#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

FSS (NT2023年6月号 第18巻相当) 評論(ネタバレ注意)

ファイブスター物語、連続掲載継続中。

「第6話 時の詩女 アクト5-2 終わりの始まり Both3069」。

扉絵コミで13ページ。

  

他の号はこちらから。

aqm.hatenablog.jp

以下、宣伝と余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

 

 

 

 

 

 

 

(余談)

最近はTVアニメ化効果で『【推しの子】』感想記事へのPVが多いんですが、NT誌の今月号の表紙まで『【推しの子】』なせいで『【推しの子】』大好きブログみたいだな。

なんで感想記事が発売日から3日も4日も遅れるんだって話なんですけど、お住まいが宮崎なんでNT誌が届くのが1日遅いのと、あと3日分遅れたのは『エルデンリング』の2周目プレイのレベル上げで忙しかったからです。あとデコース嫌いなんで感想考えるのかったるかってん。

ブログをいつ書こうが自分の勝手なので俺は絶対に「遅れてすみません」とか謝らないからな!

(追記)

記事アップして告知ツイート時点で、6月号なのに「5月号」と書いてました。

すみません。

めんどくさいからツイートも直さなくて、すみません。

 

(扉絵)

ドアランデアスティルーテのカラー設定画+解説テキスト、スタント遊星内バスター恒星系の解説テキスト。

 

(本編)

デコースに接近するヨーン、目ざとく察知したデコース。ステゴロ最強と評判のヨーンの挑戦を同じく素手で受けるデコース。しかし巴がパルスェットを捉え、2刀をデコースに投げ渡して状況は一変。胴を刺し貫かれ地に伏すヨーンにデコースは残酷な現実を突きつけ、煽りまくる。

「完膚なきまでの敗北と残酷すぎる現実。ヨーンの旅が……終わる!?」(ニュータイプ2023年6月号より)

 

(所感)

扉ページ

16巻のあれやこれやと同じく異次元存在。

物語に関わらない設定は理解しようとする気が起きない。

ファイリングだけしといて、本編がスタント遊星編に近づくまで、読まずにほっといていいと思う。

スタント遊星編が描かれることがあれば、その頃にはまた設定変わってる気もする。

いつか描かれると良いし、その頃まで私もあなたも生きてると良いですね、というか、「ドアランデアスティルーテの物語を読むまで死ねない」という気持ちを糧にして皆で長生きしましょう。

そういえば

「誤植が多いくせになんでこんなクソ長くてクソ憶えにくい名前つけたんだ」

と思ってたんですけど、作中で今んとこ間違わないですね。

自分は感想記事で何度も手打ち入力するうちに、「ドアラン・デアスティ・ルーテ」と分割して憶えるのがコツだとわかりました。小学生時代の漢字ドリルみたいな憶え方。

 

装甲服を忘れた意味

物語に没入して見れば、ヨーンが「装甲服を忘れるぐらい頭に血が昇っている」ということかなと思いますが、現実ではなく漫画なので、コマ・絵・セリフを割いてわざわざ描写している作者の演出意図まで考えると、メタも含めて理由は複数考えられます。

①ヨーンの未熟さ(頭に血が昇って格上との対戦の万端の準備を怠ってしまう)の表現

②装甲服を着ていると素手のヨーンが勝ってしまうため

 →描写的に可能性低いと思う

③装甲服を着ているとデコースがヨーンの腹部を刺せず、首か脚を斬ることになり、その後のシーンの演出意図が変わってしまうため

 →装甲服そこまで丈夫かな…

④装甲服ごと胴を刺し貫かれると「シアンの装甲服、着てても意味ねえじゃん」ってなってしまうため

 →銃弾やレーザーぐらいは弾くとは思う

 →vsデコース戦でスパークが装甲を避けて刺してて、アレは業物の包丁でしたけど、ガットブロウだとどうなんでしょうね

⑤「かっこいい服」は勝つ時に着せたいから

 →着てない時点で負けフラグ

⑥デコースが黒衣なのでヨーンも黒衣だとカブって「黒vs黒」になってしまって、視覚的な判別性が劣り、絵的にも美しくないから

 →永野護だったらいかにもありそうw

自分は①⑤⑥と、③と④の複合かな、と思います。

矛盾の故事、「最強の武器と最強の盾」のどちらが強いのか、最高級の装甲服でガットブロウの刺突を防げるのか、の決着をつけたくなかったのかな、とか。

巴が短剣状のガットブロウでパルスェットの腹部を刺す際も、三下がわざわざファティマスーツをはだけさせてますよね。

MHがGTMになって、ロボットのベタな弱点だったはずの関節部が

「ツインスイング最硬!装甲なんて要らんかったんや!」

になって全体的にMHよりGTMが壊れにくくなりましたが、旧設定の「スパイド(実剣)/スパッド」と新設定の「ガットブロウ」の、装甲に対する切れ味の差も、地味によくわかんないですね。

