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#ブルーピリオド 12巻 評論(ネタバレ注意)

諸事情あって、既刊13巻を一冊ずつ読んで感想を記事にする余裕がないため、ある程度の区切りごとに記事にしたいなと思って、Wikipediaを薄目でカンニングしたところ、

2022年12月28日時点のWikipedia「ブルーピリオド」の項

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%94%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%89 より

とのことなので、「高2編」「高3編」「藝大1年生編」「藝大2年生編」単位で読んで記事にしようと思いまして、11巻まで読みました。

残りは既刊2冊、というところまで追いつき、その2冊がいずれも2022年発刊ということで、ここからは一冊ずつ記事に。

男子高校生・矢口八虎は、金髪ピアスで夜遊びしたりタバコ吸ったりしつつも、将来のために勉学を欠かさず学業成績優秀、コミュ力もばっちりというリア充DQNエリートな万能人間だったが、情熱を注ぐ先を見つけられず、どこか借り物の人生のような空虚さを感じていた。

しかし、ひょんなことから立ち寄った美術室での描きかけの一枚の油絵との出会いが、冷めていた八虎の人生に火を灯すのだった…

『ブルーピリオド』12巻より(山口つばさ/講談社)

という、高2の途中で絵画への情熱に目覚めて藝大を目指す少年のお話。見事に現役で東京藝大の油絵科に合格、晴れて藝大生に。

というわけで、自分も好きな作品の多い、漫画の中の一大ジャンル「美大もの」の王様『ブルーピリオド』、今巻から藝大2年生編。

美術と出会うと同時に受験対策を始めたため、成長が目覚ましい反面「藝大に受かった後なにをするの?」が空っぽで、かつ藝大の教授陣が傲慢で高圧的で観念的で抽象的という、鬱屈した1年生編が終わり、2年生になった八虎は…

『ブルーピリオド』12巻より(山口つばさ/講談社)

相変わらず鬱屈していた。

2年生に上がった油画科の担当教授は3人中2人が降りて、新たに担当となったのは副学長の犬飼教授だった。

主人公や読者から見て、高圧的で観念的で理不尽な指導を繰り返したように見えた教授の槻木と猫屋敷が、不都合なTweetを削除して逃亡するSNS上の大学教授のように作品のメインストリームから姿を消してしまいました。

『ブルーピリオド』12巻より(山口つばさ/講談社)

理不尽さの裏の真意というか、なぜあんな態度をとったのか、なんかフォローが入ったり手のひら返しのageが入るかなと思ってたんですけど、逃げたと言うより作者と犬飼によって「隠されちゃった」「匿われちゃった」という感じ。

そして代わりに指導を担当する犬飼教授は、傲慢な槻木と猫屋敷の、むしろバージョンアップ版の権威主義者だった、というw

『ブルーピリオド』12巻より(山口つばさ/講談社)

作者が「こう読んで欲しい」と計算したとおりに主人公に感情移入してシンクロして読む、「いいお客さん」というか、チョロい読者だなー自分、と思います。

藝大教授陣の権威主義的な態度にムカついて、彼らに疑問と怒りを感じる主人公に共感し、怒りをベースに反権威に傾倒しかけたところに、カルト宗教や麻薬のような救いの手、と作者の手のひらでコロコロ転がされてますw

『ブルーピリオド』12巻より(山口つばさ/講談社)

反権威に傾倒し始めた読者心理から見てあまりにも「八虎の理想の師匠像」というか、言語化能力が高くて漫画映えする上に甘やかしてくれる「バブみ師匠」すぎて、「やっべー女出てきたなオイw」という。

極右と極左の抗争みたいというか、漫画のキャラとはいえなんでそう両極端なんだよお前らはよwww

漫画読者的にはフェミニンな美女師匠キャラとか大歓迎ですし、下世話でベタなこと言えば

「美大ものってこういう女とセックスして童貞捨てた後に女が死んで主人公が覚醒しそうなイメージ」

ですけど、読んでて「彼女のヤバいにおい」も「藝大教授陣への反感」と同じく作者の意図・作為を大いに感じ、そんな一筋縄ではいかないんでしょうね、この漫画。

勧善懲悪のバトルものじゃないんで、そもそもこのへんの「決着」が必要な作品とも思えませんし。

『ブルーピリオド』12巻より(山口つばさ/講談社)

青春情熱サクセスストーリーの「主人公の物語」というより、美術界隈の「権威・反権威闘争」などの派閥勢力争いのドキュメンタリーを映すカメラの役割に、鬱屈し続ける主人公がなりつつあるな、という。

まぁた気になるヒキで、次巻に続く。

 

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