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あ、今日読んだ漫画

#クプルムの花嫁 6巻 評論(ネタバレ注意)

「クプルム」ってなんだろう?と思って調べたらラテン語でcuprum 、英語のcopperで「銅」だそうです。

『クプルムの花嫁』6巻より(namo/KADOKAWA)

直訳で「銅の花嫁」というよりは、「妖怪・銅叩きの花嫁」という感じ。カニいいな。

新潟県 燕三条(三条市と燕市)。

モノづくりの職人の町で暮らすギャルで大学生・しいな(18♀)は、幼い頃から入り浸っている近所の銅器職人の工房の跡取り、幼馴染の修(20代前半♂)にプロポーズされ、しいなの大学卒業を待って結婚するべく、婚約することに。

こわーい職人気質の修のジジババ、夏は暑く冬は寒い銅器職人の工房で、しいなは上手くやっていけるのか。

『クプルムの花嫁』6巻より(namo/KADOKAWA)

仏頂面で職人気質の男子と、無邪気で感情の起伏が豊かなギャルの、可愛らしい日常ラブコメ。

コロナ禍でご苦労されながらも取材に熱心な作者さんで、グルメも含めてご当地ネタも豊富。

昔気質の「職人の家」に嫁ぎつつも、近年の漫画でギャルに求められる「旧弊や人間関係の閉塞感を円満に打破する」役割をきっちりこなす、頼もしいヒロイン。

古風な家柄に風穴を開ける元気ヒロインという、ちょっとNHKの朝の連続テレビ小説風というか。

『クプルムの花嫁』6巻より(namo/KADOKAWA)

婚約カップルのお仕事日常もの、という建て付けで、特に女の子の絵が可愛いゆるふわイチャラブ系っぽい作品なんですけど、前巻あたりから世界が「二人の部屋」や「工房」から外に出だしている感じがします。前からだっけ?

地方のご多分・伝統工芸のご多分に漏れず、燕三条の銅器職人の世界を舞台にしたこの作品も「人口減少」「過疎」「後継者難」「産業としての生き残り」という背景を抱えているんですが、目線が「地域と産業の振興・再興」に向き始めました。

『クプルムの花嫁』6巻より(namo/KADOKAWA)

いかにもお堅いテーマなようで居て、修としいなの親しみやすい当事者目線を守りつつも、キャラと一緒に自然と視座が高くなっていく感覚というか。

今巻で「コラボビジネス編」とでも呼ぶべきエピソードが完結。

求道的な職人が日々の仕事を通じて研鑽し技を磨く、「古き良き職人の世界」に居るだけでは許されない世相はややもすれば世知辛くこそ映りますが、「窮すれば通ず」的に今まで見ていなかった景色が見えてくるのは楽しくもありますね。

『クプルムの花嫁』6巻より(namo/KADOKAWA)

職人の願望を言語化・可視化し、客を見据えてモノを創り、他人を巻き込んで仲間を作って販路を開拓してマネタイズしていくことで、言葉少なく漫画映えしづらい「職人の技術の世界」を「普遍的なお仕事ものエンタメ」として昇華しています。

ラブコメヒロインの役割もこなしつつ、しいなだからこそのこの話の拡がりも、「可愛いだけ」「守られるだけ」「トロフィーとして」「狂言回しだけ」のヒロイン像じゃなくて、修のバディ・パートナーとして「女将」的というかなw

『クプルムの花嫁』6巻より(namo/KADOKAWA)

古くて新しい役割分担、安定した小気味良さ、良いですよね。

 

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