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#ワンナイト・モーニング 6巻 評論(ネタバレ注意)

「一緒に一夜を過ごした男女が」「一緒に朝ごはんを食べる」「短編」を描きなさい。

というお題に則って描かれたようなオムニバス恋愛短編連作の第6集。

 

チェックの厳しい職場の先輩女子はぬか漬けのお世話が日課だった、「ぬか漬け」。

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「ワンナイト・モーニング」6巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

上司の付き合いの月一の風俗で指名した女の子と将棋を指して帰る男。指名される女の子もまた、少々訳ありだった…「アンパン」。

「決して2つとも食べてやろうなんて気は…」「ちょっ…アイスが!」、おまけ漫画「ソフトクリーム」。

ホラー映画が結んだ縁とその顛末、の思い出、「冷や汁」。

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「ワンナイト・モーニング」6巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

バレてないつもりの社内恋愛の2人が朝から公園で松茸炙ってビール、「焼き松茸」。

客もまばらなオールナイトの映画の、同じシーンで涙を流した2人の一夜、「ドーナツ」。

ハロウィンの街でしつこいナンパから助けてくれた男のゾンビのマスクが脱げないんだけど誰だなんだお前は、「かぼちゃの煮物」。

俺の彼女の胸をやらしい目線で見るんじゃねえー!から生じる悲しいすれ違い、「あんまん(前編)」。


作者が1巻のあとがきでとても謙虚に初単行本が出たことを喜んでいて、2巻が出た時は「続巻が出てよかったねえ、よかったねえ」と、芽が出かけた新人を応援するような、いま思えばどこか上から目線で応援していたんですけど、このシリーズも6巻になりますが、もうずっとコンスタントに面白いんですけど、この人、「いま一番面白いラブコメ漫画」の看板を争えるぐらいの、大変な才能をお持ちでいらっしゃったんではないか、お見それしました、そういう感じです。

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「ワンナイト・モーニング」6巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

例えば近年の週刊連載の漫画誌の看板ラブコメ漫画に求められる要素というのは、

①週刊ペースでエピソードを量産し続けられること

②複数のヒロインの絵をアニメ映えするように可愛く描けること

③愛されるヒロインのキャラ付けができること

が最優先というか最低条件で、ヒットしている作品でも作劇や展開は実はテンプレ展開、キャラの思考や感情も記号化された「お約束」なものが多かったりします。

ある程度、作劇を創る時間コストを記号化・テンプレ化し、強力なキャラ人気で引っ張る建て付け、ある程度の「漫画のファーストフード化」をしないと週刊連載ペースは保たないんだろうとか思います。

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「ワンナイト・モーニング」6巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

この作品の方法論はほぼ真逆で、素朴ながら可愛い男女、エピソード中心の建て付け、オムニバスなせいでキャラクターも基本的には一期一会。

ちょっとこの作品の連載ペースは知らないんですけど、単話完結でしかも「朝食を共にする」というシチュエーションの縛りが、「五七五」の制約によって却って俳句が豊かになったように、この作者の作品を「売れるラブコメのセオリー」から自由にして、奇を衒わない代わりに、恋愛感情の描写を少し丁寧に少し奥深く少し豊かに、それでいてコンパクトにしているのかもしれないな、とか思いました。

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「ワンナイト・モーニング」6巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

今巻は「アンパン」と並んで、「ドーナツ」、好きだなあコレ。

陳腐ではあるかもしれないけどチープではない。というか、切ない。

 

 

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