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#不器用な王子様 1巻 評論(ネタバレ注意)

高一の九条聖(♀)は顔面が大変淡麗でそれ相応に凛々しい立ち居振る舞いなこともあり、女子たちから「くん」付けで呼ばれいつも周囲を囲まれる、アイドル然としたいわゆる「王子様」系だった。

『不器用な王子様』1巻より(鮭乃らるかん/小学館)

目つきが悪い月島(♂)は特に九条くんと絡むでもなく教室の隅でダルそうにしていたが、ある日突然、九条から「ちょっといいかな」と話しかけられる。

教室に人気(ひとけ)のない時間をわざわざ選んでの九条の用事は「いつも輪ゴムで髪を縛ってるのが気になるから」とヘアゴムを渡すだけの他愛のない用事だったが、それっをきっかけに月島と九条は高校生活の中で妙に絡みが多くなったのだった…

という、目つきの悪いダルい系無愛想男子と容姿端麗な王子様系女子の高校日常4コマの未満恋愛コメディ。

『不器用な王子様』1巻より(鮭乃らるかん/小学館)

もとは『ウマ娘』の公式アンソロジーで知った作家さんで、オリジナルの『○○なメイドさん』も面白くて好みだったので。

表面上は達観した乾いた雰囲気の会話芸なんですけど、奥にウェットな感情を秘めているというか、キャラの内心を想像させるタイプの作風。

王子様系女子というと古くは『ベルばら』オスカル(王子様か?)とか、

『ベルサイユのばら』1巻より(池田理代子/フェアベル)

『グイン・サーガ』のイリス(オクタヴィア)とか、現役の作品だと『野崎くん』の鹿島くんとか、

『月刊少女野崎くん』1巻より(椿いづみ/スクウェア・エニックス)

あと漫画じゃないけど『ウマ娘』のアグネスタキオンとかテイエムオペラオーとか

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思い出します。

本人の性向や欲求というよりは周囲の期待に応える形で「王子様」を演じている印象、その分、内心が測りづらいというか本心を隠しているような印象が強く、近年は主人公やメインヒロインよりも個性的な脇役キャラ(コメディ寄り)のイメージあります。

なので、本作がヘテロラブコメのメインヒロインに王子様キャラを据えて深掘りしていこうとしてるのはちょっと「おっ」という感じ。

『不器用な王子様』1巻より(鮭乃らるかん/小学館)

ついでにいうと、鮭乃らるかん先生の性別は存じ上げないですが、「王子様系女子を描く作家はほぼ女性作家」というか、男性作家が扱いづらいキャラ属性という、印象というか偏見があります。男性作家が描くとどうしても「攻略対象」というか、セックスアピール強く描きすぎて王子様キャラが崩壊してしまいそうなイメージ。

『不器用な王子様』1巻より(鮭乃らるかん/小学館)

本作は前述のとおり、ダルい系無愛想男子と王子様系女子のヘテロな組み合わせの未満恋愛ラブコメです。

派手なアクションや極端なキャラ付けでわかりやすく笑いをとりに行く作風ではなく、淡々とした会話芸のうちに、ややもすれば漫画において「装置(固定されたキャラ属性の繰り返し)」になりがち「王子様」が隠し持つ意外な一面の可愛らしさを丁寧に。

幕間の設定画の私服のセンスに関するテキストも「ボーイッシュではなくメンズライク」と、作者の「王子様系女子」に対する要求の機微がとても繊細で、「好きで描いてんだなー」っていうw

近年はコメディ作品でコメディキャラとして配置されることが多いですけど、オスカルやイリスもそうでしたけど容姿端麗でクールに凛々しい王子様系女子が油断した瞬間に見せる意外な一面の可愛らしさや、胸に秘めているコンプレックスや熱情のギャップ、良いですよね。

『不器用な王子様』1巻より(鮭乃らるかん/小学館)

という、重たいシリアス作品で描かれがちだった「王子様系女子」のギャップの美味しいところにフォーカスしてコメディ4コマで軽く読みやすく描こう、という試みに見えます。

凛々しい王子様系女子の一周まわった可愛らしさ、次巻以降も楽しみね。

 

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