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#16bitセンセーション 2巻 評論(ネタバレ注意)

1992年、大学生になった上原メイ子(19)は、車の免許の費用稼ぎに大学の近所のパソコンショップでバイトを始める。POPの絵を見初められたメイ子は、ショップの2階の古い和室にぎゅうぎゅう詰めの人とパソコンで営まれる美少女ゲームソフトハウス「アルコールソフト」のグラフィッカーとしてスカウトされる。

時はまさに美少女ゲームとインターネットの黎明期。制作の現場に身を置くメイ子の眼を通じて美少女ゲームの熱い時代と変遷が振り返り語られる。

という美少女ゲーム史漫画。

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「16bitセンセーション」2巻より(若木民喜/KADOKAWA)

もともとは同人誌で描いてたものを商業化するにあたって、実在の美少女ゲームの権利者に許諾を取りまくったという労作。

その甲斐あって熱かった時代が実名のコンテンツタイトルを伴って振り返られます。

作品の構造としてどうしようもなく「回顧」なので、「同じ時代を体験したか・しないか」でだいぶ評価が分かれる作品かもしれないな、と思います。

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「16bitセンセーション」2巻より(若木民喜/KADOKAWA)

テキストのコラムも充実。急速に進化した美少女ゲームたちへのあの感動が抑制的ながら熱さが隠しきれない筆致で書かれ、当時の「流れ」を追う意味での史料的価値もなかなか。

あれから4年、1996年。コミケが初めてビッグサイトで開催された年。

主人公たちの会社「アルコールソフト」は作品のヒットもあり規模を拡大。主人公も美女クリエーターとしてすっかり有名人に。

時代はPC98からWindowsに移り、エロゲー業界も一大産業として花開いていく。

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「16bitセンセーション」2巻より(若木民喜/KADOKAWA)

技術の発展により先進的で刺激的な作品が生まれていく反面、ビッグビジネスとなったエロゲー産業にはキナ臭い金と欲の匂いが漂い始め、また「インターネット」の足音が聞こえ始めていた…

前巻の記事でも書きましたが、自分は実家がMacintoshだったので、同じ時代を過ごしたもののこのPC98〜初期Windowsのエロゲーの盛り上がりのムーブメントに「参加していた感」は薄く、どちらかというとオタク界隈の隣の島から眺めていた感じで、その後エロゲーも嗜みましたけど、割りとライトユーザー。

この作品についてもっと熱く語れる他の人の思い当たりがネットのお友達に何人かいます。

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「16bitセンセーション」2巻より(若木民喜/KADOKAWA)

が、史実を背景にしたフィクションとして、「主人公、そしてアルコールソフトはどうなっていくんだろう」という物語として大変面白く読みました。

抗い難い時代の大きな波に飲み込まれ、やがて押し流されていくこともうっすら示唆されながら、ワクワクして目を輝かせながら作品を創り作品に接した時代の「祭りの狂乱」の熱のようなものがとてもよく表現されています。

自分の好きなジャンルでコレやられたらたまらんだろうな。自分だったら…

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「16bitセンセーション」2巻より(若木民喜/KADOKAWA)

予告によると次巻は「葉鍵時代」の幕開け、そして「2ちゃんねる」の隆盛が描かれるようで、これはまた楽しみな。

 

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