老境で妻を亡くしたステンドグラス作家。
縁切り同然に疎遠になった息子夫婦とは15年間、音信不通。
そんな中、妻を亡くし、天涯孤独の身となった。
創作意欲もなくし、生業としていたステンドグラス教室も閉める決意をしたある日、
老作家の家を若い女が訪ねてくる。
疎遠となった息子夫婦の娘、老作家の孫にあたる"あかり"だった。何か事情ありげなあかりを、老作家は何も訊かずに迎え入れ、住まわせることに。
再開した自宅でのステンドグラス教室にも参加するあかりの創作の在り方は老作家と相容れないものだったが、
あかりとの生活で気力を取り戻した作家は、師として、夫として、そして父としての自らの生涯を顧みる。
しかし、事情ありげ、物言いたげなあかりには、実際にある秘密があった…
という、単巻完結の中編作品。
あかりとの「再会」が生んだ新たな生活。振り返る、うまくいかなかった家族との人生。嘘が生んだ後ろめたい暮らしとその温かさ。縁が切れた息子との邂逅。唐突な破局と別れ。
その果てに老作家が、あかりが見た景色とは。
家族を傷つけ、あるいは傷つけられ、あるいは喪った者同士が、束の間寄り添い合って自らの過去・自らの傷と向き合い、立ち上がっていく。
作品を象徴するステンドグラスが、その創り方から人物の心象を映す。淡い光を放つステンドグラスそのもののように優しく美しい作品。
離れていてもステンドグラスと、そして見上げた夜空でどこか繋がっている様子が少々羨ましく、
部屋の締め切ったままのカーテンを今夜はちょっとだけ開けてみようかと、そんな気持ちになる作品でした。
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