#AQM

あ、今日読んだ漫画

#アカイロフラグ 【完】 評論(ネタバレ注意)

『ハイスコアガール』シリーズ等で著名な押切蓮介の恋愛もの連作短編集。


『アカイロフラグ Summer』

「ネットの掲示板」が存在する程度の現代。

『アカイロフラグ』より(押切蓮介/KADOKAWA)

借金苦で荒れた家庭と馴染めない学校生活、いずれにも居場所がなく他人を煩わしく感じる中学生の少年は、放課後に心霊スポットでパンを食べて過ごしていたが、ある夏、行きつけのパン屋・行きつけの心霊スポットで同じような行動をする同年代の少女と出会う。

しかし…


『アカイロフラグ Autamn』

太平洋戦争末期、西日本。

『アカイロフラグ』より(押切蓮介/KADOKAWA)

広島から疎開してきた公一は、疎開先の学校に馴染めず喧嘩に明け暮れていたが、ある日、乱闘を逃れて迷い込んだ山の上のお屋敷の2階の窓から光一を見下ろす、異国風の容姿の少女と出会い、遊び友達に。

疎開先にどうしても馴染めない公一が広島に帰ることを決意すると、トモコを名乗る少女も一緒に広島について行くと言い出す。

そして8月6日がやってくる…


『アカイロフラグ Winter』

大正時代、名家・須藤家の令嬢でモダンガールの朱音はブラコンだった。

父は病に伏せり、母は事故で亡くしていたが、世間には事故を装った夫婦間の殺人を疑われていた。

『アカイロフラグ』より(押切蓮介/KADOKAWA)

兄の親友の新聞記者が須藤家の事情を嗅ぎまわり始めたことで、須藤家の闇が明かされていく…


『アカイロフラグ Spring』

小6の少年・宇野はエロ本を巡ってクラスメイトの男子にからかわれイジめられかけたところを、同じくクラスメイトの女子・新井に助けられる。

『アカイロフラグ』より(押切蓮介/KADOKAWA)

新井は宇野にエッチな本がたくさん捨ててある場所へと誘うが、そこからまさかの超展開が始まる…


自分がこの作家の作品を初めて読んだのは『ハイスコアガール』だったんですが、その頃からギャグコメやセリフ回しのセンスが独特だなあ、と思ってました。

作風・芸風が「純愛ものボーイ・ミーツ・ラブコメ」に限らず、残酷な描写を伴う復讐もの、超能力バイオレンスもの、実録エッセイものと、作品ジャンルも多岐にわたる作家であったことは周知のとおり。

その押切蓮介の、「ボーイ・ミーツ・ガール+超能力」な恋愛もの連作短編集。

ラブコメと超能力が好きなんだなw

各編小品ですが、それぞれボーイ・ミーツ・ガールや初恋をテーマに、ピュアながらどこかコケティッシュにフェティッシュに描かれた佳作。

『アカイロフラグ』より(押切蓮介/KADOKAWA)

全体通じると、もう一つ「縦軸」を通した短編の連作なんですけど、にも関わらず統一感があるんだかないんだか、という。

ひと夏のボーイ・ミーツ・ガール、戦時中と原爆が描かれた後に、大正浪漫な近親相姦未満と殺人事件、その次はエロ本探しから超能力バトル発展、というものすごいジェットコースター展開w

しかも世界観が共通ながらも「世界線」がズレたパラレル展開も在り、繋がってるんだか繋がっていないんだか。

という、一冊通してジャンルがコロコロ変わって

「どういう気持ちで読めば良いんだ」

という不協和音?な連作なんですけど、『ハイスコアガール』を初めて読んだ時の

「不器用でピュアな恋愛心理描写と、ベタなのかどうかすらよくわからないギャグコメのセンスの、このギャップは何なんだ」

「何を考えて何を目指して描いたらこういう漫画になるんだ」

と不協和音?に何か心地よく戸惑ったことを、懐かしく思い出しました。

一見、不協和音のように見えるテーマ・要素・テンションのチグハグさ、

「やりたいことが複数あったので、素直に人間・押切蓮介がやりたいことをそのまま複数をぶっ込んで描きました」

みたいなとこが、作風というか作家性というか、アジになってますよねw

パラレルなバッドエンド展開も、『アカイロフラグ』という作品タイトルの「運命の赤い糸」と「血統」のダブルミーニングをぶった斬ってるんですけど、「if展開」「没案」「二次創作」的なパラレル展開を描いちゃって「一編としてはこっちの方が面白いから」と他の「正伝」エピソードと並べて載せちゃうの、ゲーム的というか、「作者の特権」というかw

『アカイロフラグ』より(押切蓮介/KADOKAWA)

こういう描き方をされると

「在ったかもしれない未来」

「なかったかもしれない歴史」

に、何か思いを馳せるような気持ちにさせられてしまいますね。

 

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