「先生」と呼ばれるお坊さんと28人の宝石たちが暮らす地球。彼らは月から宝石を攫いにくる「月人」たちを撃退しながら数千年の時を過ごしていた。宝石たちの中で最も若年のフォスフォフィライトは戦いで身体を欠損する度に、記憶と人格を少しずつ失い、別の宝石で補修したパーツの記憶や能力で、先生と月人、世界に対する疑いを強めていく…
そそのかした8人の宝石たちと一緒に月に移住したフォス、残された宝石たちに真実を語る先生。
願いの成就の為に硬軟あらゆる策で繰り返し月から地球へ出撃するフォス。TV版エヴァの終盤のように終末に向けてキャラ同士が傷つけ合う描写が延々と続く。
複雑に類似するデザインとややこしい名前を持つキャラクターたちによる二転三転の複雑な展開、二年も間が空いた刊行と、「細かい話、憶えてるかな…全巻読み返した方がいいかな…」と不安でしたが、新刊を読んでみると杞憂でした。
もはやキャラ群を個として認識する必要はなく、「フォスフォフィライトと、それ以外」のシンプルな区別さえつけばよく、それは容易です。
今巻中で更に1万年が経ちました。
もはや自分が読み始めて好きになった頃の『宝石の国』ではなくなってしまっていますが、低くない確率で「作者は最初からこうする予定だった」と認識した上であのちょっとしたブームを振り返ると少し可笑しくなります。
まだこの作品を読み続けている読者がどんな心持ちで読んでいるんだろうかと、気になるような気にならないような感じです。
自分の今巻の感想としては、
・これでもまだ完結しないのか
・(フォスフォフィライトのように怒りながら)今更そんな話をされたって全てが遅いし、もつれて解きほぐせなくなった糸は、一度全部、燃やすしかないように見える
・進化した先の未来の人々が、過去や進化に対して感謝するとは限らない
というもので、およそ漫画を読んでこんな感想を覚える作品は確かに他になく、稀有な作品であることだけは否定できません。
数万年かけた種の世代交代と進化を超えた、人類の緩慢な自殺のような話。
もはや読んでいてたいして楽しくも面白くもありませんが、美しいのかも知れず、また「作者と読者を傷つけ続けるこの作品が最期に何を語るのか」、好奇心に抗うことができません。
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