#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#2.5次元の誘惑 16巻 評論(ネタバレ注意)

安心してください、はいてますよ。(全身タイツを

先輩たちが卒業し、高校の一人漫画研究部として日々部室で二次オタ活動に勤しむ奥村(高2♂)。

学校が新入生を迎えたある日、漫画研究部のドアを叩く一人の新入生がいた。奥村と同じく古の名作「アシュフォード戦記」「リリエル外伝」とそのヒロイン「リリエル」をこよなく愛する彼女・天乃リリサは、キャラ愛が高じて高校生になったらコスプレイヤーになることを夢見ていた。

というボーイミーツガールから始まるコスプレ青春もの。それぞれの葛藤を乗り越え界隈を騒がすコスプレチームとなり、四天王と呼ばれる頂点のコスプレイヤーたちにも認知されるように。

『2.5次元の誘惑』16巻より(橋本悠/集英社)

コスプレデビュー、夏コミ、冬コミ、文化祭、と怒涛の一年が過ぎ年度が改まりまして、各自進級、まり姉は卒業して常駐OBに。

新学年ということで学園もの恒例のお楽しみ、新一年生の新キャラ登場。

 

オタク度が濃すぎて新一年生たちに敬遠される漫画研究部(兼コスプレ部)の扉を叩いたのは、特進クラスのハイスペお嬢様・華 翼貴(はな つばき)。

遺伝と環境に恵まれ勉強もスポーツも趣味も達者にこなす彼女は、しかしそれ故に情熱の捧げどころを見つけられずにいたところで、漫画アニメに夢中になる奥村の姿を見かけ、「オタクになりたい」と志望してオタ部の扉を叩いたのだった…

オタク初心者にしてコスプレ初心者女子が中規模イベントでコスプレデビュー、その顛末。

『2.5次元の誘惑』16巻より(橋本悠/集英社)

煉獄さんかな?

青春ラブコメが延命作として群像劇に変異する過程で、「ヒット作に作家性を込める」ってやつで作者が追加テーマをブッこもうとすることはよくあって、大体テーマは「自分探し」で、大体失敗します。

失敗する大体の理由は、ラブコメが読みたくて集まった読者に「自分探しの禅問答」を読ませちゃうミスマッチと、主人公にもヒロインにも今さら新テーマを語らせにくいのかポッとでの新キャラにそれを託してしまうケースを併発してることが多いです。

「誰だ君は…」「なに読まされてんのかな」って冷めちゃうんですよね。

『2.5次元の誘惑』16巻より(橋本悠/集英社)

本作の今エピソードは正に「ポッと出の新キャラ」の「自分探しの禅問答」の典型的なものなんですが、許されちゃうどころか面白いですね。

作品テーマが最初からもともと「オタクな若者の自分探し」で一貫していてブレてないことと、そして「ポッと出の新キャラ」の読者からの好感度や感情移入度が登場から短期間にも関わらず非常に高くなったためかな、と思います。

あとは華麗な作画とかポエティックなモノローグとかコメディ描写の挿入とか、ディティールの回し、積み重ねですよね。

読んでるこっちが、

「翼貴が悩んでんだったら、話を聞いて見守ってやらにゃなんねえ」

って気にさせられちゃう。

前々巻まで居もしなかったキャラのはずなんですけど。

 

翼貴が夢中になるのは別にコスプレじゃなくても、乗馬でもサッカーでもなんでも良かったと思うんですけど、「今回は」オタク趣味やコスプレに一旦落ち着きました。

若いんだし、今後興味の向かう先がどんどん移ろっていけば良くて、大事なのは何かを好きになった自分、「ただ好きなだけの自分」を肯定する方法を学んだことだろうと。

『2.5次元の誘惑』16巻より(橋本悠/集英社)

良くも悪くも「そんなこと」なんですよね、って自分がその番を終わったから言えることですけど。他人に向かって言い放ったら確かにシバかれるなw

翼貴の苦悩や葛藤を「いつか来た道」「自分探し」として大人が笑うのは簡単ですけど、思春期なんて自分が探しが本業ですからね。

文章で要約すると当たり前の結論に辿り着くだけの禅問答で、自分は漫画で禅問答をやられるのは割りと苦手です。

ついでに、現実の「オタク論語り」も我田引水で「素晴らしいオタクである自分をチヤホヤしろ」という動機が透けて見えちゃう気がして苦手です。

なんですけど、この「自分語り」の「オタク論語り」は見せ方なのか、いちいち熱くてエモいんですよねこの漫画。やってることは結局コスプレしてるだけなんですけど。

やっぱ絵とモノローグのポエムがな。熱いのよな。

コメディとの緩急も効いてるしな。

『2.5次元の誘惑』16巻より(橋本悠/集英社)

「大人になる」ということの一つは、自分の「好き」に対して誰に恥じることなく胸を張れることかな、と思う反面、それは成長ではなくて

「自分を守るために鈍感になってしまった」

「自分がどんな奴か探し求めることを止めてしまった」

「それを『成長』と偽って誤魔化している」

結果なんじゃないかという疑念、

「もう自分は翼貴のようには一生懸命悩めなくなったんじゃないか」

というで疑念でちょっとテンション下がる大人の様子が、

『2.5次元の誘惑』16巻より(橋本悠/集英社)

753のこのローテンション描写に仄見えたような気がします。

なんかここ、753にすごい感情移入してしまったw

 

翼貴のコスプレデビューと自分探し編が一旦片付いて、巻の後半はいつもの楽しい日常コメディ回にアニメ化決定お祝い回。あ、アニメ化決定、おめでとうございます。

次巻からは「最後の四天王」シリーズか。その後どーすんだ。

リリサが裏方に引いて、まゆ姉を除外しても、四天王の椅子を埋める人数は揃っちゃってっちゃ揃っちゃってるけどな。

あと、光が、光が消えています!

 

 

aqm.hatenablog.jp