表紙のメガネ美女、「地政学リスクコンサルタント」の八田百合がクライアントの依頼を受けて世界を股にかけて紛争を渡り歩き、地政学の知識と思考と調査能力と護身術で解決していく、美女!メガネ!インテリ!ハードボイルド!ワールドワイド!な、かっけーお仕事もの。
ぼっちでメガネで日系で手ぶらのココ・へクマティアル、という感じ。
下品な方の出羽守っぽいというか、ちょっと「ブラック・ラグーン」みたいな洋画吹き替えワールドな感じ。
差別や不和、対立に満ちた社会の縮図で苦悩する依頼主たちを、「たったひとつの冴えたやり方」で少しだけビターなハッピーエンド、イバラの道ながらも融和と協調と成長に導く、シビアな現実で始まりながらも人間の善性を信じた希望に満ちたあっ軽いラスト。
というスタイルで作劇はほぼ一貫してます。
無駄のない、無駄のなさすぎる構成と展開。
漫画で得た知識でイキるのはいかがなものかと思いますが、エンタメと「知るきっかけ」の両立という意味で大変優れたコンテンツ。
バーターで、主人公がデウス・エクス・マキナな装置であること、作劇がキレイすぎてややご都合主義的なのは、致命的な錯誤や恣意的な思想誘導がない限りは、目を瞑るべきかなと。
今巻も相変わらずよくできていて、面白く、そして「勉強になった気がする」漫画ですが、これは作品の問題ではなく読み手としての私の問題ですが、あまりにもモノを知らなすぎて、知らなかった知識、特に国際情勢や民族差別に関わる事柄を漫画で初めて知る体験や、漫画で読んで知った国際情勢を疑いなく信じることに、心理的抵抗や根拠のない胡散臭さを感じてしまうのも相変わらず。
「ネットDE真実」ならぬ「漫画DE真実」「『紛争でしたら八田まで』DE真実」
というか。ちゃんと新聞読んだりニュース見たり本読んだり、勉強が必要だなあ、と思わさせられる漫画。
呪い騒ぎの背後に民族分断が隠れるインドネシア編の完結、スウェーデンを舞台にしたクルド人移民問題の前編。
クルド人移民に関しては日本でも話題になっていて、それを契機に「コンサルの当事者性の無さ」にも少し思い至りました。
八田が来ても、日本のクルド人問題が漫画みたいに綺麗に解決する気がしない。
なんでかな、と考えると、八田はコンサルで旅人なので、問題が解決するまで時間をかけて汗をかいて、という仕事をしないんですよね。
それがコンサルなんで当たり前なんですけど。
大抵、八田の思想・思考のフォロワーとなるリーダーを現地人の中に見出して事後を託す。
それがコンサルなんで当たり前なんですけど。
日本のクルド人問題に対して八田が解決に資さない、と自分が感じてしまうのは、
「日本の問題だけは行きずりの(定住しない)コンサルには解決できない」
というコンサルへの偏見・先入観か、日本人である八田に無意識に日本への定住を求めてしまう故か、
「日本には八田が事後を託すに足る人物はいない」
と無意識に思ってしまう故か。
自分が日本人であるが故に、同じ日本人である八田に、本来コンサルに期待すべきでない当事者性を求めてしまうのか、海外の問題に比べて身近な日本の移民問題について、エンタメ・フィクション・漫画を超えて、特効薬を期待してしまう心理なのか。
『ZZガンダム』の主題歌は『アニメじゃない』という曲でしたが、
日本でも身近な「クルド人移民問題」というキーワードを契機に、世界情勢が「漫画じゃない」と自分に対して真に迫ってしまったというか。それはそれで少し「漫画DE真実」っぽいですねw
まあそれはそれとして、八田に事後を託された現地の若者がゴミ山でリヤカーを引きながら「コツコツがんばるよ」と語るこのシーン、
いいシーン、いいコマだな。
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