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#2.5次元の誘惑 12巻 評論(ネタバレ注意)

先輩たちが卒業し、高校の一人漫画研究部として日々部室で二次オタ活動に勤しむ奥村(高2♂)。

学校が新入生を迎えたある日、漫画研究部のドアを叩く一人の新入生がいた。奥村と同じく古の名作「アシュフォード戦記」「リリエル外伝」とそのヒロイン「リリエル」をこよなく愛する彼女・天乃リリサは、キャラ愛が高じて高校生になったらコスプレイヤーになることを夢見ていた。

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「2.5次元の誘惑」12巻より(橋本悠/集英社)

というボーイミーツガールから始まるコスプレ青春もの。

それぞれの葛藤を乗り越え界隈を騒がすコスプレチームとなったリリサたちは、話題のソシャゲ「マジョ娘」の新作コスプレを引っ提げて五新星・四天王がひしめく冬コミへ。

ベールに包まれていた四天王の最後の一人、炎上体質の偽悪体質が拗れて魔女のようになった星月夜姫が待つ「四天王の巣」へ!

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「2.5次元の誘惑」12巻より(橋本悠/集英社)

バトルものと見紛う、求道的で厨二病的なジャンプバトルもの展開な頂上決戦。

前巻が幕間というか箸休め的な日常話中心でしたが、今巻からガッツリ「試合巻」にあたる冬コミ編。

コスプレものなんでまあ言ったら、コスプレして、ポーズとって、写真撮られてって、やってることそれだけで、世界を救うわけでも人が死んだりするわけでもないんですけど、そこに至るプレイヤーたちの情熱と努力を丁寧にエモーショナルに描くことと、演出で盛り上げることに余念がなく、毎巻泣かされます。

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「2.5次元の誘惑」12巻より(橋本悠/集英社)

このテンドンはずりぃわw

見開きの使われ方がページ稼ぎじゃなくて毎回カタルシスたっぷりで効果的ですよね。

テンポの良いギャグコメディ描写も楽しいですけど、"エモい"名シーンと名ゼリフがキモの熱血青春もの。あらすじ紹介じゃ絶対伝わらない熱。

今巻の主役はほぼ初お目見えの四天王・夜姫で、本来バトルではないコスプレで、ある意味無理やりバトルをやっている本作に、ばっちりハマるキャラ付け。

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「2.5次元の誘惑」12巻より(橋本悠/集英社)

華やかさと「人と競うためではない」「キャラ愛の表現」という建前に守られ隠された、コスプレイヤーのドロドロとした強力な自己顕示欲と対抗意識を堂々と。

またしても定番の「実はいい人」展開ですけど、夜姫の拗れ方と覚悟、それでも「何か」を追い求める心理描写、いいですよね。好きにならざるを得ない。

巻が進むほどに愛おしいキャラが増えていく。

他にも3巻のセルフオマージュ・753の「マジョリーナ・マジョルーナ」、その衣装担当サイトウさんの情熱、と見どころたくさん。

…ハルウララの有馬記念チャレンジがモデルだよねえ、これ…w

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「2.5次元の誘惑」12巻より(橋本悠/集英社)

あらすじも知らない、見たこともない「マジョマジョ」の覚醒エピソードを、ビジネスライクなプロのはずの753の涙を通じて、753の心情と夜姫の行く末への暗示と、ハルウララのシナリオと重ねて勝手に幻視して泣けてしまう。

この流れの見開きときたらもうね。

 

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