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#わざと見せてる? 加茂井さん。 6巻 評論(ネタバレ注意)

実録ガチ系の下ネタ・風俗ネタ・ドMネタ、お下劣でやたら面白い怪作 、「エムさん。」の作者。無駄に女の子が可愛く「ヒロイン立ててストーリーもの描いてくんないかな」と思ってたら、カースト「下の中」の漫画オタクの男子中学生と、カースト上位でスカート短い美少女ギャルの、王道の隣の席ラブコメ。やったぜ!

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「わざと見せてる? 加茂井さん。」5巻より(エム。/双葉社)

作品としては「中学生の未満恋愛」の同じセグメントに「僕の心のヤバイやつ」という超強力な作品があって、その陰に隠れている感じはあります。開始時期も同時期で巻数も近く、また作者がラブコメ畑の外から参入してきたあたりも似ていて、桜井のりおとはまた違った意味で従来のラブコメにない切り口や視点が提示されて、自分もとても期待している作品。

「僕ヤバ」と比べるとヒロインをもうちょいエッチに、主人公をもうちょいキモくした感じです。

主人公たちの中学2年の終わり、そしてヒロインの加茂井さんに片恋する主人公ストゥの、恋のライバルにあたる少年リオンの転校。

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「わざと見せてる? 加茂井さん。」5巻より(エム。/双葉社)

前にも書いた気がしますけど、自分は大槻ケンヂの一連の青春小説が好きで、同じ匂いを当初からこの作品に感じていました。

陰キャな青春を過ごした作者が陰キャな少年を主人公に飛び切りの美少女との恋愛未満を妄想で付け加えて描くという、外形的に大きな共通点があるんですけど、今巻を読んでそれ以上に「あー、青春時代の後悔をずっと大切に抱えている作者なんだな」と強く感じて、だからこそ同じように後悔を抱えている自分はこの作品にも惹かれるんだろうなー、と思いました。

そして青春時代の後悔って誰でも多かれ少なかれ抱えてるもんなんですよね。黒歴史なんで、普段は忘れているか、忘れたふりをしてすごしているんですけど。

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「わざと見せてる? 加茂井さん。」5巻より(エム。/双葉社)

「僕ヤバ」が青春の甘いファンタジーのデジャヴだとしたら、大槻ケンヂやこの作品はやっぱりどこかダークというか、陰キャな青春に妄想上のヒロインを放り込んでもフィクションでやり直しても、後悔は形を変えただけで結局存在していることは変わらない、苦い何か。

今回、作中の主人公たちはその後悔のフラグを乗り越えてみせたんですけど、そのこととモノローグが余計に、作者と読者の過去の後悔の存在の際立たせてしまっていて、どこかナルシシズムも混じった「もう取り戻せないんだな…」みたいな時間の不可逆性というか、暗い共感を誘います。

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「わざと見せてる? 加茂井さん。」5巻より(エム。/双葉社)

「僕ヤバ」読むとね、中学時代が幸せだった気がして「あの頃に戻りたいなー」って思うんですけど、この漫画読むと忘れたふりをしていた苦い黒歴史をいっぱい思い出して「あ、やっぱ戻りたくないわ、思い出したくないことたくさんあるわ」ってなるんですよ。

そこがいいよね、この漫画。そんな力を持ってる漫画、なかなかないもの。戻りたくないから、一周回ってそれがいいんだよ、みたいな。

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「わざと見せてる? 加茂井さん。」5巻より(エム。/双葉社)

おう。作者の性的嗜好は正直たまに「なに言ってんだコイツ???」ってなる感じだし、ラブコメとしても青春ものとしてもエロコメとしてもどこか不器用な作品なんだけど、漫画としてはなんか俺にぶっ刺さってるわ。

うまく言葉にできないけど、なんか、なんかわかる気がするんだわ。この漫画が言いたいこと。

 

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