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#からかい上手の高木さん 16巻 評論(ネタバレ注意)

中学校の同級生同士の恋愛未満を描いた隣の席ラブコメ。単純な西片くんをいつもからかってくる高木さん。

「××さんがなんとかかんとか」系の、元祖ではないが中興の祖ではあって、同級生純愛ラブコメのジャンルが息を吹き返し、スピンオフも複数抱えてちょっとした産業に。ガンダムかよ。

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「からかい上手の高木さん」16巻より(山本崇一朗/小学館)
ラブ・ストーリーは突然に

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  • 小田 和正
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

公式二次創作というか、スピンオフで2人の結婚後の日常が描かれてまして、

aqm.hatenablog.jp

もはやこの2人が「将来くっつかない」と思って読んでる人はいないというかハッピーエンドが約束されていて、本編中の高木さんの西片への気持ちも「匂わせ」とは言え、かなり露骨に開き直って描写されます。

昔の恋愛漫画やラブコメと引き比べてみると「くっつくのがわかっていて何が面白いのか」と当時の人に言われるかもしれません。

いや、けっこう面白いのよ。

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「からかい上手の高木さん」16巻より(山本崇一朗/小学館)
ラブ・ストーリーは突然に

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もう一つ、本作に限らず近年ヒットしている男性向けラブコメ漫画の特徴として、昔は必須だった「男主人公の恋愛上のライバルキャラ(「めぞん一刻」の三鷹さんのような)」がめっきり配置されなくなりました。

「かんなぎ」の事件が転換点なのかな?

この作品が必ずしも2021年の現代ラブコメの代表作とは言えないかもしれないですが、たとえば「僕の心のヤバいやつ」なんかを見ても、ナンパイとかあの辺の「市川のライバルになりそうなキャラ」の存在に対する読者のストレスや警戒感が非常に強いのが、良くも悪くもSNSを通して診てとれて、作品の在り方にも強い影響力を与えてる気はします。

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「からかい上手の高木さん」16巻より(山本崇一朗/小学館)
ラブ・ストーリーは突然に

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現代のラブコメ読者の心が弱くなったのか、そうしたライバルキャラの在り方は「NTR」という性的嗜好とミックスされた上でラブコメから分離されて居場所がなくなってしまって、現代のラブコメに求められるのは葛藤やドラマ性ではなく、癒しと「♪テケテーン」要素に特化しているのかな、と思ったりします。

ブレイクしてからだいぶ経ち、また競争の激しいラブコメジャンルということもあって、この作品の現在の評価は「安定感のある老舗の良作」という立ち位置なんかなと思いますが、相変わらずそうした「ハッピーエンドが約束されたストレスフリーの♪テケテーンラブコメ」のウェルメイドな作品、もっと言えば今の「楽して楽しく読めるラブコメ」の流れにエポックメイキングに良くも悪くも大きく寄与した作品です。

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「からかい上手の高木さん」16巻より(山本崇一朗/小学館)
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この作品やこの作者に求めることではないとは思いますが、そろそろ「その次」の方向を目指す、読者の感情を振り回すような方向にエポックメイキングなラブコメ作品も、読んでみたくはありますね。

「その次」ではなく回帰なのかもしれないですけども。

あと、「僕ヤバ」と比べるとドラマ性の薄い、日常色の強いのん気な作品なので、小田和正を劇伴にするにはさすがにちょっと無理があるなw

 

 

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