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あ、今日読んだ漫画

#紛争でしたら八田まで 15巻 評論(ネタバレ注意)

表紙のメガネ美女、「地政学リスクコンサルタント」の八田百合がクライアントの依頼を受けて世界を股にかけて紛争を渡り歩き、地政学の知識と思考と調査能力と護身術で解決していく、美女!メガネ!インテリ!ハードボイルド!ワールドワイド!な、かっけーお仕事もの。

ぼっちでメガネで日系で手ぶらのココ・へクマティアル、という感じ。

『紛争でしたら八田まで』15巻より(田素弘/講談社)

下品な方の出羽守っぽいというか、ちょっと「ブラック・ラグーン」みたいな洋画吹き替えワールドな感じ。

差別や不和、対立に満ちた社会の縮図で苦悩する依頼主たちを、「たったひとつの冴えたやり方」で少しだけビターなハッピーエンド、イバラの道ながらも融和と協調と成長に導く、シビアな現実で始まりながらも人間の善性を信じた希望に満ちたあっ軽いラスト。

というスタイルで作劇はほぼ一貫してます。

無駄のない、無駄のなさすぎる構成と展開。

『紛争でしたら八田まで』15巻より(田素弘/講談社)

漫画で得た知識でイキるのはいかがなものかと思いますが、エンタメと「知るきっかけ」の両立という意味で大変優れたコンテンツ。

バーターで、主人公がデウス・エクス・マキナな装置であること、作劇がキレイすぎてややご都合主義的なのは、致命的な錯誤や恣意的な思想誘導がない限りは、目を瞑るべきかなと。

イギリスの少年サッカーチームが陥った突然の不調。

その影にはチームの攻守の要を占める、それぞれユダヤ系ルーツ、パレスチナ系ルーツの二人の移民出身の少年の、国際情勢を背景にした心理的な確執があった。

チームをまとめるキャプテン、インド系移民の少年の決断は…

『紛争でしたら八田まで』15巻より(田素弘/講談社)

ギリシャの美術商の雇われ美人店長からの依頼、それは雇い主であるはずの美術商オーナーの素行調査だった。

オーナーが首を突っ込みかけている犯罪計画の背景にあるギリシャの人種差別意識。更にその背景には古代の栄光と「EUのお荷物」に堕したギリシャ人が抱える複雑なコンプレックスがあった…

インドネシア、外資企業に務めるパプア人女性は将来を嘱望され順調にキャリアを積んでいたが、ある日を境に出社拒否に。

彼女をその状況に陥らせた「呪い」と、植民地からの独立・解放由来のインドネシアにおける分断と差別意識とは…

『紛争でしたら八田まで』15巻より(田素弘/講談社)

前巻以来のイギリス編の完結編、今巻内で全編が読めるギリシャ編、次巻に続くインドネシア編の前編。

1冊でエピソード完結が2つ拝める、満足度の高い巻。

銃で武装するギャング相手に、久しぶり?の八田のプロレス技ミラクルもw

相変わらずお話もよくできていて、面白く、そして「勉強になった気がする」漫画です。

これは作品の問題ではなく読み手としての私の問題ですが、あまりにもモノを知らなすぎて、知らなかった知識、特に国際情勢や民族差別に関わる事柄を漫画で初めて知る体験や、漫画で読んで知った国際情勢を疑いなく信じることに、心理的抵抗や根拠のない胡散臭さを感じてしまいます。

『紛争でしたら八田まで』15巻より(田素弘/講談社)

「ネットDE真実」ならぬ「漫画DE真実」「『紛争でしたら八田まで』DE真実」というか、「よくできたお話の全部が全部本当のはずがない」というか。

前述の通り、作品の問題というよりは、読み手としての私の教養の不足の問題というべきでしょう。

どこか、第三者的視点の読者ブログかなんかで、『紛争でしたら八田まで』に描かれていることを検証・裏付けしてくれる便利なサイトはないですかね…

うちのブログをそれ専門に労力100%この作品にかけることもできないですし…

あとはあれですかね、付け焼き刃ではなく大人の教養として、世界史と現代国際情勢を「教科書・参考書で体系的に勉強する」「本を読む」のが、迂遠なようでいて最短距離かつ王道なんでしょうか。

『紛争でしたら八田まで』15巻より(田素弘/講談社)

自分は漫画たくさん読むんですけど、こんなこと考えさせられるのは現役ではこの作品だけです。

コストかかるわーw

 

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