじさん」ですね俺www

 

娘の友達(6) (コミックDAYSコミックス)

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