「BEASTARS」の板垣巴留の新作・現作。
今回はキャラが人間です。人間描けるのかよ。
こないだ知ったんですけど「バキ」の人の実子、娘だったんですね。(Wikipediaによると2019年に公表されたそうです)
ja.wikipedia.org
天子5年(2080年)、地球温暖化が進んで冬がなくなり、少子高齢化が進んで15歳未満人口が0.1%となった日本。
全て(? 不明)の子どもが「国の宝」として扱われ、学園に保護されて寮生活を送り、管理・教育されるようになった社会。
クリスマスもサンタクロースもはるか昔の風習として忘れ去られた日本。
中等部2年生の少年・三田(さんだ)一重(かずしげ)は、気になるクラスメイトだったはずの少女・冬村四織、握りしめた出刃包丁を振り回す四織に刺し殺されそうになっていた。
四織の要求は、三田が子どもの味方・サンタクロースに変身し、行方不明になったクラスメイトの少女・小野を探してくれること。
実はサンタクロースの末裔である三田は、四織が無理やり満たした条件によって白髪白髭のゴリマッチョな老人に変身してしまう…
あらすじを読んでも何を言っているかわからねーと思うが…
前作も世界観設定に現代社会の問題のメタファーを込めた作品でしたが、今作はまた別の切り口で現代社会の問題を極端に、あるいは現状の無策の延長線上に置いた設定。
前作はそれでいて韜晦というか、直喩を避けることで押し付けがましくならずに、自分探し描写がやや冗長ではあったものの主人公の青春ものとして成功しました。
その後の短編集を見ても、どっちかというと「BEASTARS世界観」が主人公で、主人公キャラのレゴシは狂言回しというか、たくさんの主人公の一人だった、という印象ですが。
今作は現実の日本の2021年から約60年後、15歳以下5万人が総人口の0,1%とあるので、日本の人口は約5千万人、経済的にも衰退し、人口ピラミッドが極端に少子化に傾いた日本が舞台。
何があったんでしょうね。15歳以下が0.1%というのは社会やライフスタイルの変容というよりも、大災害、気候変動、もしくは疫病などがきっかけで人類の生殖機能に致命的な障害が出ているように見えますけども。
そうした社会におけるヒーロー像が「子どもを守る」をテーマにしている以上、子どもを何らかの形で利用・搾取する個人や集団が社会にいる、という前提かな、と思います。
そうした社会では「若い人間」と「若さ」はイコール「未来」そのものを握ることを意味し、資源として希少金属や石油や核兵器よりも価値を持つはずで、1巻作中で既に登場していますが権力者(?)のためのアンチエイジングが異常に発達し、また「若い人間」を資源として多く抱える人間が勝利する社会になっているはずで、学園はそのための装置として機能している、というところでしょうか。
形は違いますが「MATRIX」の人間プラントに少しイメージ近いですかね。
ということで、そうした社会構造に対するカウンター、革命がテーマになっていくんかしらね。
「かしらね」っていうのも、この人の漫画イチイチ世界観がちょっと飛んでて、どういう作品になっていきたいのか、1巻読んだだけじゃよくわかんないんですよね。
日常ものではなくストーリーの縦軸の比重が重いので「会話芸やキャラの関係性が楽しい」で良い悪いを語っていい漫画でもないよな、っていう。
主人公像も「少年の精神」と「超人の身体」と「(身体に引き摺られて)大人としての子どもに対する保護欲」の二面性というか三面性に分裂していて、1巻時点ではまだ全然バランスが取れていない感じ。
ネットでは一部で不評も聞きます。自分は連載追っかけてないのでその辺わかんないんですけど、1巻を読んだ限りは「面白くなりそう」ではありますが、「面白い」「面白くない」を判断するのはまだ時期尚早かな、と思います。
何がしたい主人公で、どうなりたい作品なのかまだ全然わからん。
まだ全然、ここから傑作にも駄作にもなれそう。
ただ、この作者でなかったら「現代社会と地続きだけどルールが変わった世界観の複雑性」、「分裂している主人公」、自分も「あー『他の漫画とは違う』ってアピールしたいのね」って思ってた気もします。
繰り返しますが「面白くなりそう」ではあります。
「BEASTARS」の作者であるという、「設定に振り回されずに使いこなす作家」というポジティブな偏見というか、信頼の貯金もコミで。
つーわけで早く2巻ください。
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