ジャンプ+でWEB連載されている、オマージュやパロディを散りばめ中毒性のある言語センスを伴った、基本ギャグコメディ進行の格闘ゲーム×お嬢様のゲーマー漫画。
格闘ゲームとお嬢様は「ハイスコアガール」といい「対ありでした」といい、なんか相性よろしいですわね。
数ある「格ゲー×お嬢様」作品の中でも最もイカれた世界観設定の作品。
わざわざ作画担当を付けているにも関わらず、すごく絵が上手いわけでも美少女が可愛いわけでもないという不合理な建て付けですけど、世界観も話の展開も不合理なので全体として調和が取れているという、ツッコミどころの多いギャグ漫画のような作品。
格ゲーお嬢様の頂点を決める大舞台・EJOはついに決勝戦へ。決勝に駒を進めたのは隆子&蹴子の大本命コンビと、その弟子筋にあたる転子&張子コンビだった。決戦の火蓋が切られる。
「格ゲーマー文化×お嬢様構文」のベースは共有しつつも、回によってガチ回とネタ回が割りとはっきり分かれてる作品で、私小説的なガチ回よりもエンタメに寄せたネタ回の方がネットの反響が大きい、という困った作品。
本来論で言えばエンタメと私小説は対立軸ではなく、両立させた作品は過去にも多々ありますが、実際問題、現場においてはこの二つはしばしば対立します。
お嬢様構文による会話芸と『こち亀』的な風刺コメディの変化球でわかりやすく面白く幅広くネタを拾いやすいエンタメとしてのネタ回に対して、見た目こそ派手ですが私小説要素としてのガチ回の引き出しは「格ゲーマーの闘争本能」と「ゲーマー同士のクソデカ感情」で、勝負に臨む主人公たちのインナースペースとマインドセットに関わる禅問答に展開しがちです。
禅問答は恋愛・ラブコメ漫画でもよく起こるんですけど、似たような描写を繰り返しがちで、作者が語りたい内容とマスの読者が読みたい内容がだんだん乖離していくんですね。
おそらく作者もワンイシューで長く引っ張れないことに自覚的で、それ故に今5巻の入魂の描写をもってガチ要素の(ほぼ)フィナーレ、というのは英断というより定石だったように思います。
割りとはっきりと「ここで最終回にしようと思えばできた」と示した巻。もはやどっちが勝つかとか超克しちゃってますよね。
なんですけど、悩ましい決断だと思いますけどおそらくは、しばらくは「連載しながら何を描きたいか考える」、走りながら充電しながらの作品継続の道を選んだんじゃないかなーと思います。
あるいは迷走に陥って作品の晩節を汚す決断になるかもしれませんけど、当面は「案件」を交えたネタ回を回しつつ引き出しを増やしながら、いつかまたエンタメ性を兼ね備えた私小説な「ガチ」にぜひ回帰してくれると良いな、と思います。
この作品のガチ回の私小説要素、本当に武骨なんですけど、「これが描きたいんだ」「これを伝えたいんだ」ってのが強く感じられて、結構好きなんですよね。
良いラストバトルだった。
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