

元ヤンキーな青春を送り、SNSで漫画クラスタに入り浸る漫画好きの真白悠(♀)は中小企業の虹原印刷(株)に就職。
企画デザイン課に配属され、印刷物のデザイン、データ作成・出力、校正を担当。担当する仕事は選挙のチラシからエロ同人誌までなんでもあり。
という印刷会社のお仕事日常漫画。

「刷ったもんだ!」4巻より(染谷みのる/講談社)
取材もしてんでしょうけど、1巻巻末の「Special Thanks」に「元勤め先の皆さま」とあり、作者が経験者なんですね。「NEW GAME!」と同じパターン。
読者に視点を合わせるべく主人公の新人目線・初心者目線で業者されるのは、業界ものに限らずスポーツものでも定番のノウハウですけど、新人の視線が届かないところで起こっていることに目線がいかないせいで単調になりがちです。
スポーツだったらフィールドなりコートで起こってることには目が届くんですけど、俯瞰した目線は…ということで、近年は監督やバックヤードスタッフの目線を取り入れたスポーツ漫画が多くなりました。
会社お仕事ものは組織で分業でサービスを届ける主役や花形を作りにくいお仕事で、一人の人間の視線が端々に届きにくく、漫画にするには結構工夫が必要なんじゃないかと思いますし、この作品も3巻までは割りと主人公視点に寄った描写がほとんどだったように思うんですが、今巻は印刷会社の中でいろんな役割をして動いてる人たちが深掘りされて、会社お仕事ものらしい幅が出てきたように思います。

「刷ったもんだ!」4巻より(染谷みのる/講談社)
いろんな部署でいろんな人がそれぞれに頑張っている姿をちゃんと描くというのは、こうした漫画の醍醐味でもあるんですけど、いっちょ噛みではなかなか描けないし、一人の人間の経験だけでもなかなか描けないんじゃないかと思います。元印刷会社社員の知識だけに甘んじることなく、ちゃんと取材して描いてんだなあ、と。
なんというか、「『描きたいエピソード、描きたい仕事があるから』という理由があって逆算でキャラが配置されてる」感があって、キャラの置き方や造形のプロセスが少し他のストーリーものと違ってて面白いです。

「刷ったもんだ!」4巻より(染谷みのる/講談社)
仕事に対する誇りや愛着が感じられて、地味なテーマな漫画ですけど、いいなあって。毎日働いてると、ついつい忘れちゃうんですけど。
いろいろ苦労もあったけど、間に合って、やり遂げて、

「刷ったもんだ!」4巻より(染谷みのる/講談社)
いい仕事した人間の、いい顔描くよなあ、この人。
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