
自分自身が10代の頃の成長期に割りと健啖家だったこともあって、カトリックにおける「七つの大罪」の一つに
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「暴食(貪食)」が含まれることに、昔から納得のいかなさを少し感じていました。
そんな、7つしかない「大罪」にカウントするほど、他人に迷惑かけてなくない?
が、この漫画を読むと、「暴食」の罪深さについて少しだけ理解が進んだ気がします。

『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』1巻より(まるよのかもめ/白泉社)
こんなもん、コマ・オブ・ザ・イヤー候補だろw
冷静(こいつと一緒にすんな)と情熱(あるある)のあいだ。
割りとブラック気味?の会社勤めのOL(死語か?)もちづきさん(21♀)は、ドカ食いと、それによる血糖値上昇・眠気(朦朧)に快楽を見出す食欲魔人だった。
あらすじ終わり。
という、美少女が食欲に負けて自制心を溶かす様を、ある種の共感と、ある種の怖いもの見たさで、見守るというのか見届けるというのか、一見コミカルにダメ人間エンタメ化したグルメ漫画。

『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』1巻より(まるよのかもめ/白泉社)
グルメかコレ?
「美少女が欲望に負けて自制心を溶かす」様を見届ける漫画、という意味では、自分が知っている漫画では
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『FX戦士くるみちゃん』4巻より(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)
が一番近いかな。
どちらも問題作で、感情移入して真面目に読むもんではないというか、感情移入したら読んでる身がもたないというか、ギャグコメとしてはホラー要素が強火というか、「人間の欲の深淵がこっちを覗いている」というか。見世物的ではあると思います。
もちづきさんはただの「食が太い」「大食漢」ではなく、その不健康さも背徳感も自覚していて、病的、素人目にも依存症気味に映る描かれ方。決して「健康的な健啖家」としては描かれていません。

『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』1巻より(まるよのかもめ/白泉社)
作中に登場する健康診断の結果でも、21歳にして1年間で53.7kg→59.8kgと、10%以上の体重増加。
笑うに笑えない、でも目を逸らし難い作品で、病的な依存症(に映る人物)をエンタメとして扱うことへの批判や、
「因果応報でもちづきさんが健康を壊すところまで描くことが作品の責任だ」
との批判も目にします。
まあでも自分はこの作品、好きですし悪影響ばかりでもないとは思うし、在って良い作品だと思うんですよ。

『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』1巻より(まるよのかもめ/白泉社)
「ダメ人間は文学になる」は本邦の伝統、人間の欲望を描くことはエンタメの意義のひとつだし、なにより「代償行為」としてこの作品に救われている人も意外といるんではないか、と。
自分、メタボ解消目的にジムに通い始めて9ヶ月ぐらい経つんですけど、運動するとご飯が美味しくてモリモリ食べちゃって、体重は増えも減りもせず、先日の人間ドックでは大して酒も飲まないのに脂肪肝が原因の「肝機能障害の疑い有り」で精密検査行きになったとこです。

『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』1巻より(まるよのかもめ/白泉社)
可哀想可愛いw なんかエサあげたいw
それから3週間、食事量を大幅に減らして減量生活中、体重は順調に減りつつも今夜の食事も「蒸した鶏胸肉とブロッコリー」「おにぎり1つ」のみなんですが、『もちづきさん』読んだらなんかもうお腹いっぱいw
「登場人物に愚行を託す」というのも、昔ながらのフィクションの役割かなあ。
もちづきさん、葛藤し自分の欲望に負ける姿が愛おしく、食ってる時・食った後の姿が本当に幸せそうに「生きててよかった」と生き生きと、人間的というよりもっと原初的で動物的な光を放っていて、とても魅力的なんですよね。
動物や若者にモリモリ食べることを仮託して眺めることを好む中高年、というのと非常に似た意味で、漫画キャラ故の歳を取らない若さと太らない(そうか?)身体と壊れない健康を武器に、ぜひ自分の分まで思う存分食べて欲しい、と思ってしまいます。

『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』1巻より(まるよのかもめ/白泉社)
『ゴールデンカムイ』に出てきた人殺しの目をしているw
作品を巡る、キャラや読者の依存・倒錯・代償・野次馬といった不健全な精神もどこか現代的にも感じます。
普通に考えたら漫画作品的には完全にパワー重視・インパクト重視のワンパターンな1巻出オチの作品ですが、せっかくのスマッシュヒット、2巻以降も路線そのままいくのか、あるいは飽きられないよう「味変」してくるのか、そっちも少し楽しみですね。
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