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#とんがり帽子のアトリエ 11巻 評論(ネタバレ注意)

一部の魔法を「禁止魔法」として制約したファンタジー中世世界の、魔法使い見習い少女たちの修行と冒険、ダークな雰囲気ただよう超正統派ファンタジー。

イレギュラーに魔法使い見習いになったヒロインのココ、その素質を狙って暗躍する禁止魔法使いたち、ココの巻き添えでトラブルに巻き込まれつつ彼女を守って戦う師匠と姉弟子たちの修行と成長の日々。

魔法使いの祭典「銀夜祭」編とのことで、雰囲気的にはお祭りムード。

『とんがり帽子のアトリエ』11巻より(白浜鴎/講談社)

ストーリー、というよりキャラ毎のテーマというかToDoですかね。が銀夜祭を舞台に並行して走る展開に。

「二正面作戦」ならぬ「五正面展開」とでもいうか。

数えてみましょうか。

・ココ&タータ イニニア&クスタスの脅迫に従い銀夜祭の行列に参加したい(不穏)

・クスタス&ココ&タータ ダグダを治療したい(不穏)

・テティア 王子との奇縁(不穏)

・島王&王子 医療にまつわる禁じられた魔法を取り戻したい(不穏)

・アガット 一流魔法使いになって実家の一族(母親)を見返したい(やや不穏)

・魔警団 つばあり帽を捕まえたい(やや不穏)

・リチェ 将来の夢

『とんがり帽子のアトリエ』11巻より(白浜鴎/講談社)

それぞれの思惑が錯綜しつつも、だいたい不穏です。

幸い?なことに「相互に複雑に絡み合って」というよりは「並行して走って」る感じなので、追いかけるのはそこまで難しくないんですけど、読んでて1人2人忘れてるような気がして心配になっちゃいますね。

一番アレなのは、島王の一族が実は悪玉魔法使い一派の「つばあり帽」と利害が意外と近そう、と思わせぶりな描写が伏線的に張られているところ。

『とんがり帽子のアトリエ』11巻より(白浜鴎/講談社)

今巻は不穏要素は一旦置いておいて、銀夜祭の中でも魔法使いにとっての本番、「銀夜行列」。

新作魔法の発表会みたいな感じで、パレードの神輿の上で新作魔法をアピールし、「便利そう」「素敵」と思われると観衆から旗が振られて人気が一目でわかる、という、なんかそんな感じ。

銀夜行列に「出展者」として参加するココとアガット、その首尾は。という展開。

見習いと言えど新作魔法を考案するのが魔法使いのお仕事の一つのようなんですが、「目的を基づいて仕様を定め技術とアイデアを駆使して実装する」という、プログラマーに近いイメージがあって新作魔法もスマホ向けアプリ開発にすごい似てる印象なんですけど、今巻では開発というより「創作」に近い、ココとアガットの産みの苦しみと喜びが描かれます。

イベント直前にスランプに陥ったココをアガットが励ます、ツンデレさんだったアガットがフルでデレる巻。

『とんがり帽子のアトリエ』11巻より(白浜鴎/講談社)

全体的に華やかなお祭りムードの中、プレッシャーと締切に追われながら励まし合いながら作品の完成を目指す、なんつーかコミケ直前の同人作家たちみたい。

「銀夜祭」って要するに魔法使い達のコミケだこれw

「才ある者」魔法使いの描写にあたって、「絵描き」「漫画家」をモチーフとした創作の苦悩がフィーチャーされた、美大出身漫画家っぽいエピソード。近刊で「才ある者」と「持たざる者」の対比もフィーチャーされてきたのと併せて、「作者の創作観・作家観の隠喩・暗喩」ともとれなくもない気はします。

あんまおかしな化学反応が起こって「取扱注意案件」にならないといいんですけど。

『とんがり帽子のアトリエ』11巻より(白浜鴎/講談社)

ラストは一転、不穏要素を練り集めたかのような巨大クリーチャーが現れる、不穏なヒキで〆。

コミケみたいな話から一転、『まどか☆マギカ』みたいになったりするんかしら。

 

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