スパッド、携帯性・隠密性に優れてて厨二病的浪漫もあって好きだったんですけど、『スターウォーズ』のライトセイバー、『ガンダム』のビームサーベルとダダ被りだったのがイヤだったんかな。

 

バトル描写

ヨーンvsデコース戦は前半戦・後半戦に分かれることが予告されていたので、予想通りの展開ですけど、後半戦でヨーンが逆転勝利するのもほぼ確定ですかねコレ。

前半でヨーン、後半でデコースが勝って勝ち逃げの可能性も僅かながら在った気がしましたけど、さすがにヨーンが同じデコース相手に3連敗する展開は、物語的に意味がなさすぎる。

騎士の能力が『ワンピース』の「悪魔の実」の能力と同じく、作者の匙加減の絵空事で現実の重力の影響や体重移動/体術/格闘術/剣術のノウハウで測れない上に、永野の絵がアクションの因果関係を描けないので、やっぱり作者の匙加減というか「永野が強いっつってんだから強いんだよ!」という。

「左手の間合いが長い」と言われても、『聖闘士星矢』の「鳳翼天翔を出すと相手が吹っ飛ぶ」と一緒で、「そうですか」としか。

格闘漫画じゃなくバトル漫画なので、『FSS』にせよ『ワンピース』にせよ『聖闘士星矢』にせよ、それでいいんですけど、キャラが語る理屈を見るに永野護の脳内イメージではもうちょっと「格闘漫画寄り」に「動いてる」んだろうなー、と思うともどかしい。

デコースの剣の振りがボクシングで言うところの

「右バックブロー → 右フック → 左ストレート」

で、左右のリーチ差の駆け引き、リーチの短い横回転系二発に目を慣れさせてからの少ないモーションで縦に直線的に伸びてくる左の突き、のニュアンスは一応描写されてんですよね。

最後のバックステップから左ストレートに移る踏み込み/体重移動の描写が省略されすぎてて、デコースが慣性を無視してワープしてるように見えちゃってんですけど、そこを1コマ使ってちゃんと描写すると今度はその間ヨーンが敵に背中を向けたままずっと動いてないのが不自然に映る、という。

序盤の変則ソニックブレードの撃ち合いはまあ、ソニックブレードってそもそも

「撃てる方が勝つ」

「両方撃てる場合は格上が勝つ(互角だと牽制合戦)」

というもんで、強騎士同士の闘いの決まり手にならない、「雑魚狩り技+牽制技」みたいなとこありますし…

 

ヨーンの負傷

騎士の生命力とジョーカー(ガーランド)の医学をもってしても、これ3069年中に立てるようになるの無理じゃね? いま何月か知らんけど。

背骨と脊椎の他に、大動脈と重要内臓もイっちゃって、脇腹の肉と皮で繋がってるだけで、実質、胴体両断と変わんないと思う。

「動けない重傷を負う」と「胴体両断で生きてるのはビジュアル的におかしい」のバランス取った結果なんかしらん。

地球の現在の医学だと治療(下半身の再接合)できない重傷でしょうけど、仮にブラック・ジャックが実際に手術するとしたらどうやってやるんでしょうね。手を突っ込んで手術、やりにくそう。

先に太い血管の縫合接続、背骨のボルト止め、脊椎神経の接続・固定、皮膚を縫合して内部の肉や臓器は自然にくっ付くのを待つ、みたいな感じかしらん。

天照の神パワーだったら一瞬で回復できそうですけど。

 

エスト

エストの「バーシャ・システム」、ヨーン知らんのかい。

桜子、ヨーンに言わんかったのか、言えなかったのか、桜子も知らなかったのか(知ってる描写も在った気がする)。

エスト自身は作者のお気に入りですけど、人間として扱うと「先代を殺した相手に乗り換えた恩知らずのクズ」になるので、「ご都合ドラマチック記憶喪失システム搭載の道具」と思うのが妥当かつ穏便なんでしょうけど、どっちにしろキャラとして全然好きになれないですねw

