
元ヤンキーな青春を送り、SNSで漫画クラスタに入り浸る漫画好きの真白悠(♀)は中小企業の虹原印刷(株)に就職。
企画デザイン課に配属され、印刷物のデザイン、データ作成・出力、校正を担当。担当する仕事は選挙のチラシからエロ同人誌までなんでもあり。
という印刷会社のお仕事日常漫画。

『刷ったもんだ!』6巻より(染谷みのる/講談社)
取材もしてんでしょうけど、1巻巻末の「Special Thanks」に「元勤め先の皆さま」とあり、作者が経験者なんですね。「NEW GAME!」と同じパターン。
人の生き死にに関わらない、世界も救わない、地味で実直ですけど、ウェルメイドなお仕事もの。
こなれてきたと言うか、虹原印刷の人間関係も巻を重ねてキャラに愛着も湧いてきて、読んでてどんどん楽しくなってきましたね。ヒロインと淡いロマンスな黒瀬くんとの関係もいい感じというか、この淡い関係のまま最終回で突然プロポーズとかしそうよねこいつら。

『刷ったもんだ!』6巻より(染谷みのる/講談社)
今巻は新キャラとして新入社員3人が本配属。主人公ヒロインの真白にもようやく後輩が。
というかね。
真白の態度がデカすぎてコイツがまだ新入社員〜2年目社員ってこと、すっっっっっかり忘れてたわ。
ウッソだろお前、態度デカすぎだろwww

『刷ったもんだ!』6巻より(染谷みのる/講談社)
と思う反面、自分もサラリーマンで部下の上司なので、こんなにモチベに溢れて自分で悩んで解決して成長してくれる若手社員、羨ましいわ。真白、うちに来てくれ〜。
と、漫画の主人公補正でどこか嘘くさかった真白に代わり、社会人・サラリーマンの壁に当たって悩める若手ポジの新入社員の3人。
1年目が一番離職率が高いので、部活もの漫画で新入生を獲得・引き留めしたい漫画キャラのように、自分も新入社員は気を遣います。

『刷ったもんだ!』6巻より(染谷みのる/講談社)
医療が人体の回復力をアテにするように、育成も本人のモチベと体験をアテにせざるを得ないんですけど、自分もかつて新入社員だったはずで理屈として記憶に残ってるのに、年月が経って昇進しちゃうと自分の成功体験に塗りつぶされて、心理的な「小さな壁」について忘れてしまうんですよね。
大人が子どもの敏感な心理の機微を笑ったり理解できなくなったりするように。
そういう、「新入社員が悩むこと」「2年目社員が先輩になって悩むこと」の心理的な機微をなぜか上手く拾えて、ポジティブに昇華した、良い巻でした。

『刷ったもんだ!』6巻より(染谷みのる/講談社)
若手の「失敗したくない」「怒られたくない」心理的ディフェンスの隙間からわずかに見える「挑戦してみたい」モチベーションを見逃さずに、組織の仕事と擦り合わせることが上司や先輩の仕事かな、と、おっさんも彼女ら彼らを見習おう。
いやしかし、真白みたいなモチベとコミュ力が高くて失敗に対する心理的ディフェンスが低い、勝手に雑に育っていく若手は、やっぱり上司はラクだよな〜。
aqm.hatenablog.jp