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#転生したらスライムだった件 22巻 評論(ネタバレ注意)

サラリーマン(37)が刺されて死んで異世界に転生したらスライムだったけど、付与された特殊能力で強力な魔物スキルをガンガン吸収してスライムにして最強、人型にも顕現可能に。

リムルを名乗り、多くの魔物を配下にジュラの森の盟主となり「魔国連邦」を建国。襲来した人類国家ファムルス王国軍2万の兵をリムル自ら直接殺害して魔王に覚醒。暗躍する魔王クレイマンとも、10人の魔王による会議・ワルプルギスで決着をつけ、並行して魔王領各地で勃発したリムル陣営vsクレイマン陣営の闘争はリムル陣営が完勝。

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

次いで「魔物を駆逐するべし」との教義、配下にリムルと同じ転生者の聖人(魔王級)や聖騎士団を擁する西方教会。影の支配者に壟断され、操られるように魔国連邦と戦闘に突入する聖人ヒナタと聖騎士団。

戦闘の決着がついたところで、西方教会の影の真のトップというか「神体」である魔王ルミナス・バレンタインが登場!

という前巻のラストを継いでの今巻。

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

平たくネタバレすると、教会の真のトップであるルミナスの介入により、争いを誘導した黒幕が処断されて、魔国連邦と西方教会が和解する巻。

もっと平たくネタバレすると、和平会議と、社員旅行みたいな宴会と、ヒナタとルミナスの温泉回の巻。

典型的な「なろう」「異世界転生」もので、転生の際のギフテッドによる主人公と仲間たちの「俺TUEEEE」に目が行きがちな作品ですが、現代日本の知識を持ち合わせた主人公が、異世界に現代日本の良いところを再現しようとする「実業家」としての面が強く出ている巻です。

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

侵略戦争に勝利することによる豊かさの独占よりも、和平と外交、貿易による豊かさの共有を是とする、坂本龍馬みたいですよね。

(※私の坂本龍馬像は司馬史観の影響が大きく、史実と異なる可能性があります)

他にも、ヒナタの過去と現在を通じて宗教とカルト宗教を、魔術戦闘を通じて量子コンピューティングの概念を、魔族と人間の対立と融和を通じて人種間差別を、

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

リムルの混浴問題を通じてジェンダーの概念を。

現実社会のテーマに対する個人の葛藤を、エンタメの範囲を逸脱しない程度に触れて描いてみせています。大きなテーマを、キャラ個人目線に落として描いているのが良いですよね。

展開的には「悪の黒幕」が罪を全部引き受けて「善玉」同士の和解イチャコラの仲人役をやってくれる、いわゆる「王道」「ベタなご都合主義」展開ではあるんですけど、そのたどり着いた先にこういうシーン、こういうセリフに繋がるのなら

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

「ご都合主義、上等!」って思っちゃいますよね。

バトルパートの「俺TUEEE」にしろ、種族・民族・宗教・国家を超えた融和と平和を創ってくれるんじゃないかと期待させる治世・開発・外交パートのワクワク感にしろ、読者が読みたい展開・描写を媚びるでもなく過不足なく楽しく描くのがとても上手い作品で、数多ある「なろう」「異世界」作品の頂点と言っていい人気を博しているのも頷ける作品だなと、今巻を読んで思います。

この作品が仮にオリジナリティに欠けていたとしてもエンタメとして丁寧で誠実で、仮に性善説のご都合主義だとしてもその先で見せようとしている世界が美しい。

物語的にも、魔族に対して差別というより宗教的に「滅ぼすべし」との教義を持ち「人間族」で最も強硬派だった西方教会と平和条約を結べたのは、「魔族と人類が融和した世界」に向けて意義が大きいエピソードでした。

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

あと、魔国連邦で再現された日本食や温泉が羨ましくてずっとキレ気味なヒナタが可愛い巻でした。

 

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