ファティマについては「ファティマは道具」「人間扱いしてはいけない」とFSS世界観のシビアでクールな現状肯定として語られがちなんですけど、体制側の古い因習的な価値観、「大人の都合」、「世間の仕組み」を肯定して「それでいいんだ」、「仕方がないんだ」、「そういうものなんだ」と、クローソーやアトロポスが語った「ファティマの希望」を忘れてしまうのも、

「生命をかけて護ってくれたコーラスに私は報いたい」

「彼女たちも人間に生まれたかったのだ」

「私のこと忘れないで」

という一連のテーマに対して冒涜的だなあ、と。

本当に道具だったら、そんなこと言わんよね。

 

デコース・ワイズメルとヨーン・バインツェル

『FSS』はベビーフェイスの主人公キャラが多い割りに「動ける悪役(中ボス)」が少ないため、そのポジションを一手に引き受けてるところがあるキャラ。

正直、ナカカラ防衛戦のドリュー・ゼレも、あの程度の出番なんだったらデコースで事足りた気もする。

世襲で所属や身分が固定される王族・貴族が多い主人公格の騎士たちの中にあって、ヨーンとは特に共通点が多く、

①非・純血の騎士血統の叩き上げ最強格(非ニュータイプ最強「ヤザン枠」、地球人最強「クリリン枠」)、そもそも血統不明(王族・貴族・平民なのかも不明)

②個人主義・反権威(君主への従属否定、同盟肯定)

③フリー騎士・野良騎士としての放浪歴が長い

④腕っぷしとイカれ具合でカステポーの有名人

⑤元はファティマ否定派

カイエンとは②③④が、ブラフォードとは①③が共通しますが、5項目とも共通するのはデコースとヨーンだけです。

デコースの主な経歴も、

①ユーバー大公の飼い犬としてソープ&ラキシスと対決(敗北)、生存

②二代目黒騎士ロードス公と対決・殺害(勝利)

③対ヨーン戦その1(勝利)

④エストに見初められ3代目黒騎士に

⑤「ブラック・スリー」の1人としてフロートテンプルに侵入、ミラージュ騎士たちと対決・殺害(勝利)、スパークと対峙(引き分け)

⑥バッハトマ騎士団長としてハスハント星都ペイジ(ベイジ)に侵攻(勝利)

⑦魔導大戦中、ミューズの破烈の人形と対峙(引き分け)

⑧バッハトマ本営に押し入ったミス・マドラにボコられて強姦される(敗北)、生存

ですが、ヨーン自身との絡みの③を除いて、デコースがやったことって別に設定年齢を操作したヨーンがやっても良かったような気がします。

1人の騎士の個性を、わざわざ善玉のヨーンと悪役のデコースの似たような2人に分裂させた、みたいな。

たぶん元々は、当初の構想にいた野良叩き上げ騎士の「ジョーン・バインシェル」に、「理想の剣の主を求めるブラフォード」も含めて包含されてた個性が分裂したキャラなんじゃないかな。

・自分のアイデンティティと剣を捧げる相手、君主を求めるブラフォード

・自分の野望・欲望(アイデンティティ)のために剣を振るうデコース

 ・自分のアイデンティティがなんなのか未だよくわからないヨーン

ヨーンは、「ジョーカー星団」の「騎士」ではなく、現代の地球の日本人、更に未熟な少年に近い価値観からスタートして(浮きっぷりが日本からジョーカー星団に異世界転生した人みたいですよねw)、ジョーカー星団の価値観・騎士の価値観というシステムにぶち当たって闘って挫折して悩んで、

という、読者にFSS世界観を観せるための「狂言回し」「装置」としての主人公で、それ故に読者の感情移入先として生き様がコンセプティブに雁字搦めで自由度が低いです。地球の日本のあるべき「良心」、「正義の味方」像、「ヒーロー」像から外れられない。

コーラスⅢの「ファティマを人間扱いしてやりたい」という理想も憑依している。

その代わり負けても挫折しても、自分の節を折れず曲がらず染まらず諦めず成長を止めず、「ジョーカー星団はおかしい!騎士はおかしい!ファティマはおかしい!」と叫ぶことをやめず。今のところ。

 

