若き日本人ジャズ・サックス・プレイヤー宮本大のサクセス・ストーリー。
日本を舞台にした「BLUE GIANT」、ヨーロッパを舞台にした「BLUE GIANT SUPREME」に続いて第三部に相当。今度の舞台はジャズの本場、アメリカ。
シアトルでの二つの目的、「シアトルのジャズを知ること」「アメリカを旅するクルマを手に入れること」を果たしたダイは修理工場の2人に見送られ、街から街で、ポートランドを経てサンフランシスコに。
その途上、前巻で縁のあったスケートボーダー・ヒッチハイカーのジェイソンを再びピックアップ、ジェイソンはダイのエージェントを買って出るのだった…
毎巻の巻末の「そして数年後」の関係者インタビューで、ダイが世界的に「成功」することは約束されていく作品で、逆境でも才能と努力を兼ね備えたダイが「吹けばなんとなかなる」展開がコアで、もう何巻も前、ヨーロッパ編から繰り返されています。
ゼロからスタート、偏屈で強力なメンバーを集めて一世を風靡するバンドに…という展開もヨーロッパ編でやりきったので、アメリカ編は趣向を変えてダイが中古の日本車でアメリカ中の都市をソロで巡りバンドメンバーは現地調達する、というロードムービー風。
ジェイソンが相棒として、しばらくレギュラー化するんかね。
正直、「ソロでアメリカ中を巡る」ことがプレイヤーとしての成長・成功に向けて何の意味があるのか、今のところ読者はよくわかんねーんですけど、作中でも記者にズバリ質問させたり、作者も自覚的。自覚的であるなら、この疑問を伏線にして、そのうち回収してくれるんだろう。
サンフランシスコのチャイナタウンで暮らし、アメリカジャズ界隈の人種の壁を前に鬱屈する中国系アメリカ人ドラマーのアレックスが今巻のメインゲストと言っていいと思います。
「ジャズとアジア人」という、ダイにとってあり得たかもしれない未来。いわゆる「外国人が握る江戸前寿司」問題、アメリカに限った話ではないことで、どう料理するのかってまあダイならこう言いますよね、っていう。そういう漫画だしね。
相変わらずクオリティは高く一冊読んだ満足度も高いですが、巻ごとに一つに街に取り組むロードムービー風にしたことで、やや単調というか、一番描きたいことを後回しにして「描いておきたいこと」リストを粛々と消化してる感も出てきて、「この旅の行く末」がまだ不透明なことも相まって、作者も読者も少し我慢のしどころ、という感じ。
aqm.hatenablog.jp