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#逃げ上手の若君 7巻 評論(ネタバレ注意)

「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」の松井優征の新作は、鎌倉時代末期〜南北朝時代〜室町時代初期を舞台にした歴史物。設定・登場人物は史実ベース。

鎌倉幕府のトップ・執権として世襲で地位を継いできた北条氏の嫡子の少年・北条時行。しかし、幕府と敵対する後醍醐天皇側に寝返った足利高氏(尊氏)により、鎌倉幕府は滅ぼされてしまう。

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

北条氏の滅亡により大切なものを全て奪われた時行は、信濃国の国守にして神官の諏訪家を頼りに落ち延び、足利への復讐を誓う。

という伝記もの。シリアスに史実を追いつつも、演出としてギャグコメディ色も強い作品。

主人公・時行の持ち味は強い生存本能に基づく逃げの天才。

1335年3月、信濃動乱を経て、時行が歴史にその名を轟かしWikipediaに載るレベルの「中先代の乱」の直前まで。

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

密かに京に上った時行は佐々木道誉の縁者や楠木正成などと邂逅しながら、後醍醐天皇・足利尊氏の同時暗殺計画に関与し、宿敵・尊氏と直接刃を交えて対峙する。

流れ的には大イベント「中先代の乱」の前座で、佐々木、楠、そして尊氏の顔を見ておこう、というイベント。史実の暗殺計画にフィクショナルに時行が関与していたことにする、という感じなんかな?

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

この時代の異色性、登場人物が普通に天皇を裏切ったり殺そうとするんですよね。平場に降りて実権を持つ武家・公家と権力闘争を繰り広げた後醍醐天皇の異色性と言ってもいいのかもしんない。

戦前の歴史教育ではこの辺全部「逆賊」扱いだったっぽく、子どもの頃に真田広之が主演(足利尊氏役)したNHK大河ドラマ『太平記』を観てたら婆ちゃんに「こんな逆賊のドラマ観るんじゃありません!」ってTV消されました。人生で口語で「逆賊」なんて言葉聞いたの、あれ一回きりです。

そんな中でも天皇への忠義を貫いた楠木正成は死後に神に叙せられた名将ですが、今巻で初登場。

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

NHK大河ドラマ『太平記』では武田鉄矢が演じた役どころ、どんな描かれ方をするのかなと楽しみにしてたんですが、おおうw

確かに時行とキャラ被ってるとこあんですよね。

他、京編としては尊氏との因縁強化と、あと佐々木道誉の娘の扱いが中途半端で今のところ出てきた意味がないんで、もっとずっと後々に効いてくる縁なんだろうな、と。あーあと新田がちょいっと登場。

次巻からの大イベント「中先代の乱」ですが、

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

たぶん「中先代の乱」が終わったところで「第一部 完」的に時制が数年飛ぶんじゃないかなと思います。

ここまで全部いわば次巻以降のための前座みたいなもんで、少年漫画的に盛り上げつつ前座に7巻かけるというのは相当じっくりやってますけど(途中で打ち切られなくて本当によかったわ)、「北条時行の伝記」の一番美味しいところの一つ、いよいよ本番。

「為に作品が始まったエピソード」、いったい何巻かかるやら。ああ楽しいw

 

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