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#トニカクカワイイ 23巻 評論(ネタバレ注意)

基本は理系天才フリーター・ナサくんと、謎多きクール美少女・司(つかさ)さんの、なんか可愛い男の子と女の子の新婚生活ラブコメ。

SFファンタジーな「かぐや姫」伝承にまつわり不老不死であることを匂わせつつ隠してきた日常ラブコメの、隠してきたその謎の真相が「第一部 完」として15巻で明らかに。

『トニカクカワイイ』23巻より(畑健二郎/小学館)

漫画家・畑健二郎は画業20周年を迎え、記念展示会を控えていたが、小学館が企画した展示会はアホみたいに大規模でグッズもアホみたいに発注していた。

なんとか集客するべく、畑健二郎は来場者特典に初期の没作品のネーム冊子を用意する。

この初期の没作品には、驚くべき秘密が隠されていた…!

作者やりたい放題なんですけど、許される芸風は得というか徳だよな、というのと、下手したら本編よりちょっと面白いのは如何なものかw

初期の没作品のロックな尖り具合、とても良いので、もう一度読み切りにしてみん?

では、あらためて。

基本は理系天才フリーター・ナサくんと、謎多きクール美少女・司(つかさ)さんの、なんか可愛い男の子と女の子の新婚生活ラブコメ。

『トニカクカワイイ』23巻より(畑健二郎/小学館)

SFファンタジーな「かぐや姫」伝承にまつわり不老不死であることを匂わせつつ隠してきた日常ラブコメの、隠してきたその謎の真相が「第一部 完」として15巻で明らかに。

今巻は情報量多めの幕間巻。

時子が残した5Dデータの解析方法の謎、イチャラブ、ナサくんの由崎家の墓参りなど。

現在の「週刊少年サンデー」の主力に、『葬送のフリーレン』、『よふかしのうた』、そしてこの『トニカクカワイイ』と、不老不死ヒロインから見た人間の短い生に対する慈しみをテーマに持ったファンタジー作品が、同時代に揃い踏みしているのはどういうわけなんだろうか。

(※『葬送のフリーレン』のヒロインは厳密には不老不死ではなく、長命種のエルフ)

『トニカクカワイイ』23巻より(畑健二郎/小学館)

「サンデー」以外にもそういう作品が複数あるんですけど、そもそも「吸血鬼もの」は定番ジャンルだし、「流行」と言ってしまえばそれまでなんですけど、何か現代の時代的な背景に、「変わらないもの」に対するコンプレックスや、反転して「変わらないもの」視点での人間の営みの諸行無常に対する愛おしさ、みたいなものを描きたくなり読みたくなる何かがあるんでしょうか。

今巻では日常イチャコラの合間に、司さんが過ごしてきた1400年の間の思い出の回想シーンが度々カットインして、歴史と司の時間の長さが持つ大きさと柔らかさのようなものを感じさせる巻。

これはこれでちょっとした大河なんで、飲み込もうと思ったらあらゆるテーマも、NHKの新しい大河ドラマの舞台もを飲み込んでしまえるな、というw

『トニカクカワイイ』23巻より(畑健二郎/小学館)

なんかちょっと『修羅の刻』みたいだな、と思ったら、青空を多用する画面演出や歴史上の人物の顔の描き方まで『修羅の刻』みたいに見えてきてちょっと笑ってしまったw

作者自身の文化的な背景を直接的なオマージュで取り入れる手法を多用する作家ですけど、

「生きることを あきらめてしまわぬように」

『トニカクカワイイ』23巻より(畑健二郎/小学館)

って、人生や生命への愛おしさを綴った小沢健二の名曲『天使たちのシーン』の歌詞の一節ですよね、とか。

イチャラブとオタク文化オマージュのチャラさで読者と釣っている、軽くてキャッチーでとても商業的な漫画なんですけど、その奥で作者の感性が感じる美しさのようなものを読者の感性に刻印しにきてる漫画だよな、という。

冒頭で紹介されたキャリア初期の没作品の尖ったロックさと比べて、画業20年にして円熟に差し掛かりつつあるというべきなのか、メカと美少女で釣った読者に人生観や思想を刻印したT監督やM監督みてえなやり口だなw

 

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