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#機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還 25巻 評論(ネタバレ注意)

いい表紙。

シャア・アズナブル(クワトロ・バジーナ)vsヤザン・ゲーブル(ヴァースキ・バジャック)、再び。

『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』25巻より(Ark Performance/KADOKAWA)

シャアはやっぱ敵が「ティターンズにいたヤザン」って憶えてて認識してんだな。前巻とかにもそう言うセリフが確かあったよね。

記憶喪失ながら、一年戦争のジオンの超エース、ジョニー・ライデンではないかと強く疑われる主人公レッド・ウェイラインを軸に、ザビ家の遺産技術を巡って各陣営が入り乱れる宇宙世紀ものスピンオフ。時系列的には「ZZ」と「逆シャア」の間。

正史キャラもちょいちょい登場、ヤザンがレギュラーキャラだったり、近巻では「シャアの反乱」に向け暗躍中のシャアが大暴れ。「Twilight AXIS」主役2人も準レギュラー出演。

ガンダム世界の設定の矛盾にうるさいサンライズからお任せされてる感。

『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』25巻より(Ark Performance/KADOKAWA)

ディジェ、出世したなあ…

この赤いディジェは違法改造ディジェっつーかプロトタイプサザビーっつーか、既にヤクト・ドーガ級だけど…

ザビ家の遺した大量破壊兵器を巡る、地球連邦内のFSS(≒旧キマイラ)、ゴップ議長派、シャアのネオジオンの三つ巴の争い。

話の縦軸としては一年戦争終結直前にジオン公国「キマイラ隊」に何が起こったか、と、記憶喪失の主人公レッド・ウェイラインはあのジョニー・ライデンなのか、の2つの謎が軸で、更に地球もコロニーも滅ぼすことが可能な「ザビ家の復讐装置」と呼ばれる兵器の争奪戦が3つ目の軸。

「ザビ家の復讐装置」を積みア・バオア・クーを無人で自動航行する旧ジオン巨大艦「ミナレット」を巡る、おそらくこの作品の最終決戦に当たるエピソード。

ジョニー他、本作品の主要人物の多くが所属していた、かつてジオン公国軍キシリア配下の旧「キマイラ隊」は、「対ニュータイプ部隊」としてオールドタイプのエースパイロットばかりを集めたエリート部隊。

その目的は「アムロ対策」ではなく「シャア(が反乱を起こすケース)対策」、ということで、「シャア殺し」が目的の部隊でした。

戦後、メンバーは戦死を含めて散り散りになり、本作でもFSSとゴップ議長派に分かれて旧同僚が相撃つ展開がずっと続いてきましたが、シャアが本格的にミナレット争奪戦に参入してきたことで、各陣営に散った旧キマイラたちの「シャア殺し」の幻獣の本能が目覚める展開。

『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』25巻より(Ark Performance/KADOKAWA)

本作に限らずバトルもの漫画は戦闘シーンに入ると一気にストーリーの進展が鈍りますが、本作はその戦闘シーンの描写のガンダムコミカライズ作品群の中でもトップクラスの精緻さもさることながら、合間合間の過去作にリンクするセリフ群の読者サービスにも余念がありません。

今巻はシャアの戦闘能力に手を焼いたゴップ議長派のヤザンとイングリッドがレッドに共闘を持ちかけ、「キマイラ残党全部+ヤザン」のいわば「オールドタイプ・オールスターズ」ともいうべきチームが即興で結成され、その全てがシャアの駆るディジェ・トラバーシアに襲いかかるという、ウルトラVIP待遇というか、もはや誰が主人公なんだよw という展開。

一方、そのシャアが迫る、大量破壊兵器「ザビ家の復讐装置」を搭載する旧ジオンの遺産・巨大鑑「ミナレット」は、あらゆる陣営の人間の意思に拠らず、自動的に休眠状態から目覚め、「何か」を探し始めていた…

争奪戦を繰り広げる人間たちの意思をよそに、勝手に起動し始める大量破壊兵器。こっわ…

『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』25巻より(Ark Performance/KADOKAWA)

おお、タイトル回収。

話が大きく進展したわけではないですが、冗長だった中盤と違ってクライマックス独特の緊張感を伴った見せ場の多い、締まった展開。あっという間に読み終わるし、早く続きが読みてえw

情報量としての内容はそれほどでもないのに、「夢の対決」の見せ場の連続で読み応えがあるというのは、旧ジオン同士相撃つ展開で『Z』や『逆シャア』と比べて思想ディベートが控えめなこともあって、全盛期『ドラゴンボール』をちょっと思い出します。

だってあなた、「シャア・アズナブルvsジョニー・ライデン」直接対決ですよ。

今巻SF的に面白かったのは、古戦場ア・バオア・クーで武器を失ったユーマの近代化改修ゲルググが、デブリとして漂っているリック・ドム系の旧式バズーカを拾って装備するシーン。

『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』25巻より(Ark Performance/KADOKAWA)

「標準装備でないMSの武装が、MSのOSに武装のドライバーがインストールされていてマニュピレータに物理的に合えば、装備・使用できる」という概念・描写を自分は初めて見ました。

落ちてた敵の武器を野放図に拾って使える

(ダメでは?)
 ↓
セキュアになってパイロットの生体認証が必要
(セキュアだが不便・非効率すぎる)
 ↓
利便性を優先してセキュリティを緩めてドライバーがあれば使用できる
(最低限のセキュリティを伴った野蛮な利便性の回復)

と、ロボット戦争ものの兵器描写が2023年現在の思想にアップデート(デグレード?)されていて、興味深いですね。

10年後、20年後には笑われる描写になっちゃうかもしれないですけど、こういうのは「その時点での運用設計思想の精一杯」を真面目に描いて残すことに価値がある、と自分は思います。

そう言えば『ガンダム』って、『攻殻機動隊』みたいに「電子戦でハッキングして乗っ取る」方向にはあんま行かないですね。

ミノ粉あるから当たり前か、って、その割りに敵味方でのディベートは「お肌の触れ合い通信」じゃなくてもやってんだけどw

デンドロビウムとかネオジオングとかは、

『アップルシード』4巻より(士郎政宗/青心社)

ぱっと見、『アップルシード』の「ヘカトンケイル・システム」によく似てるんですけど。

さて、宿題としては前巻の「ロンド・ベルへの通報」のその後が気になるのと、ミナレットの格納庫からどんなビックリ・ドッキリ・メカが飛び出してくるのか気になります。

アムロとまではいかなくてもブライトぐらい(失礼)はファンサービスで出てくるんじゃないかというのと、すごくかっこよくザクレロが出てきたらどうしよう。

あと、ここでシャアが言う「君達」が、

『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』25巻より(Ark Performance/KADOKAWA)

「新生ネオ・ジオンの将兵たち」を指すのか、「ア・バオア・クーを漂う戦死者の亡霊たち」を指すのか、「シャアを探し続け、近い将来に対峙するロンド・ベル」を指すのか、「これまで戦って散っていったニュータイプたち」を指すのか。

その答えはたぶん、「ご想像にお任せします」になる気もしますが。

そういう人よね、シャアって。

 

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