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FSS (NT2022年11月号 第18巻相当) 評論(ネタバレ注意)

ファイブスター物語、連続掲載継続中。

「第6話 時の詩女 アクト5-1 緋色の雫 Both3069」。

扉絵コミで15ページ。

  

他の号はこちらから。

aqm.hatenablog.jp

以下、宣伝と余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

 

 

 

 

 

 

 

(余談)

・連載外で映画『花の詩女 ゴティックメード』の一斉リバイバル上映の告知、計3ページ

・見開きビジュアル2ページ使ってカイゼリン(セル画)と上映の諸元情報(上映館など)

・残り1ページで映画『花の詩女 ゴティックメード』にまつわるテキスト記事

 見出し抜粋

 ■「花の詩女 ゴティックメード」はどんな映画なのか?

  -漫画連載を休載して挑んだアニメーション制作

  -デザイナー・永野護が放つ渾身のメカデザイン

  -2人の男女が織りなす普遍的な物語

  -手描きによる作画、本物を追求した音響

  -公開前は極秘扱いだった「ファイブスター物語」との関係

  -おまけの伝説

(扉絵)

枢軸軍の主な国家主席たち(カラー設定画+解説テキスト)

・ロッゾ帝国 レオ・プーチェル皇帝

・ウモス国 フォッケヴォルフ・ムックル総統

・メヨーヨ朝廷 クラーケンベール・メヨーヨ大帝

・ガマッシャーン共和国 ナオ・リンドー・レイスル党首

 

(本編)

皇帝ダイ・グのGTM出陣に合わせ、フィルモア本陣の艦隊は機動展開して防衛ラインに突撃、全力でこれを援護。強力なジャミング弾の着弾と同時にクリスティンの眼前に現れた皇帝騎ダス・ゴースト。着地の一瞬でブーレイを4騎撃破。

「約2600年前、同じ地で起きた事件を描いた映画『花の詩女 ゴティックメード』、全国上映は間もなく!!」(ニュータイプ2022年11月号より)

 

(所感)

扉絵

バッハトマ「以外」の枢軸側各国の首脳とその思惑の解説ですが、要するに

「たまたま一時的に利害が一致しただけの関係でバッハトマにそんなに思い入れないので、いつでも寝返りまーす」

「全然"一枚岩"じゃないでーす」

的な。

 

蘭丸のマスターって誰だったっけ。と複数のサイトで確認しても「コークス預かり」で未確定の模様。

 

「ナオを天才軍師たらしてめている戦況分析能力の秘密」が「知識と経験だけではない」と思わせぶりです。

近年のSF・ファンタジー作品の流行りだと「2周目だから知っている」なんですが、ループ設定は「今のところ」FSSらしくないので、

①予知能力を持っている

②予知能力を持っている誰かから予言・宣託を受けている

のどっちかかな。

②の場合、「予知能力を持っている誰か」は当然、詩女なんでしょうけど、どの詩女なんだw

超帝國騎士なんで、初代詩女「炎の女皇帝」からなんかチートな予言を授かってんのかもしれないですね。

 

あと、作劇上は非っ常に有効ながら、現実的に冷静に色々考えると、国家元首や戦闘指揮官は「暗殺されにくさ」を除くと、やっぱ騎士じゃない方が良いよなあ、と。

 

旗艦ダランスの人々

今回、ダイ・グ自身は1コマも登場しませんで、ついでにチャンダナも1コマ、ダス・ゴーストも1コマしか描かれませんでした。

他、クリスティンとアルカナ・ナイトがわずかばかりの出番があるだけで、ほぼ全編に渡って描かれたのは、皇帝騎の出撃シークエンスを支える、フィルモア軍、旗艦ダランスのMOBたち。

FSSは主要登場人物のほとんどが騎士・ファティマ・人外・王侯貴族・政治家で占められ、騎士以外の軍人たちや一般人にスポットが当たることは高級将校といえども滅多にないですが、一般人の出番はレア故に逆に必ず理由があり、稀に描かれる際には強力な演出意図を伴って描かれるシーンがほとんどです。

実は結構『FSS』に限った話ではなくて、生命の際で役目に殉じる名もない登場人物たち、というのは他分野・他作品でもたまに見られます。

映画『タイタニック』の弦楽四重奏のおっさんらとか、『逆シャア』の「やってみる価値ありますぜ!」とかね。

 

本来、GTMなどの機動兵器の役割(の二つ)は、敵軍母艦への攻撃と、自軍母艦の直掩です。母艦を護るのが仕事のうちです。

間違っても機動兵器が母艦に護られるようなことがあっては本末転倒なんですが、旧い永野護ファンはこういうシーンをずっと昔に観たことがあります。

『機動戦士Zガンダム』第49話、「生命(いのち)散って」

片恋相手のお姉さんヒロイン、エマ中尉のガンダムMkⅡが被弾し窮地に陥る様を目にして、責務と私情の間で逡巡する母艦ラーディッシュのヘンケン艦長に対して、「誰だお前ら」的なブリッジのクルーが「全速前進してラーディッシュをエマ中尉の盾にっ!」って進言すんですよね。

ラーディッシュのクルーが、単に艦の仲間を見殺しにできない・救いたいと思っただけなのか、ヘンケン艦長のエマへの片恋を見守って応援していたのか、クルー全員がエマ中尉に片恋していたのか、もはや今となってはわかりませんが。

あれいいシーンだったなあ。

最終回のひとつ前の名エピソードで、ハンブラビ、キュベレイ、百式と永野MSもてんこ盛り。

「オール・フォー・ワン」というよりは、倒錯した軍事的ロマンチシズムの極みではありますが、今回オロオロしてて可愛いミヤザも含めて皇帝騎の出撃シークエンスを支えたすべての人々が、皇帝への敬慕だけではなく

「人生を帝国に捧げてきた陛下とハイランダーを戦場で添い遂げさせてやりたい」

と祈っていて欲しいなと、またその祈りが通じて欲しいなと思います。

 

クリスティン・V

覚醒する度にその後の再登場で豆腐メンタルに戻ってる、もどかしいキャラでしたけど、「男のヨーン、女のクリス」と言っていいぐらい、たくさんの人に行く末を見守られてきたキャラだったなあ、と改めて。

極論すれば来月号と再来月号のエピソードのために生まれて数十年描かれてきたキャラ。

愛する皇帝に背中を預けて預けられる生涯忘れられない戦いを、悔いのないように戦い抜いて本懐を遂げて欲しい。

 

やーもー、「ザ・ファイブスター・ストーリーズ」って感じやね。

それぞれが持ち場でベストを尽くす実務的な描写に彼らの万感を忍ばせる、富野の不肖の弟子にして永野護らしい美しいエピソード。

こういうエピソードに出会うために何十年もFSS読んでいる。