Amazonの商品紹介文(出版社のコメントでしょう)によると、「コロコロ史上初のラブコメ、ここに誕生!!」とのことです。
コタローが小学生時代に作ったスライムが生命を宿して7年、「ぷにる」と名付けられたスライムは中学生になったコタローと相変わらず暮らしていた…
という、美少女オバQもの。
主人公が中学生というのはコロコロコミック的にはやや年長気味ですが、本誌ではなくWEB連載、「女の子に興味が出たら卒業」のコロコロコミック本誌より、もう少し想定読者層を上に拡げた日常ラブコメ作品。
『ドラえもん』『オバケのQ太郎』などの藤子不二雄フォーマットは小学館の外も含めて多くのフォロワーを生み、一部作品は闖入した居候を美少女化・作品をラブコメ化したいわゆる「美少女オバQ」になりまして、他誌で珍しくもなくなった「美少女オバQ」フォーマットを、コロコロコミックが逆輸入、という構図。
経緯が経緯なので、連想して思い浮かぶ作品はたくさんあって、物質に美少女が顕現と言う意味では『かんなぎ』とか、無性別の人外との恋愛・性愛という意味では手塚治虫作品とか、ほのぼの牧歌的なジュブナイルのギャグコメディノリは『イカ娘』とかを彷彿とさせる作風。
いかにも低年齢向けの人畜無害系のほのぼのギャグっぽい体裁ですけど、やってること『ちょびっツ』っぽいというかジュブナイルながら「美少女オバQ」に対する男の願望はきっちり込められていたり、ギャグコメやキャラ付けにも『ドラえもん』にも共通する狂気が潜んでいたりと、大人が読んでもなかなか楽しい作品。
本来、大人向けに描かれているものではないので、(大人の)読者を選ぶところはありオチもユルいですが、『イカ娘』お好きであれば楽しめると思います。
2巻ということで、作品世界観やキャラのプレゼンテーションは前巻で終わって、通常クルージングに入っています。この作品の「通常クルージング」は、ヒロイン・ぷにるのスライム特性を活かして、エピソードのテーマごとにぷにるのルックスのバリエーションが変わる「ヒロイン七変化」。
裏テーマとして、主人公の少年・コタローの「可愛いものが好きだけど恥ずかしくて隠してしまう」思春期らしい精神性が、いつか超克する対象として描かれます。
「裏テーマ」というほど隠されてもいないですけど。
「可愛い無性別の人外との淡く幼い恋愛未満」という、割りと業と含蓄の深いことをやってるとも言えます。
「可愛いと思う」「(性愛として)好きだと思う」とはなんなのか。
相手のルックスが好きなのか、相手の属性が好きなのか、相手の性格が好きなのか、すべてひっくるめてあるがままの相手の実存が好きなのか。
MOBがある意味、一つの答えを言っちゃってんですけどw
大人が雑に読んだら「ユルくてぷにるが可愛いだけの漫画」ですけど、児童向けの名作は往々にして「空想の余地」「思索の余地」とのバーターで業が深いテーマを懐に抱えているもので、この作品にもその萌芽が見られます。
いつになるかわかりませんがラストはおそらく「日常が続いていくエンド」だろうと思いますが、「泣ける最終回」のバリエーションを勝手にあれこれ空想してしまいすね。
aqm.hatenablog.jp