大ヒットとなった00年代の名作「デスノート」の短編集。
「Cキラ編」初出2008年、実質44ページ。
本編最終回から数年後、リューク以外の死神によってまたも人間界に持ち込まれたデスノート。今回の所有者は安楽死を望む老人を殺し続けていた。日本の警察が手を打とうとする一方、Lを継いだニアはこの事件に興味を持てないでいた…
高齢化社会をデスノートで解決しようとする所有者の話ですが、ノートの所有者はほとんど登場せず、ニアはやる気がなく、当然「元祖キラ」たる夜神月も登場しない小品ですが、そのことがかえって夜神月の特殊性を引き立たせる秀逸な短編。やる気がないなりのニアの打つ手もシンプルながら非凡で「人間ってそういうもの」という謎の説得力が。
「Aキラ編」初出2020年、実質87ページ。
「Cキラ編」から更に数年後、退屈したリュークが再び人間界に落としたデスノートを拾ったのは、IQテスト3年連続日本一の中学生だった。彼はデスノートをオークションにかけて売ろうとする。
去年描かれた作品。
お、大場つぐみもようやく俺のアイデアに追いついてきたか。
b.hatena.ne.jp
嘘ですイキってごめんなさい。
オークション以前にそもそもデスノート自体が都市伝説や学校の怪談的というか、小学生が妄想しそうな誰でも一度は思いつくものなんですが、この原作者の非凡なところは「誰でも思いつく」シンプルさを逆手にとって「わかるわかるー」と読者の入口としながら、ディティールの膨らませかたや展開の緻密さで圧倒してくるところですね。
「フィクションの登場人物は作者の頭以上に頭よく描くことはできない」とよく言いますが、頭いい人がプロの仕事として真剣に考えた話だなー、と思います。
頭のよさって相対的なものなので、「納得いかねえ、俺の方が頭いいわ!」って人がいたらごめんなさいね。
ニアがもうただの解説役なんですけど、よく喋るし楽しそうだなw
「デスノートにラクガキ4コマ」初出2004年〜2005年、9ページ、13篇。
しょーもなくて好きw
「L ➖ IneDay」初出年次不明、7ページ。
「L ➖ The Wammy's House」初出年次不明、5ページ。
存命時のLの日常ものと、幼少期からの成長エピソード。
Lのファン向けボーナス作品という感じ。
「鏡 太郎 編」初出2003年、57ページ。
なんだろう?と思ったんですが、デスノート本編の連載前のパイロット版というか、読切。小畑健の絵が安定しているので、絵の上手い下手だけでは描かれた時系列がわからんw
リュークとデスノートの存在は共通してますが、ノートを拾うのはいじめられっ子の平凡な中学生。
「デス消しゴム」なるこの読切オリジナルのアイテムも登場。書いた名前をこの消しゴムで消すと死んだ人が生き返ります。無茶するなあw
シニカルなラストで読切としてレベル高いですけど、夜神月とLやその後継者たちが丁々発止の駆け引きを繰り広げた本編と比べるとパンチが弱く、なんというか「大場つぐみが考えたにしては普通のデスノート」という感じ。登場人物も全員「普通の人」。
当然、一番最初の「デスノート」なんで、続編スピンオフと違って「はじめまして」の読者にページ数の制約の中で世界観設定なども理解させないといけない、ハンデがあってのことですけど。
やっぱあの本編の惹き込まれるスリリングな展開は、連載の長尺を活かした夜神月やLなどのキャラクター性と頭脳戦に負うところが大きかったんだなーと。