
室町後期(戦国初期)の武将、北条早雲の幼少期からの伝記もの。享年64歳説を採用。
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中世代を舞台にした作品ながら、現代の話し言葉を大胆に採用、横文字もガンガン出てくる。おっさん達の政争劇は作者の本領発揮なイメージ。
北条早雲の伝記を漫画の上手のゆうきまさみが、の時点で面白いに決まってんだけど、日本史の中でも複雑で難解なことで有名な応仁の乱がらみ。渋すぎるテーマをどう捌くのか。
前々巻で駿河下向の第一幕が、前巻で応仁の乱が終息。

『新九郎、奔る!』11巻より(ゆうきまさみ/小学館)
名門・伊勢家の分家の当主として、目下の課題は
◎駿河の相続問題(甥の龍王を守護に)
◯荏原荘園の経営
△嫁取り
△立身出世
前巻で、新九郎の実姉・伊都の嫁ぎ先・駿河の今川家のお家騒動の仲裁、いわゆる「駿河下向」の第一幕が一応決着。
今巻は小康状態で諸々状況を整理、という感じ。今後に向けて新キャラも登場。

『新九郎、奔る!』11巻より(ゆうきまさみ/小学館)
この人、小笠原で将軍家の弓術指南役ということは、

『逃げ上手の若君』2巻より(松井優征/集英社)
こっちの漫画では名悪役のこの人の子孫ですね。
その小笠原正清の娘が女童ながらヒロイン然と登場。

『新九郎、奔る!』11巻より(ゆうきまさみ/小学館)
いわゆる「ゆうきまさみのヒロイン顔」ではなく、初めて描かれるタイプの相貌。
Wikipediaを見ると、後年、新九郎の正室(正妻)となるようです。小笠原家と血縁ができるのね。
作品当初の世間知らずのボンボンから、実直な若手の遣り手のエリートにジョブチェンジしながらも、まだどこか融通が効かず潔癖だった新九郎が、

『新九郎、奔る!』11巻より(ゆうきまさみ/小学館)
逡巡しつつも現場のテクニックとしての「不正」に手を染め始め、「梟雄ができるまで」の過程がコツコツ丁寧に描かれます。
『グイン・サーガ』序盤に気のいい陽キャの兄ちゃんだったイシュトヴァーンが「ゴーラの僭王」に成り上がる過程を思い出します。
1巻の頃は「この潔癖症のボンボンが乱世の梟雄になるとか、無理では?」という印象だったのが、段々「らしく」なってきました。
御所(足利義政)の嫡男に対する屈折というか、

『新九郎、奔る!』11巻より(ゆうきまさみ/小学館)
「自分の子ども」に対する苦手意識や隔意の執拗な描写が目立ちます。
完全フィクション作品だと後々の伏線であることが確定なんですけど、史実ベースのフィクションは創作上の伏線なのか、史実エピソードを単に拾っただけなのか判然としないので、そのランダム性みたいなのがちょっと面白いですね。
aqm.hatenablog.jp