じゃあその対比としてデコースはどうなんだという話なんですけど。

デコースももともと「反権威」、「反 大国」、「反 大騎士団」「反ファティマ」でしたけど、「黒騎士とエスト」のブランドと、バッハトマ黒騎士団長の地位に折れちゃったように見えます。

「ファティマ嫌いだけどエストだったら娶ります」

ってダサすぎる。「1億くれるならウンコ食います」と一緒やん。

特にヨーンと対峙すると顕著で、無位無冠(+無手)のヨーンと比べると、「大騎士団」の「ファティマ持ち」の「騎士の権威」に「なっちゃって」、ロックでパンクでアウトローでツッパってた「若者」が、すっかりその「若者」に反発される体制側の「ジジイ」になっちゃいましたね、という。

ロックでもお笑いでも尖ってた若手が数十年後に「大御所」になっちゃう、全共闘で体制と戦ったはずの若者たちがバブルを謳歌して最終的に日本をダメにして勝ち逃げする団塊老害クズになった、みたいな、よくあるキャリア。

今号のデコースのヨーンに対するヒステリックな煽りや罵倒も、「折れる前の自分」みたいなヨーンに対する苛立ち、同族嫌悪、黒歴史みたいなもんというか、

「お前のためにズバリ言ってやるけど、そんなんじゃ社会で通用しないぞ!」

と出る杭打ちのクソバイスせずにいられない老害のおっさんみたいだな、と思ったりします。

刺せる時にさっさとトドメ刺せよ、プロフェッショナル騎士様(笑

『FSS』は社会における「誰」たちのための物語なのか、かつてパフォーマンスや作品や仕事を通じて反体制を描き反権威とロックを謳った、現在は63歳になった永野護はヨーンとデコースの物語をどうまとめるでしょうか。

先に「ヨーンは日本からジョーカー星団に異世界転生した人みたい」と書きましたが、その日本人全体のメンタリティ自体が、ヨーンが登場して以降の数十年で変わってきてますよね。

ヨーンのユクスエの受容のされ方もさることながら、永野護自身の加齢と心境の変化が、ヨーンのユクスエ自体の展開や描写にどう反映されるのか。

 

とは別に、自分はメタ的にはデコース、もともと大したことない面白くもないキャラだとも思ってます。

数少ない便利な悪役キャラに、その場その場でネーム進行に都合の良い言動をさせてるだけで、人格の一貫性も成長や老いによる変化の過程もない、時代も場所もバラバラのMOBたちに共通の「デコース」の名前と姿を与えただけのようなキャラだなあ、と。

「狂言回し」や「デウス・エクス・マキナ」以上の、「装置」としての悪役ロボットというか、人間として何の「業」も背負ってない。言動の一貫性のなさ・支離滅裂さを「狂乱の貴公子」って二つ名で誤魔化してるだけでしょ。

今回ヨーンを盛大に罵倒して煽ってるのも、その方がこの後の復讐戦が盛り上がるからってだけで、彼が背負ってる数少ない「業」は「作者に都合が良いこと」だけだと思う。

だってエストの目の前でヨーンをボコって「エスト、こいつ憶えてる?」って訊くの、善玉のアイシャにも璃里にもやらせらんないでしょ。ヨーンの成長のための「都合のいい悪役」に、師匠の代わりに言わせてるだけですよね。

 

と、もともとデコースが嫌いな上に今号更にムカついたのでオブラートに包んでデコース批判をしたら思いのほか長文になってしまった上にオブラートがほとんど剥がれてきてしまったのでこの辺で。

悪役キャラが計算通りに嫌われて、作者もきっと本望だと思う。俺はいい読者だ。

 

泉興京巴

オブラートが剥がれたまま巴さんのコーナー!

永野が描く「アジアンビューティ」の象徴の一人で、デコースと同じく便利な悪役なんで使いやすいのはわかるんですけど、個人的には全然好きじゃないし、いい加減やることがワンパターン過ぎて見飽きたので、そろそろいい加減死んでほしい。

デコースと同じく、相手がヨーンになると立場が「反権威」から「権威」に反転、反抗する側から抑圧する側に回ってしまって、目障りなだけで何の魅力もない。

キャラとして何の葛藤も物語も、ボスやんのような「神への反抗」も背負わず、名物悪役としての愛嬌もないただの「安い便利悪役キャラ」。

偽悪的で薄っぺらい悪役好きアピールで持ち上げるのも、スカ閣下の時と同じくスベってて、観るに耐えない。

 

aqm.hatenablog.jp