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#その着せ替え人形は恋をする 11巻 評論(ネタバレ注意)

祖父の弟子として雛人形作りの職人を夢見て修行中も、趣味がなくぼっちな男子高校生(15)と、スクールカースト最上位だけどオタク趣味のコスプレ好きで裁縫下手なギャル(15)のクラスメイトのボーイミーツガール。

ひょんな縁でギャルに衣装の講評を頼まれ、ガチでダメ出ししたら泣かれて土下座で謝った流れで、コスプレ衣装を作ってあげることに。

青年誌に載っちゃった少女漫画というテイで、少女漫画の絵だけどテーマがテーマだけに青年誌のヤングガンガンだけに、着替えシーンやエロコスも多く読者サービス多め。

『その着せ替え人形は恋をする』11巻より(福田晋一/スクウェア・エニックス)

高校生の恋愛未満の男女が主人公のコスプレ青春もの、ということで、テーマがジャンプ+の1年後発の「2.5次元の誘惑」とバチくそカブってんですけど、

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まあしょうがないよねっていう。

割りと熱血少年漫画フォーマットのあっちに対して、こっちは絵も作話も少女漫画的なアプローチで、似たようなモチーフでも出方は違うもんだな、と読み比べてみると面白いです。

アニメ化済の人気作品。アニメも出来物でしたね。

前々巻からの展開、イベントで知り合ったコスプレイヤーさんたちと意気投合してホラーゲームの合わせ撮影をするエピソード、五条・海夢と元から知己だったカリスマコスプレイヤー・ジュジュ様にも声をかけて、大所帯での撮影に臨むことになったものの、人が増えれば揉め事も起こり波乱含みの様相…

『その着せ替え人形は恋をする』11巻より(福田晋一/スクウェア・エニックス)

というエピソードが今巻で終わって、新エピソード「冬コミ編」へ。

思春期の子どもが「大人(社会人)になりたくない」と漠然と不安に思うのはまあ当然で、老化もイヤだし青春が終わるのもイヤだし変化は不安だし、自分も身に覚えがあるんですけど。

ひと昔前は特に少年漫画における「大人」って「仮想敵」「なりたくないもの」であることが多かったんですけど、

「大人になったら大好きなコスができなくなるんじゃないか」

という若者の不安に、さらっと

「全然できるし、大人になるって悪いことばっかりでもないよ」

ってポジティブなメッセージを発しています。

『その着せ替え人形は恋をする』11巻より(福田晋一/スクウェア・エニックス)

この漫画を若い人が実際どれだけ読んでるのか知らないですけど。

他にもコスプレにおける「(自分が納得できる)キャラになりきる上でのハンデ」が年齢以外にも身長や性別などの問題が今巻でも描かれるんですけど、丁寧に一つ一つ熱意と創意工夫で乗り越える様子を通して

「コスプレって楽しいよ」

「(容姿や若さで)選ばれし者だけの特権的な趣味じゃないんだよ」

ってメッセージに、コスプレに限らずオタク趣味全般への愛がこもってて、とても良いなと思います。

強いて付け加えるなら、自分はおっさんですけど、家庭や学校や「経済力のなさ」に自分の生活を「子ども(未成年)なんだから」と束縛されるのは二度とごめんですし、幸いなことに自分の「好き」に囲まれて支えられて現在でも幸福に過ごせているみたいです。

『その着せ替え人形は恋をする』11巻より(福田晋一/スクウェア・エニックス)

世の中「青春時代にタイムリープする」フィクションも多いし自分も割りと幸福な青春時代を過ごしたんですけど、それでも神様に時間を巻き戻すチャンスをもらっても青春時代に戻りたいとは全然思わないです。

青春時代の積み上げや思い出もあった上での話ですけど、自分はおっさんになった現在の方が幸せですし、大人になるの、なかなか楽しいですよ。

さて後半、冬コミに向けて突如、作中作漫画『天命』とその作者「司波刻央」が異様なほどフィーチャーされます。

自身の能力と同じく他人への要求も高く完璧主義の作家と、キャラのコスプレを挟んで、職人としての五条くんが対峙する展開に、「冬コミ編」はなるんかな。

『その着せ替え人形は恋をする』11巻より(福田晋一/スクウェア・エニックス)

司波刻央という架空の作家のことをもっと知りたいし、架空の漫画『天命』をすげー読みたくなった。

あと、海夢のラブコメのゴールがヌルッと遠のいてまたどっか行ったw

 

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