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あ、今日読んだ漫画

#メダリスト 10巻 評論(ネタバレ注意)

現役時代を不完全燃焼で終えた新米コーチ・明浦路 司(あけうらじ つかさ)(26歳♂)が、高い身体能力を持ち競技への情熱を燃やす小学5年生の少女・結束(ゆいづか) いのりと出会う、フィギュアスケートもの。

基本シリアス進行ながらこまめにコメディで空気を抜いてくれて、エモくて泣けるのと同時に読んでて楽しく、読みやすい。氷上で火花を散らすというより火を吹くようなライバル関係なのに、リンクを降りるとツンデレほのぼの仲良しコメディなの、良いですよね。

アニメ化決定済み。楽しみですね。

『メダリスト』10巻(つるまいかだ/講談社)

講談社「アフタヌーン」作品であるにも関わらず、「講談社漫画賞」より先に他社の「小学館漫画賞」を受賞してしまう珍現象も発生。

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前巻で「小学生編」≒「ノービス編」が終わり、今巻から「中学生編」≒「ジュニア編」。

自分は観る側としてすらフィギュアスケートはど素人ですが、こと女子フィギュアの軽さとスピードで飛ぶジャンプに限って言えば、シニアを待たずに「ジュニアが全盛期」なイメージすらありますね。

準備し尽くして臨んだ全日本ノービスAでの会心のジャンプ・滑走にも関わらず、ルールとスコアでは表彰台に及ばなかったいのり。

『メダリスト』10巻(つるまいかだ/講談社)

しかし、同世代内の選手や指導者の間では「脅威の急成長株」として注目され「強化選手B」に選ばれて臨む、ジュニア編。

ノービスAからジュニアになって、競技環境としては、SP(ショートプログラム)とFS(フリースケーティング)の2回の滑走でスコアリングされることとなり、強化選手Bに指名され実質的に日本代表候補扱いされ、またそれに伴って海外でのGP(試合)が中心になりそうです。

のジュニア編の開始で描かれたのは「成長」と「喪失」。

『メダリスト』10巻(つるまいかだ/講談社)

成長痛に悩まされ、また成長に伴って身体のバランスが変わり、これまで覚えてきた技も再調整が必要に。

競技としてのフィギュアスケートは成年後の現役期間が他の多くのスポーツと比しても短く、その分、幼年期・思春期・成長期の選手の負担が、肉体的にも精神的にも大きすぎるキライがありますね。ジャンルは違えど「アイドル業」にもどこか似ている。

「これが私の生きる道」

を早くに見つけてトップを目指す生き方を選んだ、「選ばれた者の代償」と言えばそれまでなんですが。

先人たちの努力もあって、現役期間が後ろに長くなってきているそうで、良いことですね。

併せて、思春期の選手たち、心身ともに成長過程の「子ども」を扱う指導者たちの苦悩・使命感、その充実。

『メダリスト』10巻(つるまいかだ/講談社)

バトルもの・スポーツもので主人公の強大なライバルキャラが強く描かれすぎて、ハンデとして怪我を追う展開というのはフィクションにおいて、ままあります。(今パッと思い出すところでは『ラフ』の日本一の人とか、『ガラスの仮面』の亜弓さんとか)

主人公でやると作品が暗くなりすぎる「逆境・挫折を克服する人間の強さ」も描けて一石二鳥、たいていのキャラは「挫折を知らない天才エリート」が「這い上がる力」や「ハングリー精神」を手に入れて、より強くなって帰ってくる。

この作品のライバルキャラにあたる狼嵜 光(かみさき ひかる)にその兆候が見られて、やや不穏。

ここまで頂点に立つ凄みを伴った完全無欠の天才エリートとして描かれてきましたが、まだ子どもなんで、どうかお手柔らかに、あんま辛い目に合わせないで欲しいなあ、とか思ってしまいますね。

『メダリスト』10巻(つるまいかだ/講談社)

あと新登場の才能概念、「空間把握能力=鷹の目」ですか。

サッカー漫画『ファンタジスタ』やボクシング漫画『はじめの一歩』なんかでも見かけた、天才の能力。

本作においては

「自分の身体の座標と運動エネルギーとベクトルと形状を、滑走しながら客観的・正確に認知できる能力」、

音楽における「絶対音感」にも少し似てて、正反対の概念の一つが「方向音痴」、という感じでしょうか。

ある意味、「鏡要らず」「ビデオ要らず」「指導者要らず」の強力な能力なんですけど、それを今のところ明らかに具備しているキャラ2人がいずれも指導者キャラであるネジれともどかしさが、今後面白くなっていきそうですね。

『メダリスト』10巻(つるまいかだ/講談社)

「指導者要らず」スキル持ってんのが指導者てw

今巻は、スポーツものの華とも言える「試合巻」ではない「風呂敷拡げ」の幕間巻ですが、その分情報量は多く人間関係や情緒の動きも激しく、相変わらずものすごい読み応え。

 

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