#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#カノジョも彼女 7巻 評論(ネタバレ注意)

幼馴染の咲に小学生以来ずっと片想いで何回フラれても告白し続けた直也。

高校入学を機についに咲にOKしてもらい付き合いだした矢先、直也はクラスメイトの超美少女・渚に告白される。彼女の可愛さと健気さに胸を打たれた直也は…

f:id:AQM:20210116020414j:plain

「カノジョも彼女」1巻より(ヒロユキ/講談社)

というガチもんのハーレムラブコメ。バカコメよりです。作者は「アホガール」の人。

終盤が荒れたりイマイチ納得いかない展開を繰り返すハーレムラブコメというジャンルに飽きてしまった自分の最後の希望。

この第1話のコマすごいっすよね。これだけでどういう漫画か全部説明できてしまう。

コロンブスの卵というよりは「バカすぎてメジャー誌では誰もやらなかっただけ」という気もします。ギャグ漫画だったらあった気もするな。

これは今巻の冒頭に掲示されてるキャラ紹介&相関図。

f:id:AQM:20210819021035p:plain

「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

ここんとこ毎巻、「警察に通報」というキーワードが出てくるラブコメ。

主人公と恋人関係で同棲関係の左上の1stヒロインと右上の2ndヒロイン、その関係を監視するために同居している左下の4thヒロイン。

今巻のお話は、主人公から伸びた矢印に「諦めてほしい」と添えられている、表紙の彼女、3rdヒロイン。

二股彼女と同棲中の主人公に幾度となく迫り続け、その都度拒否され続け時に警察に通報までされて、傷ついても傷ついてもめげずにグイグイ迫り続ける、諦めない心と行動力の権化の、一世一代の勝負駆け。

f:id:AQM:20210819021228p:plain

「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

もともとストーカー気味だった彼女の「グイグイ迫る」は今巻においては睡眠薬と手錠を使用させるに及び、犯罪スレスレというか普通に犯罪であるにも関わらず、なんだろうね、まるでウマ娘のトウカイテイオーやキングヘイローのように挫けても傷ついても何度でも立ち上がるその不屈は、狂気じみた美しさすら感じます。

それを象徴するかのように、違法行為をいくつも犯しながら愛を語り恋を語る今巻の彼女の言葉の、なんと名言のオンパレードであることか。

f:id:AQM:20210819021146p:plain

「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

イイ顔で美談風のキメゴマだけど、ただの生涯ストーカー宣言じゃねえかw

ギャグコメディ色の強いハーレムラブコメ作品ですけど、彼女の狂気はハーレムラブコメがごまかしながら隠し持ってきた狂気の体現であり、恋愛が本来持つ狂気を体現したものではないかと思います。

「ハコヅメ」の最新刊「アンボックス」で描かれたように、恋をすると人は少しおかしくなるし、商業的な要請から生まれたであろうハーレムラブコメというジャンルは自分に言わせれば少なくとも一夫一婦制の文化圏における倫理観においてはもともと頭がおかしいんです。

彼らは全員、等しく悪く、頭がおかしい。

f:id:AQM:20210819021317p:plain

「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

そのことから逃げず目を逸らさずに、ハーレムラブコメにおいてありがちなキャラの好感度維持のための「誰も悪くない」に逃げず、各々のキャラが自らの欲望と自分なりの節から逃げず、なおかつカジュアルに本音をぶつけ合いながらハイテンションなギャグコメディに昇華しているのは、なんというかすごいなあ、と。

「普通」のハーレムラブコメとまったく異なるアプローチの果てに、見たことのない奇妙で美しい花が咲きかけているとでもいうか。

f:id:AQM:20210819021258p:plain

「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

※この人がたぶんメインヒロインです

これ収拾がつくのか、というのはまた別の話ではあるんですが。

まあせめて、あんま警察に手間かけさせんなよ、と。

 

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp