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#BLUE GIANT EXPLORER 4巻 評論(ネタバレ注意)

若き日本人ジャズ・サックス・プレイヤー宮本大のサクセス・ストーリー。

日本を舞台にした「BLUE GIANT」、ヨーロッパを舞台にした「BLUE GIANT SUPREME」に続いて第三部に相当。今度の舞台はジャズの本場、アメリカ。

出発の地・シアトルでの二つの目的、「シアトルのジャズを知ること」「アメリカを旅するクルマを手に入れること」を果たしたダイは修理工場の2人に見送られ、街から街へ、ポートランド、サンフランシスコを経て今巻は"シリコンバレー"サンノゼ、ロサンゼルス、サンディエゴ、少し国境を超えてメキシコのティファナへ。

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「BLUE GIANT EXPLORER」4巻(石塚真一/小学館)

ゼロからスタート、偏屈で強力なメンバーを集めて一世を風靡するバンドに…という展開もヨーロッパ編でやりきったので、アメリカ編は趣向を変えてダイが中古の日本車でアメリカ中の都市をソロで巡りバンドメンバーは現地調達する、というロードムービー風。

ヒッチハイカーで押しかけマネージャーのジェイソンとともに西海岸最大の街・ロサンゼルスを訪れたダイ。

ロサンゼルスのジャズは「スムーズ&イージー」、ダイの激しい演奏スタイルとは水と油のテイストだった。

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「BLUE GIANT EXPLORER」4巻(石塚真一/小学館)

今巻で「西海岸編」が終わり、って感じですかね。ジャズものでアメリカ編ということで、本番というかクライマックスはニューオーリンズかニューヨークになろうかと思います。あとどこ行くんだろ。ラスベガス、シカゴ、フロリダあたり?

ということで、ダイがロサンゼルスの水に合わず割りと鬱屈してる巻。巻ごとに「街=エピソード」が提示され最終的には「サックス吹けばなんとなる漫画」ですけど、カタルシスでいうと過去イチ級のローテンション。

逆に、自分はアメリカ行ったことないので本当かどうか知りませんが、アメリカ編の建て付け上、重要なはずの「街ごとのキャラクター性の違い」が初めて浮き彫りになった感じはします。正直、シアトルとポートランドとサンフランシスコの「街ごとのキャラクター性の違い」って読んでてあんまピンときてなかったので。

ジャズ、アメリカ、ロードムービー、西海岸とキーワードは一見派手ですけど、やってることは自発的な地方巡業・ドサ回りで実は結構地味なことやってます。

芸事モチーフの作品におけるこうした展開の持つ意味は一般的に3つありますが、

①主人公が旅とアウェイな環境で精神的にタフになること

②主人公に旅先で新たな出会いがあること

③主人公が旅先の風土・文化を吸収して芸(演奏)の幅を広げること

本作今巻のメタに面白かったところは、この③がすっぽり抜けて「ロサンゼルスの退屈なジャズシーンからダイに学ばせることは何もない」と言わんばかりの描写。ダイはロックンロールのライブハウスで全力で体当たりした経験だけを得て去っていくという、まるで「ジャズ不毛の地」のような描かれ方だったところです。

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「BLUE GIANT EXPLORER」4巻(石塚真一/小学館)

「アメリカを巡るのにロサンゼルスを無視するわけにもいかない」と置きにいっただけのようなエピソード。なんだろ、取材の過程で嫌なことでもあったんかしらん。

作品全体の中では単調になりつつあったロードムービー風の進行が煮詰まったダウナーな巻ですけど、順調・快調・絶好調な展開が続くよりメリハリついていんじゃない、というのと、次巻から西海岸も離れて相棒も交代してとちょっと目先が変わるきっかけの巻、という感じ。

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「BLUE GIANT EXPLORER」4巻(石塚真一/小学館)

予想されたこととはいえ、ジェイソン、ナイスガイだったのに残念。

なんとなく、作者も早くニューオーリンズやニューヨークの話を描きたいのをウズウズしつつ我慢して溜めてる感じしますね。

アメリカでジャズの話なのに、主要キャラとしての黒人ジャズプレイヤーも、未だ登場してないんですよね。

 

 

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