もう10巻か。時間が経つのは早いねえ。
地方の病院に務めるアイドルオタな産婦人科医師・ゴローのもとに双子を妊娠したお腹を抱えて訪れた少女は、彼が熱狂するアイドル・アイ(16)だった。驚きショックを受けたゴローだったが、身近に接するアイの人柄に魅了され、彼女の出産を全力でサポートしようと決意する。
だが出産予定日の当日、ゴローはアイのストーカーに殺害される。驚くべきことに、ゴローはアイが出産した男女の双子のうち一人として転生する…
「かぐや様」の赤坂アカの作話を「クズの本懐」等の横槍メンゴが作画、という期待作。
要約すると二周目人生は伝説のアイドルの双子の子どもだった転生チートな芸能界サクセスストーリー、サスペンス・ミステリー付き。
サスペンスでミステリーな縦軸はありつつも、横軸は主人公の2人が芸能界の様々な仕事を渡り歩いて、作者が見知った芸能仕事の裏側の機微を描写していく建て付けに。
アイドル編、リアリティショー編、2.5次元舞台編、幕間を挟んで公式には「中堅編」と名付けられた新章突入。
アクアはTVバラエティ番組でレギュラー獲得、多忙ながら新進女優の黒川あかねとの交際も順調。ルビーたちのアイドルグループ「B小町」もネットのバズをきっかけに躍進して注目株に。
という状況を背景にしつつ、アクアとルビーが出演する番組で、コスプレイヤー特集回の暴露を発端にした炎上騒動が勃発。
という前巻からの続き。
横軸のバラエティ炎上編の痛快な大岡裁きによる完結、縦軸のサスペンス復活、そしてまた横軸のスキャンダル編へ。
横軸・縦軸・横軸と展開にメリハリがある上に、横軸の積み重ねが縦軸に密度高く有機的に絡んでいって、エピソードを単純に「スタンドアロン」と「コンプレックス」に分けられない、惹きつけられる作り。
もともと『かぐや様』信者としては、『【推しの子】』が発表された当初から「この作品との赤坂アカの掛け持ちのせいで『かぐや様』が雑になったらイヤだなあ…」というイヤな予感がありました。
結果的に予感は的中して『かぐや様』は終盤、雑にはなったんですけど、『【推しの子】』との掛け持ちのせいだったかは割りと微妙かな…
『【推しの子】』がなくても、「四宮家問題」は難しかったというか、そもそもあんなに大きな作品になるとは当初は誰も思ってなかったので、一軒家の屋根の上に後から増築してビルを建てるような、構造的な作品の建て付けの問題だった気もします。
なので『【推しの子】』に対して「面白かった頃の『かぐや様』を返せ!」という気は全然ないんですけど。
ただ、横槍メンゴが『【推しの子】』でいい仕事しすぎて、「もう自分で描かなくていいかな…」と赤坂アカの作画引退の背中を押しちゃった面はあるだろうな、と思います。
チッキショ〜、横槍メンゴめ〜。あかねのこのセリフと泣き顔エモいなこの野郎〜。
って横槍が悪いとかじゃなくて。
そんなこんなで、連載開始当初から『【推しの子】』に対してはどこか屈折した思いをずっと持ってたんですけど、『かぐや様』も終わって、エピソードも再び縦軸に回帰した今巻。
いや〜、『【推しの子】』スリリングで面白いねー。チッキショ〜。
情動・妄執がこもってサスペンスな縦軸と、スキャンダラスでキャッチーでヒキが強い横軸の組み合わせ。
か、かな! そっちへ行ってはイカン!
アクアとルビーが「芸能界探偵」というか、探偵じゃねえな、暗躍して揉め事を解決すんのが痛快やら、犯人に迫る執念が鬼気迫るやら、仄見える犯人像が不気味やら。
アクアとルビーが鬼殺隊の柱なみに妄執キマっちゃってる分、正直ちょっとシェイクスピアの復讐劇の舞台の上の役者を観てるように透明な膜がかかってるというか、やや感情移入しにくくは感じるんですけど、それに代わってあかね、かな、MEMちょなどのサブのキャラたちに対する「この子たち幸せになって欲しい」感が補って余りあるというか。
チッキショ〜。
巻末には4ページの描き下ろし番外編も収録、横槍のネームとのことです。
陰キャ美少女エピソード描かせたら相変わらず絶品だな。
ヤンジャン作家が「久しぶりのネームで緊張」とか、そんなことある?w
aqm.hatenablog.jp
aqm.hatenablog.jp
aqm.hatenablog.jp