#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集 【完】 評論(ネタバレ注意)

漫画「大砲とスタンプ」の作者で、ミリタリー考察やソ連・ロシアの造詣の深さで知られ「戦争は女の顔をしていない」コミカライズ監修も務める速水螺旋人の短編集。

アイデア豊富な人で、ワンイシューで軽めの、「昔話」「童話」「とんち話」みたいな雰囲気の読み切り短編作品が10篇もあります。「政治」「戦争」「ロシア・東欧」などの趣味も相変わらず丸出し。今回見る限り「魔女」も好きそうね。

 

日本人とジョージア人のミックス・花柄タマラは、友人が適当に「ルーマニアから来た魔女」と吹聴したせいで、衆院総選挙にあたり主展党の候補者から「魔女として」選挙支援を依頼されてしまう。不承不承これを引き受けたタマラは、それっぽいインチキオカルトでなんとかやり過ごそうとするが…

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)


「総選挙の魔女」

 

革命によって王都を脱出した国王一家が潜む辺境に、革命軍の手が伸びてきた。彼らの要求は王の退位と王家の資産の9割の放棄、それと引き換えに円満に亡命を認める、というものだった。細かい条件調整の上、王と革命軍の間で調印・署名の運びとなったが…

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)


「ペーパーカントリー」

 

ダンジョン探索で著名な冒険パーティ「アカヒラメ党」は、なぜか活動のスポンサーである資産家が経営する銀行を襲撃、銀行強盗を働く。しかし銀行は魔術トラップにまみえれた魔境だった。そもそも彼らは何が目的でスポンサーの銀行に押し入ったのか…

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)


「ダンジョンと大銀行強盗」

 

ファンタジー異世界で魔王を討伐したパーティは、その際にやりすぎたせいで追放同然に国を追い出され、異世界の門を潜って現代日本にやってきていた。しかし、避難先となった日本は新型コロナウイルス禍で彼らは不便と不遇を強いられていた。日本での生活で一発逆転を狙う彼らは…

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)


「勇者は如何にして心配するのを止めてコロナウイルスを愛するようになったか」

 

1944年、中国、某戦線。日本軍の野営でやっていたギャンブルのカタに、沼田上等兵は「くだん」の卵を複数手に入れる。「くだん」は牛の身体に人の頭、卵から孵ると凶事を予言し絶命するという。「くだん」の予言により沼田は戦場での危機を回避していくが…

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)


「あゝ戦友よ、くだんでに会おう」

 

人が死ぬと、キャタビラに乗った「ハウルの動く城」的な、動く墓場が死体を引き取りにやって来る。墓場はゾンビたちで運営されていた。

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)


「墓が戦車でやって来る」

 

ペテルブルグの冴えない小役人アカーキイ・アカーキエヴィチの生活は、しかし新しい「ガイトー」を新調したことで一変する。彼を見下していた同僚たちも彼を見直しチヤホヤするようなったが、しかしそんな彼を突然の悲劇が襲う。

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)


「外套(現作:ニコライ・ゴーゴリ)」

 

新型コロナウイルス禍で中止されていた魔女たちの集い「ワルプルギスの夜宴」が2年ぶりに開催される運びとなった。慣例によるクジで取りまとめ役に選ばれたのは、新米で兼業の若き魔女「雪解けのアポロニア」だった。アポロニアは慣れないイベント開催に奔走するが、トラブルの連続だった…

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)

 

表題作「ワルプルギス実行委員実行する」

 

わけのわからない物ばかりを売っている店「わからず屋」は好事家たちで賑わいそれなりに繁盛していたが、ある日やってきた博学な男がわけのわからない物をベラベラ解説を始めたせいで、わけのわかる物ばかりになり、店は閑古鳥が鳴くようになる。一計を案じた店主は…

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)

 

「わからず屋」

 

領地を妖術と恐怖で治める人狼のフセスラフ公爵。人間の姫リュードチカは人身御供として彼の花嫁として故郷から差し出された。嫁入りでフセスラフ公の城砦を訪れたリュードチカはもう一人の花嫁、狼の姫ツィガンカと出逢う。二人の花嫁を得た初夜の臥所で、しかし公は「自分を殺さないか」と持ちかける。

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ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集(速水螺旋人/白泉社)


「フセスラフ人狼公の花嫁」

 

あとがき見ると「アイデアを思い浮かべるのは楽しいけど連載作品はダルいでござる!」という性向も感じつつも、根本的に読み切りが好きな人なんだな、という。

どの作品もシチュエーション設定のアイデアや展開の捻り、込められた風刺などは秀逸ながら、漫画はどこか食事と似ていて、美味な小品よりもボリューム(と人気キャラの継続露出)が求められる需要が多く、その要求に満たさないとマネタイズが難しい、みたいな難しさがありますね。

ここに収められた短編のどれかをパイロット版にして、そのうち膨らまされて作者の新作連載になるのかもしれない。

 

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