
忍者の里で修行して暮らす さとこ は、周りの仲間の雰囲気に流されてなんとなく里抜けに参加(8回目)、抜け忍となったが、特に里抜けしたい目的があったわけでもないので普通に行き倒れていたところを、女子高生殺し屋の このは に拾われる。

「忍者と殺し屋のふたりぐらし」1巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)
忍者としてはポンコツ気味ながら物体を木の葉に変える さとこ の能力に目をつけた このは は、見返りに忍者の里の追手を返り討ちにしてやる代わりに殺し屋仕事の死体処理係の相棒として さとこ を自分の部屋に住まわせる。

「忍者と殺し屋のふたりぐらし」1巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)
忍者と殺し屋の奇妙な同居生活が始まった…
という、日常エッセイ漫画の鬼才による非日常な日常コメディ。
過去の名作ではこんな名ゼリフも描かれましたが、

「究極超人あ〜る」9巻より(ゆうきまさみ/小学館)
現代のギャグコメディでは人が死にます。
アンソロ参加の「ウマ娘」、Twitterの投稿を中心にまとめた「ハンバーガーちゃん」を経て、オリジナル一次創作の「本格商業デビュー」と言っていいと思います。基本モノクロ。
殺し屋という職業は現実世界ではなかなかレアですが、漫画の中では割りとポップな職業。女子高生をはじめ女性が殺し屋稼業を営んでる漫画は珍しくありません。

「忍者と殺し屋のふたりぐらし」1巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)
「人間を殺して報酬をもらう仕事」に関する倫理観の描かれ方は一つのテーマで、作品数が多い分、道徳の教科書ではない漫画において描かれ方は千差万別。
①復讐や社会的使命感などの目的を持って殺しをやっている(悪人(主観)を殺す)
aqm.hatenablog.jp
②仕事で生業なので特に悩まない/生粋の戦闘狂
aqm.hatenablog.jp
③コメディなので悩まずコミカルに殺す
aqm.hatenablog.jp
④殺し屋稼業で精神が壊れていく/脱・殺し屋を図る
aqm.hatenablog.jp
現実に殺し屋がいたら①か④な気がしますし、③と④は紙一重ですが、漫画はエンタメなので②と③が多く、今回のヒロイン・このは は②、この作品全体では③です。
「ハンバーガーちゃん」が自虐なのに暗くない笑える日常エッセイである理由は、自虐が人格ではなく一過性の行為(やらかし)に向いている、言わば「自分にモラハラ(人格攻撃)しない自虐」であるからじゃないかと自分は思っています。また社会に対する不満から物申したりする場面もありません。
そのエンタメ的なバランス感覚は本作でも遺憾なく発揮され、結構カジュアルに出てきた端から次々とキャラが死んでいく割りに、「ちーん」って感じでの、一見陰惨さを感じない展開・描写。
これ「ハンバーガーちゃん」もそうなんですけど、読者が読んでて感じる作品の「闇」や「不穏」、あるいは作者が持っている社会への不満だったりについて読者がどう感じるかを、理屈なのか嗅覚なのかすごくよくわかっていて、注意深く取り除いたり必要な分だけ残したり、とても繊細にコントロールする作家だな、と感じます。

「忍者と殺し屋のふたりぐらし」1巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)
本作で人を殺すことの罪悪感が除菌されてヒロインたちが明るく楽しくアッケカランと人を殺すことのギャップ・違和感・狂気は、作中でも少し言及されている通り意図された効果で、だからこそヒロインたち自身が死ぬ陰惨な展開すらも作者が必要と思えばこの可愛らしい絵であっさりやりそうな、怖さを感じますよね。
平たく言うと、まだこの人の創作ストーリーを完結まで読んだことがないので、厨二病を開放したら結構やべー作家なんじゃないかとw
楽しい話にも、悲しい話にも、怖い話にも、なんにでもなれそうな作品。

「忍者と殺し屋のふたりぐらし」1巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)
あとがきを信じる限り初めて(?)の商業オリジナル創作連載で出たとこ勝負っぽくて、それが余計怖いわw
「どうなるのか私にもわかりません」って変身して暴走するダークヒーローのセリフやないかw
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(選書参考)
blog.livedoor.jp