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#転生したらスライムだった件 23巻 評論(ネタバレ注意)

「なろう系の異世界転生もの」の中で商業的にトップクラスの成功を収め人気を博している作品。

サラリーマン(37)が刺されて死んで異世界に転生したらスライムだったけど、付与された特殊能力で強力な魔物スキルをガンガン吸収してスライムにして最強、人型にも顕現可能に。

リムルを名乗り、多くの魔物を配下にジュラの森の盟主となり「魔国連邦」を建国。

『転生したらスライムだった件』23巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

魔王に覚醒したリムルのもと、既存の複数の魔王国家勢力、人間国家勢力、宗教勢力との武力紛争も魔国連邦が勝利、もしくは和解する形でひと段落、人間・亜人・魔王、それぞれの列強に新興国として認められ、外交チャネルをオープン。

今巻は、魔国連邦の諸国に向けたお披露目と式典外交を兼ねた「開国祭」の開催に向けた、式典企画、外交、建設、移民受け入れ、人材の引き抜き、育成、などなど。

『転生したらスライムだった件』23巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

多くの異世界転生ものが、現代日本の知識とギフテッドの能力で主人公個人の「バトル勝利」、「社会的栄達」、「モテとハーレム」の中目標の達成を繰り返しながらエスカレートしていく展開、もしくは対極的に最強隠者としてスローライフに走る展開なのに対して、本作は割りと早い段階から「国家建設」、「新国家の樹立」をテーマに据えた異色作。

「俺たちの理想国家の樹立」ってまあ、少年というよりは青年期の「革命の夢」ですよね。

定番のバトルや戦争もありつつも、治政・経済開発・建設・外交・人材登用・人材育成がご都合主義も交えつつも楽しげに描かれ、主人公の役割も王で外交官で実業家で、RPG的世界観でありながら司馬遼太郎作品的でもあり、KOEIの『三國志』や『信長の野望』などの歴史シミュレーションゲーム的でもあり。

リムルの盟友や部下がどんどん増えていき、群像劇っぽく。

「強い奴とかっこいい奴と可愛い奴はだいたいトモダチ」。

『転生したらスライムだった件』23巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

ちょっと近刊のリムルはポジションが『FSS』の天照帝っぽくもあり。

バトル勝利の高揚感

→フロンティアの高揚感

→新国家樹立の高揚感

→戦争に勝利する高揚感

→のし上がって列強に序列し外交で肩を並べる高揚感

と、俺TUEEEEの内実も少しずつスライドしていっている作品。

列強国家首脳の強キャラ同士の、バトルもいいけど、平和にイチャイチャしてるのもいいよね、というw

『転生したらスライムだった件』23巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

個人主義と承認欲求充足の最たる「異世界転生・俺TUEEEEもの」のジャンルで、主人公の武力のみに頼らず集団的な発展、「人を集めて育てて手柄を立てさせる」ことの面白さを描いて、しかもそれがジャンルNo.1クラスにウケて売れている、というのはちょっと面白いです。

「一人でできることなんてたかが知れてる、力を合わせることに人間(と魔物)の真価がある」

とは社会生活の真理ではあるんですけど、「人を育てて使う」リムルの視点がおっさんというか、まあ転生前は実際おっさんだったんですけど、

『転生したらスライムだった件』23巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

テーマが老成しているのも事実で、管理職のおっさんとしては楽しく読んでますが、ホントに子どもや若い人が読んでんのかなコレw

 

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